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ヒーラーの手
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スタッフの青い顔をみてカメリアもガストラもソワソワと不安で落ち着かなくなる。
「こ、これは……なんという……」
「どうかしましたか?」
「いえ、その……なんと言えばよいのか……あなた自身はご自分のステータスなどご存知なのですか」
不安そうにカメリアとスタッフを交互に見るガストラ。カメリアは冒険者登録をした時に否定されて嘘のステータス登録をしたことを思い出して肩をすくめた。
「はい。知っております。ですが、冒険者登録をした時に正直に申し上げたのですが冗談だと思われてしまいまして仕方なく……」
カメリアの言い訳を聞いて、スタッフの女性が慌てて頭を下げた。
「それは……本当に……大変失礼いたしました!まさかレベル999とは知らず……ギルドスタッフの教育が至らぬばかりに……申し訳ありませんでした!すぐに上の者を呼んで参ります!」
女性は立ち上がり、自分の上司を呼びに駆け出して行った。
「ああ、いいのですよ。私はテイマーの証が欲しいだけでステータスのことはなんとも……」
この部屋のドアの前まで追いかけたのだが、彼女が廊下に出てしまうとカメリアはそれ以上は追わなかった。
「どうしましょう。サリサさんもレベル999なのにレベル5で今は登録更新されていますのに。ギルドの方に二度手間をおかけしてしまいますわ」
「なんでレベルを疑われたんだ?カメリアもサリサも強い。モンスターはみんな逃げるのに」
「そうなのですよ。戦いの経験を積みたいのに逃げてしまうので見つけたらすぐに攻撃しないといけませんの」
「でもレベル999なら経験なんていらないと思う。戦うこと必要か?」
ガストラの疑問にカメリアが頷いた。
「ええ。レベルは上がらないのですが鍛えることで力やスキルの経験が溜まって強くなるのですよ。攻撃魔法もレベル1からレベル2になりましたし」
「攻撃魔法のレベルが1から2?なんでそんなに低い?」
「えっとですね。お母様がおっしゃるにはレベルと能力は別なのだそうです。装備やアイテムで能力は上昇したり、下降したりしますでしょ?本人の努力でも上昇させることが出来るそうなのですわ。だから熟練度を上げるために鍛錬は怠ってはならないとテンさんもおっしゃっていました」
「巫女も大変なんだなあ」
「私もサリサも分からないことばかりですが、森に入るまでは皆様に教えてもらいながら頑張っていたのですよ」
二人が盛り上がっていると先ほどの女性職員が現れた。
「遅くなって申し訳ありません!ラタトスク支部長の『イズナ』を連れて参りました」
女性職員の後ろから片眼鏡をかけた中年女性がカメリアとガストラを見て微笑んでいた。
「あの私達、本当にテイマー証をいただければいいだけなのですけども」
「残念ながら自力でモンスターをテイムしていないと発行はできないですよ。カメリアさん。あなたがそばに仕えさせているのは呪いで姿を変えられた人間ですからね」
二人の前で椅子に座るイズナに一つ目巨人の正体を看破され、カメリアもガストラも目を丸くして驚いた。
「さて、私がラタトスク支部責任者のイズナです。カメリアさんとガストラくんですね。呪いで姿が変わった人間の救済措置として冒険者ギルドでは『人間証明カード』を発行することができます。ただこれが出来てから日が浅いので各地に浸透していない場合の方が多いです。この街を含め大きな街なら有効ですよ。発行しますか?」
「は、はい!お願いします!」
カメリアとガストラは同時に返事をした。これで一部の街だけではあるがガストラも一緒に街に入ることが出来るようになった。
「じゃあ、マイヤ、あなたに手続きをしてきてもらいましょうか」
女性職員に声をかけると「お任せください!」とすぐに部屋を出て行きギルドに戻って行った。
「さてと今度はカメリアさんのことです。本来ならあなたのレベルなら職業ランクは金クラス。パーティーランクもS以上。しかしSより上のランクはないので登録表記はSランクですけどもね。しかしながら能力を見る限りでは魔力以外は駆け出し冒険者そのもの。普通、レベルと能力は連動しています。ごくたまに突出した能力を持っておられる方はいましたが、ここまでアンバランスなのは初めてみましたよ」
「あのぉ……イズナさん。私と同じレベルの人がもう一人いるんです。その方も私と似た能力の方で……」
「レベル999がもう一人。前代未聞とはこのことですね。ですがこの能力値では現状維持をオススメします。なぜなら険しい道を乗り越えたAクラスの者ですらSクラスになるのは高い壁が聳え立っていますから」
カメリアは冒険者になるのが目的ではないのでランクはあまり興味がなかったので「このままでいます」と頷くだけだった。
「それからカメリアさん、あなたの個人的なことですので答えたくなければ構いません。あなた達が加入しているパーティーのハイビビス達とはどのようか関係なのですか」
なぜか急に緊迫した空気が漂いカメリアもガストラも緊張して息を呑んだ。
「ハイビビスは私の母です。あの、もしかして私の母がギルドにご迷惑をおかけしましたか?」
カメリアは母のハイビビスが自由人のため男爵の妻という枠を破壊している人物だとよく知っている。自分の出生も普通ではなかった。だからハイビビスが冒険している先々でいろいろな人に迷惑をかけているのは簡単に予想がついた。
「いえ、そういうわけではありません。彼女とは古い知り合いでしてね。あなたのレベルに納得がいきました。あなたがドラゴンを食べたハイビビスの子供だったんですね。本当にドラゴンから力を譲られていたとは……」
「……」
カメリアは母の悪食がこんなところにまで広まっていることに頭を抱えたくなった。
「彼女は私も一目置く存在の冒険者ですよ。ただちょっと自由すぎるところがあります。あなたも苦労されていますね」
イズナはカメリアの表情を見て苦笑していた。
「おまたせしました!人間証明カードの発行手続きが完了しました。これでガストラさんが人間だと証明できるようになりました。どうぞ」
手続きに行っていた女性スタッフが戻ってきてガストラに証明カードを差し出した。
「ありがとうございます。よかった」
彼はスタッフからカードを受け取り、大きな目を細めて笑った。
その後、二人はサリサとツキカゲと合流し、四人は無事に宿に泊まることができた。
「こ、これは……なんという……」
「どうかしましたか?」
「いえ、その……なんと言えばよいのか……あなた自身はご自分のステータスなどご存知なのですか」
不安そうにカメリアとスタッフを交互に見るガストラ。カメリアは冒険者登録をした時に否定されて嘘のステータス登録をしたことを思い出して肩をすくめた。
「はい。知っております。ですが、冒険者登録をした時に正直に申し上げたのですが冗談だと思われてしまいまして仕方なく……」
カメリアの言い訳を聞いて、スタッフの女性が慌てて頭を下げた。
「それは……本当に……大変失礼いたしました!まさかレベル999とは知らず……ギルドスタッフの教育が至らぬばかりに……申し訳ありませんでした!すぐに上の者を呼んで参ります!」
女性は立ち上がり、自分の上司を呼びに駆け出して行った。
「ああ、いいのですよ。私はテイマーの証が欲しいだけでステータスのことはなんとも……」
この部屋のドアの前まで追いかけたのだが、彼女が廊下に出てしまうとカメリアはそれ以上は追わなかった。
「どうしましょう。サリサさんもレベル999なのにレベル5で今は登録更新されていますのに。ギルドの方に二度手間をおかけしてしまいますわ」
「なんでレベルを疑われたんだ?カメリアもサリサも強い。モンスターはみんな逃げるのに」
「そうなのですよ。戦いの経験を積みたいのに逃げてしまうので見つけたらすぐに攻撃しないといけませんの」
「でもレベル999なら経験なんていらないと思う。戦うこと必要か?」
ガストラの疑問にカメリアが頷いた。
「ええ。レベルは上がらないのですが鍛えることで力やスキルの経験が溜まって強くなるのですよ。攻撃魔法もレベル1からレベル2になりましたし」
「攻撃魔法のレベルが1から2?なんでそんなに低い?」
「えっとですね。お母様がおっしゃるにはレベルと能力は別なのだそうです。装備やアイテムで能力は上昇したり、下降したりしますでしょ?本人の努力でも上昇させることが出来るそうなのですわ。だから熟練度を上げるために鍛錬は怠ってはならないとテンさんもおっしゃっていました」
「巫女も大変なんだなあ」
「私もサリサも分からないことばかりですが、森に入るまでは皆様に教えてもらいながら頑張っていたのですよ」
二人が盛り上がっていると先ほどの女性職員が現れた。
「遅くなって申し訳ありません!ラタトスク支部長の『イズナ』を連れて参りました」
女性職員の後ろから片眼鏡をかけた中年女性がカメリアとガストラを見て微笑んでいた。
「あの私達、本当にテイマー証をいただければいいだけなのですけども」
「残念ながら自力でモンスターをテイムしていないと発行はできないですよ。カメリアさん。あなたがそばに仕えさせているのは呪いで姿を変えられた人間ですからね」
二人の前で椅子に座るイズナに一つ目巨人の正体を看破され、カメリアもガストラも目を丸くして驚いた。
「さて、私がラタトスク支部責任者のイズナです。カメリアさんとガストラくんですね。呪いで姿が変わった人間の救済措置として冒険者ギルドでは『人間証明カード』を発行することができます。ただこれが出来てから日が浅いので各地に浸透していない場合の方が多いです。この街を含め大きな街なら有効ですよ。発行しますか?」
「は、はい!お願いします!」
カメリアとガストラは同時に返事をした。これで一部の街だけではあるがガストラも一緒に街に入ることが出来るようになった。
「じゃあ、マイヤ、あなたに手続きをしてきてもらいましょうか」
女性職員に声をかけると「お任せください!」とすぐに部屋を出て行きギルドに戻って行った。
「さてと今度はカメリアさんのことです。本来ならあなたのレベルなら職業ランクは金クラス。パーティーランクもS以上。しかしSより上のランクはないので登録表記はSランクですけどもね。しかしながら能力を見る限りでは魔力以外は駆け出し冒険者そのもの。普通、レベルと能力は連動しています。ごくたまに突出した能力を持っておられる方はいましたが、ここまでアンバランスなのは初めてみましたよ」
「あのぉ……イズナさん。私と同じレベルの人がもう一人いるんです。その方も私と似た能力の方で……」
「レベル999がもう一人。前代未聞とはこのことですね。ですがこの能力値では現状維持をオススメします。なぜなら険しい道を乗り越えたAクラスの者ですらSクラスになるのは高い壁が聳え立っていますから」
カメリアは冒険者になるのが目的ではないのでランクはあまり興味がなかったので「このままでいます」と頷くだけだった。
「それからカメリアさん、あなたの個人的なことですので答えたくなければ構いません。あなた達が加入しているパーティーのハイビビス達とはどのようか関係なのですか」
なぜか急に緊迫した空気が漂いカメリアもガストラも緊張して息を呑んだ。
「ハイビビスは私の母です。あの、もしかして私の母がギルドにご迷惑をおかけしましたか?」
カメリアは母のハイビビスが自由人のため男爵の妻という枠を破壊している人物だとよく知っている。自分の出生も普通ではなかった。だからハイビビスが冒険している先々でいろいろな人に迷惑をかけているのは簡単に予想がついた。
「いえ、そういうわけではありません。彼女とは古い知り合いでしてね。あなたのレベルに納得がいきました。あなたがドラゴンを食べたハイビビスの子供だったんですね。本当にドラゴンから力を譲られていたとは……」
「……」
カメリアは母の悪食がこんなところにまで広まっていることに頭を抱えたくなった。
「彼女は私も一目置く存在の冒険者ですよ。ただちょっと自由すぎるところがあります。あなたも苦労されていますね」
イズナはカメリアの表情を見て苦笑していた。
「おまたせしました!人間証明カードの発行手続きが完了しました。これでガストラさんが人間だと証明できるようになりました。どうぞ」
手続きに行っていた女性スタッフが戻ってきてガストラに証明カードを差し出した。
「ありがとうございます。よかった」
彼はスタッフからカードを受け取り、大きな目を細めて笑った。
その後、二人はサリサとツキカゲと合流し、四人は無事に宿に泊まることができた。
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