結婚を認めてくれないので、女神の癒やし手と言われるようになりました。

からどり

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ヒーラーの手

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カメリア達は妖精の森に馬車が入れず置いてきたが、馬車内には荷物を乗せていたためこれからの旅に必要な物が揃っていなかった。
ドラゴンに変身することを試みた翌日から買物に行くための資金をどうするかで四人は悩んでいた。

「カメリア様とサリサさんはレベルの高さゆえに戦闘は不向きです。未開の地ですが私とガストラさんでギルドの仕事をします」

「あたいは昔ばあちゃんと一緒に畑仕事をしてたから畑仕事ならできるんだけどな。でも畑って儲からないし、ばあちゃんも年だから楽させたくて仕事に出たけど……」

最終的に病院に入院させられたサリサはそこで言葉を切った。少し理由を知っているカメリアも黙っていた。

「私は刺繍や人形服など作れますが、布や糸、針を使いますからその用意がまず必要になりますし」

「うーん、そうだな。二人はギルドで日雇いしてくれる店か内職を斡旋してもらったほうがいい。飛び込みで雇ってもらうのは二人には危ない」

ガストラにそう言われるとカメリア達は頷いた。

「皆でギルドの窓口で聞いてみましょう。カメリア様もよろしいですか?」

ツキカゲの提案で三人とも同意した。

「では、ギルドへ参りましょう」

***冒険者ギルド***
カメリアとサリサ、ツキカゲとガストラの二組に分かれて受付で仕事がないかたずねる。

「一日だけや短期での内職的な仕事ですか。よほど優れた能力とか希少性がないとクリエイター系の仕事は街に住んでる職人達が独占していますからねぇ。繁忙期の農作業の仕事も今はないし……。他のパーティーのレベル上げサポート、と言ってもお二人は見習いクラスだし……」

冒険者ギルドの若い男性職員が困ったように言う。

「意外とないものなんですねえ」

「冒険者ギルドに求める仕事はどうしてもモンスター討伐やモンスターがいて危険な場所での仕事が多いですから。それに職人ギルドや店に頼めば質の良いものが安定して手に入りますからわざわざ冒険者ギルドに頼む人はいませんから……。あ、でも、名前が売れるとそういう指名の仕事がくることもあるんですよ。有名なAランクパーティーの「青の波動」が作るスクロールは効果が高いからわざわざ遠方から交渉にくるんですよ」

若い職員は思い出したかのようにそう言った。

「うーん、あたいらじゃ指名されることもねーなー。じゃあ、なんか街の人の困ったことを解決する仕事とかねーかなー」

「行方不明のペットモンスター探しやペットモンスターの散歩などありますけどテイマーの資格がいるんですよね」

職員にそう言われ、先日のことを思い出して二人は半笑いになった。

「とりあえず今日はありがとうございました。また今度きます」

カメリアがそう言って頭を下げるとサリサも同じように礼をしてその場を後にした。
それから話を聞き終わったツキカゲとガストラと合流した。

「カメリア様。仕事をいくつか紹介していただきました」

「えっとな、まずは街の人に頼まれて買い物代行をする。それから畑の草むしり。最後に近くの森で薬草を摘む仕事」

彼らの方は冒険者らしくはないが短期の仕事をうまく紹介してもらえたらしい。

「それくらいなら私達にもできそうですね」

「はい。他にはカメリア様やサリサさんに向くものはありませんでした。それでどうしますか?私は皆で実績を積むためにも日雇いの手伝いをするのがいいと思いますが」

「はい。私達の方はお仕事がなかったのでその仕事をうけましょう」

「だな!んじゃ、早速受付に行って仕事の詳しい説明を聞こうぜ」

四人は一番簡単そうな『畑の草むしり』から受付に詳しい話しをきことにした。

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