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チャンスを掴み続ける勇気
17.5
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初めてのデートは季節の花が咲く公園を二人で歩いた。隣には自分の姉妹や父ではなく婚約する予定の男性。
馬車の中は二人きりで大胆に甘えてしまったが、人がいる公園を歩くと太っていた時のように人目が気になってしまう。冷静になるほど俯瞰的に考えられるようになって自分がしたことの恥ずかしさで手足をバタバタさせたくなってくる。
「カメリアさんは花が好きですか?」
ヘルムの質問にカメリアは悩んだ。花が咲いていると綺麗だと思うし花束をもらうと嬉しい。しかし姉や父が花を育てその花から種も得ているのを見ると自分の好きな気持ちは軽いものだと思う。
「花を見るのは好きです。綺麗で和みますよね」
「それじゃあ、今度温室にも行きましょうか。花の苗を買って家で育ててもいいかもしれませんよ?」
「それは素敵ですね。結婚したらヘルムさんとお家でお花を育てて過ごすようになるのね。なんだかそれも素敵だわ」
「もちろん。結婚したら二人で一緒に育てましょう」
「え、あっ……」
思っていたことをそのまま口にしてしまったことに今更ながら気がつき、カメリアは顔を赤くして下を向いた。
彼の方から結婚という言葉を聞くと、初めての気持にふわふわして嬉しくなるのに恥ずかしくなる。
ヘルムはそんなカメリアを見て、二度しか会っていないのに傷心した心が癒されるような気持ちになった。
「ああ、可愛い。本当にカメリアさんが僕の婚約者になってくれて良かった。もう絶対に手放せない」
ヘルムはカメリアの手を取り、指を絡ませて恋人つなぎにした。
「ひゃっ!?」
家族とはしたことがない手の繋ぎ方に驚いたカメリアだが、その手を握り返すと、ヘルムが優しい眼差しで微笑んでくれた。
二人は公園をゆっくりと回って色とりどりの花々を見て回った。まだ日が高くのぼっているが、馬車で家まで送ってもらった車内で別れを惜しむ。
「今日はとても楽しかったです」
綺麗な花よりもヘルムのことを見ていた時間の方が長く、ずっとドキドキしていた。
「私もとても楽しい一日でした」
眼鏡越しの目が優しく笑っている。
「また、こうしてお会いしたいです」
「私ももです」
ヘルムは名残惜しそうにカメリアの頬に手を当て、その手にカメリアは自分の手を重ねた。
「次はいつお会いできますか?お手紙を書いても良いでしょうか?」
「私は仕事でここにいますから、いつでも呼んでいただければ伺うことができますよ」
「では、お休みの日に遊びに来てください。美味しいお菓子を用意しておきますね」
「ありがとう。楽しみにしています。それじゃあ、また今度会いにいきます……」
触れた手が離れて馬車に乗り込むと、ヘルムはカメリアが降りるのを見届けてから扉を閉めた。
ヘルムが乗った馬車を見送ると、カメリアも家に向かって歩き出した。
(ああ、わたくしったら何をしているのかしら。どうしてあんな大胆なことを言ってしまったのかしら。)
でも後悔はしていない。
今まで恋なんてしたことがなく、どうすれば良いのか分からなかったが、初めて自分を素敵だと言って必要としてくれる人に巡り合えたのだ。
(私、ヘルム様のことが好きだわ。とても好き。だって、こんなに胸が苦しいんですもの)
カメリアはその日、初めて恋の喜びを知った。
馬車の中は二人きりで大胆に甘えてしまったが、人がいる公園を歩くと太っていた時のように人目が気になってしまう。冷静になるほど俯瞰的に考えられるようになって自分がしたことの恥ずかしさで手足をバタバタさせたくなってくる。
「カメリアさんは花が好きですか?」
ヘルムの質問にカメリアは悩んだ。花が咲いていると綺麗だと思うし花束をもらうと嬉しい。しかし姉や父が花を育てその花から種も得ているのを見ると自分の好きな気持ちは軽いものだと思う。
「花を見るのは好きです。綺麗で和みますよね」
「それじゃあ、今度温室にも行きましょうか。花の苗を買って家で育ててもいいかもしれませんよ?」
「それは素敵ですね。結婚したらヘルムさんとお家でお花を育てて過ごすようになるのね。なんだかそれも素敵だわ」
「もちろん。結婚したら二人で一緒に育てましょう」
「え、あっ……」
思っていたことをそのまま口にしてしまったことに今更ながら気がつき、カメリアは顔を赤くして下を向いた。
彼の方から結婚という言葉を聞くと、初めての気持にふわふわして嬉しくなるのに恥ずかしくなる。
ヘルムはそんなカメリアを見て、二度しか会っていないのに傷心した心が癒されるような気持ちになった。
「ああ、可愛い。本当にカメリアさんが僕の婚約者になってくれて良かった。もう絶対に手放せない」
ヘルムはカメリアの手を取り、指を絡ませて恋人つなぎにした。
「ひゃっ!?」
家族とはしたことがない手の繋ぎ方に驚いたカメリアだが、その手を握り返すと、ヘルムが優しい眼差しで微笑んでくれた。
二人は公園をゆっくりと回って色とりどりの花々を見て回った。まだ日が高くのぼっているが、馬車で家まで送ってもらった車内で別れを惜しむ。
「今日はとても楽しかったです」
綺麗な花よりもヘルムのことを見ていた時間の方が長く、ずっとドキドキしていた。
「私もとても楽しい一日でした」
眼鏡越しの目が優しく笑っている。
「また、こうしてお会いしたいです」
「私ももです」
ヘルムは名残惜しそうにカメリアの頬に手を当て、その手にカメリアは自分の手を重ねた。
「次はいつお会いできますか?お手紙を書いても良いでしょうか?」
「私は仕事でここにいますから、いつでも呼んでいただければ伺うことができますよ」
「では、お休みの日に遊びに来てください。美味しいお菓子を用意しておきますね」
「ありがとう。楽しみにしています。それじゃあ、また今度会いにいきます……」
触れた手が離れて馬車に乗り込むと、ヘルムはカメリアが降りるのを見届けてから扉を閉めた。
ヘルムが乗った馬車を見送ると、カメリアも家に向かって歩き出した。
(ああ、わたくしったら何をしているのかしら。どうしてあんな大胆なことを言ってしまったのかしら。)
でも後悔はしていない。
今まで恋なんてしたことがなく、どうすれば良いのか分からなかったが、初めて自分を素敵だと言って必要としてくれる人に巡り合えたのだ。
(私、ヘルム様のことが好きだわ。とても好き。だって、こんなに胸が苦しいんですもの)
カメリアはその日、初めて恋の喜びを知った。
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