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初めての反抗期

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「洗脳?心から人を好きになることは洗脳なんかじゃないわ。私はお婆様の言う通りに家を出て平民になったのです。もうお互いに関わることはございません。私が誰を愛したって自由じゃないですか」

「馬鹿な娘だね!家を飛び出したくらいで平民になれるものか!貴族の血をひいている者は貴族でなければ生きていけない。やっぱりあの男に洗脳されている!その証拠にあんたは今だって涙を流しているじゃないか」

カメリアは自分の頬に触れ、そこが濡れていることに気がついた。

「大切な人と引き離されれば誰だって涙を流します!それが愛する人ならばなおさらのことです!!」

「黙れ!その穢れた口を開くんじゃないよ!さあ、洗脳された可哀想な孫を病院で治療してやらなきゃならない!連れていきなさい!」

「嫌です!ヘルム様のところへ帰して!」

カメリアの声は虚しく響くだけだった。

******


『病院』に入院させられたカメリアは毎日のように祖母の面会を自分に与えられた窓のない個室で受けていた。そしてその隣には医者がいた。

「カメリア……。どうしてあんな男のことが好きなんだい?あいつはとんでもないクズだよ。お前に暴力を振るったんだろう?」

「暴力など振るわれていません!いつも大切にしてくださいました!どうして嘘をつけとおっしゃるのですか?」

「ああ、先生。孫はまだ『洗脳』されているよ!どうかこれで……」

祖母がそっと医者の手に何かを握らせた。

「うむ、お孫さんには強い洗脳がかけられていますから洗脳が解けるまで入院が必要でしょう。私どもにお任せください」

「ああ、ありがとうございます。そのお言葉を聞いて安心しました。孫のために自宅を離れておりましたからそろそろ帰りませんと……」

「お孫さんの洗脳は確実に病院で解きますからご心配はいりません。それじゃあ、私は一度失礼します。お大事に」

「ありがとうございます」

二人きりになると祖母はカメリアの肩を掴んで揺さぶってきた。

「ほら見ろ!あの男はろくでなしなんだ!お前の幸せなど考えず、利用だけしようとする男なんだよ!」

カメリアは全力で祖母の腕を振り払い、数歩後ろに下がった。

「違います!洗脳しようとしているのはお婆様よ!」

「まだそんなことを言うのかい?いい加減にしないと私も怒るよ!」

「もうたくさんです!私とヘルム様の仲を引き裂こうとするお婆様の顔を見るのは!二度と来ないで!縁を切れと言ったのはそちらでしょう!もう私に関わらないで!」

その時、ドアが開いて入ってきたのは看護師だった。

「カメリアさんが大きな声を出して興奮状態です。危険ですから本日の面会は中断してください」

祖母と孫はお互いの顔を睨みあう。看護師がいなければ取っ組み合いの喧嘩になっていただろう。

「私は帰らなくてはいけないからここには来れないが、早く洗脳を解いて私に謝りに会いにくるんだよ!」

「二度と会いたくないわ!」

扉が閉まる音を聞きながらカメリアは大きなため息をつく。

(ヘルム様は無事でしょうか。無実の罪をきせられて処刑などされていませんよね。お婆様しか面会に来てくださる方がいないから外の情報は何も分からないわ。だけどどうか怪我なく過ごせていますように)

カメリアは静かにヘルムの無事を祈る。
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