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チャンスを掴み続ける勇気

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一ヶ月、とうとう約束の日となった。男子禁制のためヴィーナスのそばにはツキカゲ用に用意してくれた待機席に座らせて待たせた。

いつもの施術室でフィルンが体重計を用意して待っている。クラウディアとカメリア対フィルンの決着がこの体重計に乗ることで決まるのだ。

「お待ちしておりました。カメリア様。こちらの衣装にお着替えください」

施術用の下着をカメリアが受け取るとフィルンは部屋を出た。

「大丈夫!カーテンの前にいるから終わったら声をかけてね」

クラウディアがカメリアを励まして部屋をでる。残されたカメリアは静かに息を吐いてから着替えをはじめた。

「お待たせしました」

クラウディアがカーテンを開けるとカメリアが緊張した面持ちで立っていた。

「では、体重測定を始めます」

フィルンがカメリアの正面に体重計を置いた。数字は0を指している。

(緊張するわ。でも大丈夫よ。やることは全てやったわ)

体重計にそっと片足から乗る。ゆっくりともう片方の足を上にて乗せた。そのまましばらく動かないカメリア。

「……」

体重計の針の動きが止まるのを静かにまつフィルン。
心配になったクラウディアが話しかけようとした時だった。

「……10.7kg減。減量成功です」

フィルンが静かに告げた。カメリアの目が潤む。

(よかったわ。これでクラウディアさんのお気持ちに応えることができたわ)

「……今回は私の負けですね。お約束どおり窓ガラスの弁償も10回コース代も不要です」

フィルンがそれほど悔しそうではないためカメリアは首をかしげたがクラウディアに飛びつかれてそんな考えも飛び退いてしまった。

「やったね!カメリア!私達、勝ったよ!」

呼び方がカメリア様からカメリアさんへ変わり、とうとう呼び捨てで呼ぶクラウディア。

「ありがとうございます。クラウディア」

思いきって自分も彼女を呼び捨てで呼んでみるとギュッとハグをされた。

「おめでとう!あんなに頑張ってたんだもん!これからは友だちとしてリバウンド期を乗り越えるの手伝うからね!」

涙ぐんだ声で褒められる。カメリアの瞳からもいつの間にかポロリと大粒の涙がこぼれ落ちていた。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「うん!頑張ろうね!」

クラウディアとカメリアはお互い手を取り合って喜び合った。

******
グリューン家 ギョクロンの執務室。

「以上がカメリア様とクラウディア様対フィルン様の賭けの端末でございます」

ごくごく普通の一般貴族の姿をした女がギョクロンの机の前で立ち報告書を読み上げた。

「ふうむ、独自の賭けか。私が孫たちに与えたルールでは問題ナシだ。私の方は良しとしよう」

「この後の話になりますが、カメリア様が他のご令嬢からの相談を解決するため一人でできる痩身エステマッサージをお考えになり、ヴィーナスプロデュースで今回のことをダイエット本にして世に出す計画を立てております」

「ほおっ!あの表に出たがらない子が!ふっふっふ。面白い。そのまま継続観察だ」
「承知いたしました」

女は深々と頭を下げて部屋を出ていった。入れ替わりに入ってきたのはアーデルだった。

「お祖父様。ゲームの方はいかがですか?」

彼はギョクロンの孫であり、アデルの長男。故にゲームには参加していないが、参加者の内、誰が優勝するかという賭けのディーラーを任されていた。

「ふむ、お前か。なかなかおもしろいよ。カメリアがダイエットに成功だ!」

「他所で彼女の減量は賭けの対象にされていたようですね。しかし…ゲーム自体に無関係では」

「そのダイエットを本に纏めるそうだよ。店がプロデュースするので取り分は減るだろうが、本が売れれば印税が入る。額にもよるが他の者にも動きがでるだろう」

アーデルの祖父ギョクロンはニヤリと笑った。

「では、どの者が勝つとお思いですか?お祖父様」

「私はただの主催だ。だが、あえて言うなら……」

「……それは?」

「ゲーム参加者の誰かだ」

グリューンは指をパチンと鳴らした。すると彼の隣に黒いマントを羽織りフードを被った男が現れた。

「……お祖父様。彼は何者で?」

「ただの使い走りだよ。ちょっとした頼み事をしていてね。彼の役目自体は終わり、もう必要ないのだが、私のいうことを聞くので何かと便利でね。今もそばに置いているんだよ」

「お初にお目にかかります。ナシと申します」

「アーデルだ。よろしく頼むよ」

「はい」

「さて、ナシ、報告を」
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