結婚を認めてくれないので、女神の癒やし手と言われるようになりました。

チャンスの扉を開いたら

１１

カメリアの心を捉えた言葉は今までマイペースに生きていた彼女からは出せない、眩しい言葉だった。

「どうか私を変えてくださいませ。クラウディアさん」

熱いものが胸からこみ上げてきて、自分だけではどうにも出来なかった変身を心から願うカメリア。

「ずるいですね。クラウディアは……まあ、今回は私が悪役の方が適任でしょうからよろしいですけども」

「えっ……えっと……ごめんね？でも、カメリア様にどうしても綺麗になってほしくて。つい、てへっ」

わざと可愛く首をかしげて妹アピールをするが、似ていなくても双子。長い間、自分の顔より見ているので妹の悩殺スマイルを可愛いとも思わないフィルンはため息をついた。

「カメリア様、窓ガラス代をかけて私と賭けをしましょう」

戸惑う相手を意に介さず言葉を投げるフィルン。

「はい？」

「この窓ガラス、国外の職人から取り寄せた模様入りの窓でして一枚『３７万ゴールド』です。」

「！！」

「ルールは簡単です。カメリア様がクラウディアと組み、一月で１０ｋｇ痩せればカメリア様の勝ちです。窓ガラス代と本日、契約したヴィーナスの痩身エステマッサージ１０回分の支払いは不要です。たとえ１ｇでも減量目標に届かなければ窓ガラス代をきっちりと支払っていただいた上、痩身エステマッサージ代の代わりとしてその刀をいただきます」

ぐにゃりと視界が歪むようなめまいに襲われたカメリアだが意外にも自分の二本の足はよろけることなく立っていた。

「さあ、いかがなさいますか？」

「もちろんやりますよね！頑張りましょう！！サポート役は私に任せてください！」

（これを断ったら私、嫌な人よね。１０ｋｇ減らなくて刀をフィルンさんに渡したとしても彼女ならツキカゲと話が通じますから、そっちの方が彼も幸せかもしれませんわ。私も重荷から開放されますし）

絞り出すようにカメリアは答えた。

「やります」

その返事を聞いたフィルンは満足げな笑顔を見せた。

＊＊＊クラウディア＆フィルン＊＊＊

カメリアがツキカゲを連れて店から出ていくとフィルンは息を吐いた。

「ふぅー緊張しました。やっぱり交渉事は苦手ですね」

「お疲れ様。でも上手くいったね！これでカメリア様がダイエットに成功したらウチの店の宣伝になるよ！」

「それはどうでしょう。ですが、グリューン家の外孫ですし新しいダイエット方法としてこの店のことをお茶会などで話していただければ口コミ効果は期待できそうですね」

「そうね。話は変わるけどね。あの子、自分のお祖父ちゃんが開催した賭けによく参加しようと思ったよね。私ならあんな裏がいっぱいありそうな賭け、ごめんだもん」

「そうね。孫の目の前に土地と爵位をぶら下げて競争させるなんて普通はしませんもの。私もごめんですわ」

「それにやっぱり自分の手で世界を掴まなきゃね！誰かに押し付けられたり、与えられた役じゃつまらないわ！なんて言っても私達は」

「「未来接近部の創立者の一人だもの」」

息がピッタリあって二人は顔を合わせてニッコリと笑う。

「さすが双子よね！」

「そうですね。似ていない双子なのに考えはいつも同じ」

「カメリア様の方はがっつり任せて！」

「お店の宣伝も兼ねてカメリア様には１０Kg以上、しっかり痩せていただかなければなりませんよ」

「フィルンはカメリア様がダイエットから逃げないように悪役としてガッツリ外堀を埋めてね！よし！私もやるぞぉ！」


カメリアがツキカゲと共にゲームへ参加し、同時進行で痩せたらどうなるのか？それはまだ誰も知らない。