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ヒーラーの手
7.5
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***執事カフェ『燕の巣』休憩室***
カメリアの祖父ギョクロン・グリューンの協力者のおかげで隣国に渡っても仕事の紹介をしてもらって庶民並の生活はできているヘルム。
ただ紹介されたその働き先が『執事カフェ』という男性店員ばかりの店だった。執事なのになぜか客と座って話すことも仕事の内なのがヘルムの疑問なのだが「そういう店だから」で一蹴されてしまった。
客層は若い女性から高齢女性まで、男性客もたまに来ている。そのため話題は幅広く持っておかなくてはいけなかった。
休憩の合間に話題の情報収集で手にしたのは冒険者が愛読するという月刊誌だった。
『月刊 アドベンチャラー 第14巻』
表紙には満面の笑みでピースサインをする中年女性のアップと引き気味な男女の写真で『復活!?伝説の美食家ハイビー!』と大きく見出しが書かれていた。
目次には
【コカトリス討伐】や【謎の地下通路発見!】などのクエスト攻略や注目されている冒険者の記事が多く掲載されている。流し読みをしていると気になる写真があった。遠目に撮られているため顔ははっきりとは分からないが若草色の髪の少女。なぜか青色の巨人が並んで歩いている。
「これって……」
『ラタトスクで発見!テイマー飛び級!?謎の少女』
という特集記事だった。
「テイマー?」
まさかともしかしてが入り混じり、記事から目が離せなくなるヘルム。
『先日、ラタトスクでおこなわれたテイマー試験。我々は常識では考えられない少女を発見した。
第一試合からすでに一つ目のモンスターはその強さを発揮し、立っているだけで相手のモンスターが怯えて行動不能に陥ったのだ。第二試合、第三試合も同様で試合にならず、とうとう会場から姿を消してしまった少女とモンスター。
スタッフの独自取材で分かったのは彼女はテイマー資格を手に入れなかったということ。彼女にとってテイマー資格は無用の長物なのかもしれない。彼女とモンスターの実力は未知数だが、彼女が新たな時代を切り開くことを祈ろう。
なお、本紙では彼女の活躍に密着し、今後も追いかけていく予定である。乞うご期待!』
(記者:ホニャララさん)』
記事の内容は嘘でもないがかなり誇張され美化されてある。しかし当人達以外はそんなことは分かりはしない。
「名前が書いていなかった。でもまさかカメリアなわけがない。あの子は三姉妹の次女で、お人形が好きな優しい子だから」
元いた国を出てから今日までグリューンからの連絡がなにもないという焦燥感で、カメリアに似ている人を彼女だと思ってしまうのだと自分に言い聞かす。
「……とりあえず仕事をしよう」
まだ『燕の巣』では新人のため接客以外に皿洗いなど雑用も多いが、仕事内容は嫌いではなかった。むしろ、何か仕事をしていたほうが気が紛れて塞ぎ込まなくてすんだ。
休憩室を出たヘルムは、今日も『燕の巣』の新人執事として笑顔を振りまくのであった。
カメリアの祖父ギョクロン・グリューンの協力者のおかげで隣国に渡っても仕事の紹介をしてもらって庶民並の生活はできているヘルム。
ただ紹介されたその働き先が『執事カフェ』という男性店員ばかりの店だった。執事なのになぜか客と座って話すことも仕事の内なのがヘルムの疑問なのだが「そういう店だから」で一蹴されてしまった。
客層は若い女性から高齢女性まで、男性客もたまに来ている。そのため話題は幅広く持っておかなくてはいけなかった。
休憩の合間に話題の情報収集で手にしたのは冒険者が愛読するという月刊誌だった。
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「これって……」
『ラタトスクで発見!テイマー飛び級!?謎の少女』
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「テイマー?」
まさかともしかしてが入り混じり、記事から目が離せなくなるヘルム。
『先日、ラタトスクでおこなわれたテイマー試験。我々は常識では考えられない少女を発見した。
第一試合からすでに一つ目のモンスターはその強さを発揮し、立っているだけで相手のモンスターが怯えて行動不能に陥ったのだ。第二試合、第三試合も同様で試合にならず、とうとう会場から姿を消してしまった少女とモンスター。
スタッフの独自取材で分かったのは彼女はテイマー資格を手に入れなかったということ。彼女にとってテイマー資格は無用の長物なのかもしれない。彼女とモンスターの実力は未知数だが、彼女が新たな時代を切り開くことを祈ろう。
なお、本紙では彼女の活躍に密着し、今後も追いかけていく予定である。乞うご期待!』
(記者:ホニャララさん)』
記事の内容は嘘でもないがかなり誇張され美化されてある。しかし当人達以外はそんなことは分かりはしない。
「名前が書いていなかった。でもまさかカメリアなわけがない。あの子は三姉妹の次女で、お人形が好きな優しい子だから」
元いた国を出てから今日までグリューンからの連絡がなにもないという焦燥感で、カメリアに似ている人を彼女だと思ってしまうのだと自分に言い聞かす。
「……とりあえず仕事をしよう」
まだ『燕の巣』では新人のため接客以外に皿洗いなど雑用も多いが、仕事内容は嫌いではなかった。むしろ、何か仕事をしていたほうが気が紛れて塞ぎ込まなくてすんだ。
休憩室を出たヘルムは、今日も『燕の巣』の新人執事として笑顔を振りまくのであった。
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