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飛び立つ時
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カメリアが目覚めるとギョクロンの店の仮眠室のベッドで横になっていた。
ハイビビスが心配そうにカメリアを見つめる。
「大丈夫?カメリア。あなたには刺激が強すぎた話をしてしまったわね」
落ち込むハイビビスの顔は娘を心配する母になっていた。
「ママ、私は大丈夫よ。いろいろなことが頭の中で一度に起きたからついて行けなくなってしまったの。聖樹の巫女に選ばれたせいか今まで無かった力が開放されたの」
昔、呼んでくれたママという呼び方に戻ったカメリアの言葉を聞いてハイビビスは黙り込む。
「ねえ、ママ。……私、普通の女の子よ。半分人間じゃないなんて変よ。心から好きな人だっているのよ。学校の能力検査でも皆と同じくらいだったのに、急にレベルが999なんて何かの冗談よ」
不安に押しつぶされそうな顔で訴えるカメリアを見てハイビビスは胸を痛めた。
「カメリア……」
ハイビビスは申し訳なさで彼女の手を握った。
「カメリア……言いにくいけどあなたは生まれたときからレベル999よ」
自分自身が知らなかった真実を告げられカメリアはこれが夢だと思いたかった。
「子供のうちに詳しいステータス数値の検査をするとスペック崇拝という差別や能力開発の放棄に繋がると学校での数値化検査が撤廃されたためよ。子供のうちはステータスの変化が大きいし、潜在的な能力やその人の努力次第で成長できるからね」
ハイビビスはそこで言葉を区切り、カメリアの目をまっすぐ見た。
「カメリア、よく思い出して。学校では『鑑定』じゃなくて『運動』を実際にしてその力で検査していたでしょう?カメリアのステータスの筋力や敏捷は普通の女の子の数値なの。レベルが高いのに学校の検査で皆と同じくらいだったのはそのためよ」
言われてみると確かにそういう記憶がある。学校の運動もあまり好きじゃなかった。とくに『運動能力のテスト』はスタミナの高い女の子という結果になった。太っているのでスタミナが高いことを周囲に納得されるし、それを男子に笑われるのが嫌いだった。
「あぁ……そうだわ……でもどうして…ああ、ママがドラゴンの心臓を食べたからね。じゃあ、サリサのレベルの高さも彼女のママがドラゴンの心臓を食べたというのかしら。この世に二人もドラゴンの心臓を生で食べるママがいるなんて……」
混乱している様子のカメリアに優しくハイビビスが言う。
「カメリア。あなたは私とカールの娘よ。それは変わらない真実。どんな力を持っていようと関係ないわ。私がずっとあなたのママよ。たとえ世界中の人々が否定してもね」
ハイビビスは愛おしい目でカメリアを見つめる。急に『母の愛』を向けられてもカメリアは複雑な思いを抱えるしかできない。五年も家をあけて姉の結婚式にも来なかった母。今、最大の困難の中にいる自分を助けてくれる力があるのも母。
(なんなのこれ……。ママを恨むべきなのか感謝すべきなのかわからないわ)
ハイビビスに甘えたい気持ちと反発したい気持ちがごちゃ混ぜになってカメリアは泣きそうになる。ハイビビスも自分が堂々と母と言える人間ではないと自覚はしている。だが腹を痛めて生み育てた子だ。娘三人ともが母ではないと仮に否定しても連絡を取らず離れていても想っていたと声をあげられる。それだけは事実だ。そして今も娘を愛していると声をあげ守るために戦いを続けている。
「お祖父ちゃんに挨拶をしてサリサさんのところへ行きましょう。三人で美味しいご飯を食べながら今後の話しをしましょう」
母の言葉にカメリアは黙って頷いた。
ハイビビスが心配そうにカメリアを見つめる。
「大丈夫?カメリア。あなたには刺激が強すぎた話をしてしまったわね」
落ち込むハイビビスの顔は娘を心配する母になっていた。
「ママ、私は大丈夫よ。いろいろなことが頭の中で一度に起きたからついて行けなくなってしまったの。聖樹の巫女に選ばれたせいか今まで無かった力が開放されたの」
昔、呼んでくれたママという呼び方に戻ったカメリアの言葉を聞いてハイビビスは黙り込む。
「ねえ、ママ。……私、普通の女の子よ。半分人間じゃないなんて変よ。心から好きな人だっているのよ。学校の能力検査でも皆と同じくらいだったのに、急にレベルが999なんて何かの冗談よ」
不安に押しつぶされそうな顔で訴えるカメリアを見てハイビビスは胸を痛めた。
「カメリア……」
ハイビビスは申し訳なさで彼女の手を握った。
「カメリア……言いにくいけどあなたは生まれたときからレベル999よ」
自分自身が知らなかった真実を告げられカメリアはこれが夢だと思いたかった。
「子供のうちに詳しいステータス数値の検査をするとスペック崇拝という差別や能力開発の放棄に繋がると学校での数値化検査が撤廃されたためよ。子供のうちはステータスの変化が大きいし、潜在的な能力やその人の努力次第で成長できるからね」
ハイビビスはそこで言葉を区切り、カメリアの目をまっすぐ見た。
「カメリア、よく思い出して。学校では『鑑定』じゃなくて『運動』を実際にしてその力で検査していたでしょう?カメリアのステータスの筋力や敏捷は普通の女の子の数値なの。レベルが高いのに学校の検査で皆と同じくらいだったのはそのためよ」
言われてみると確かにそういう記憶がある。学校の運動もあまり好きじゃなかった。とくに『運動能力のテスト』はスタミナの高い女の子という結果になった。太っているのでスタミナが高いことを周囲に納得されるし、それを男子に笑われるのが嫌いだった。
「あぁ……そうだわ……でもどうして…ああ、ママがドラゴンの心臓を食べたからね。じゃあ、サリサのレベルの高さも彼女のママがドラゴンの心臓を食べたというのかしら。この世に二人もドラゴンの心臓を生で食べるママがいるなんて……」
混乱している様子のカメリアに優しくハイビビスが言う。
「カメリア。あなたは私とカールの娘よ。それは変わらない真実。どんな力を持っていようと関係ないわ。私がずっとあなたのママよ。たとえ世界中の人々が否定してもね」
ハイビビスは愛おしい目でカメリアを見つめる。急に『母の愛』を向けられてもカメリアは複雑な思いを抱えるしかできない。五年も家をあけて姉の結婚式にも来なかった母。今、最大の困難の中にいる自分を助けてくれる力があるのも母。
(なんなのこれ……。ママを恨むべきなのか感謝すべきなのかわからないわ)
ハイビビスに甘えたい気持ちと反発したい気持ちがごちゃ混ぜになってカメリアは泣きそうになる。ハイビビスも自分が堂々と母と言える人間ではないと自覚はしている。だが腹を痛めて生み育てた子だ。娘三人ともが母ではないと仮に否定しても連絡を取らず離れていても想っていたと声をあげられる。それだけは事実だ。そして今も娘を愛していると声をあげ守るために戦いを続けている。
「お祖父ちゃんに挨拶をしてサリサさんのところへ行きましょう。三人で美味しいご飯を食べながら今後の話しをしましょう」
母の言葉にカメリアは黙って頷いた。
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