結婚を認めてくれないので、女神の癒やし手と言われるようになりました。

からどり

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飛び立つ時

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***妖精の森***
整備された森ではないため馬車は入れず、魔石で結界張って森の出入り口に止めて一行は森に入った。

「霧が出てきたわね。視界が悪くなるから気をつけて」

ハイビビスがメンバー達に注意を促す。はぐれてしまいそうな不安から自然とカメリアとサリサはお互いにひっついて歩くようになった。

「何だが怖いですわ」

「ああ……そうだな。あたいもちょっと怖くなったかも」

ベテランのハイビビス、テンが前を、中間にカメリアとサリサ。そのすぐ後ろにツキカゲ。後ろをツーとエイトの変形的な4列で森の中を進む。
奥に進むほど霧も濃くなっていき、木々に遮られて日が差さないため暗くなっていく。もう自分達がどこを歩いているか分からないほどだ。段々と口数が少なくなっていき、カメリア達がふと気がつくと前にも後ろにも誰もいない。カメリアとサリサ、ツキカゲの三人だけになっていた。

「ど、どうしよう……」

「皆、どこ行っちまったんだ?」


二人は泣きそうになりながら抱き合った。その動作だけでカメリア達の衣擦れの音すら響く。それが不気味さを際立たせていた。なにが起きるか分からない状態で戦える人間は自分一人になったツキカゲはいつでも刀が抜けるよう構えた。

「お母様!」

「うわぁん!助けてぇ!」

カメリアとサリサの叫び声が響き渡る。それが聞こえなくなると耳が痛くなるような静けさが訪れた。風の音に乗って何か聞こえたような気がして辺りを見回す。すると近くの茂みが揺れた。すぐに刀を抜くツキカゲ。

そこに現れたのは一つ目の巨人だ。青い肌と青い大きな目。ボサボサの銀色の髪は泥や汚れでくすんでいた。一つ目は3mはありそうな巨体を左右に揺らして近づいてきた。

「うるさいなあ。人間とドラゴン…ドラゴンじゃない?……なんでここにいるんだ」

「っ!?」

そののんびりした声に惑わされずツキカゲは刀を振り上げ斬りかかるが巨人には見えない壁があるのか刀が触れる前に弾かれてしまった。
弾き飛ばされ体勢を崩し膝をつくツキカゲ。

「あ……あたい、死んだ」

カメリアはサリサに支えられて立っているのがやっとで声も出なかった。

「人間の姿のドラゴン?ドラゴンの力をもつ人間?……ハザの言ってた巫女か~」

『巫女』そして「ハザ』という言葉に二人は反応した。

「ツキカゲ、待ってくれ。な、デカいの。巫女って聖樹の巫女のこと言ってんのか?」

知り合いの知り合いは悪い奴じゃないという持論があるサリサは急に強気になった。

「ああ、もちろん。この森は選ばれた者しか入れないよう魔法がかかってる。なのにお前達は入れた。ということは、お前達が聖樹に選ばれた存在ということ」

巨人の目には確信があった。カメリアは震える手で巨人を指さした。

「ほ、他の皆はどこですの?ま、ま、さか食べたとかじゃ」

カメリアやサリサにとってここまで来る間に戦い方を指導してくれたテンやツーは師匠という存在になっていた。

「巫女以外は魔法で森から出るようになってる。聖樹の木は人間の血を嫌うから、できるだけ人間は追い出す。おれの仕事は聖樹の巫女に聖樹の木を渡すこと。ついてこい」

「カメリア、歩けるか?」

「サリサ、まさかついて行くのですか?ついて行ったら彼の家で私達を料理して食べるのかも」

「怖いこと言わねーでくれよ。ツキカゲの攻撃も効かないんだぞ。あたい達なんかこの場で簡単に食べられ……る」

サリサがわずかに勇気をだしてもすぐに萎れてしまう。カメリアとサリサは抱き合ってガタガタと震えた。

「ははは。面白い奴らだ。坊主、さっきの剣筋は良かったけど軽い。もっと強くなるといい。それとも巫女が強くなるまで待つべきかもな」

そう言うと一つ目の巨人がこちらに背を向けて歩きだした。
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