結婚を認めてくれないので、女神の癒やし手と言われるようになりました。

からどり

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チャンスの扉を開いたら

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テーブルに置いてあった図や絵の書かれた紙を使って説明を受けるが、カメリアにとって初めて聞く単語が多くあまり頭に入ってこない。

「筋膜リリース施術と同時に、リンパに溜まった老廃物を流し痩身効果を高めるマッサージで身体についた脂肪を減らし、時間はかかりますが減量も期待できます。カメリア様でしたら体重の変化はなくとも体験コースの施術で脂肪が減っているのを実感できると思います」

「そう、なんですか?」

減量や脂肪が減るという言葉を聞いてカメリアの心が初めてグラリと揺れる。

「はい。私共が自信をもってお勧めする痩身エステマッサージです」

「その、お試しコースはおいくらでしょうか」

「はい、1万ゴールドになります。こちらは体験コースのためお一人様一回限りとなっております」

「1万ゴールド!」

おもわず口から驚きが飛び出してきた。
頭の中で1万ゴールドでなにができるか、なにが買えるかがグルグルと目まぐるしく回る。

(私が趣味で作った人形服を売ってお小遣いや家計を助けるために1万ゴールドを渡すとしましょう。材料費を引いて1万ゴールド分を作るとしたら私が作った物だと5着以上は必要ですわ。それが一回であっさり飛んで行ってしまうなんて!!)

場違いな場所に来てしまったと感じ、全身に寒気が走る。

「チョット待って~~!!」

甲高い声に二人共ビクリと身体が跳ねて驚く。仕切りのカーテンを開けて飛び込んで来たのはピンクゴールドのツインテールの少女だった。

「初めてのお客様!失礼します!いらっしゃいませ『ヴィーナス』へ!当店は筋膜リリース施術と言って」


「もう説明が終わり、今回はお話だけ聞きたいということで今からお帰りになるところですよ」

「待って!この店で最初のお客様でしょっ!?このチャンスを逃せないのよ!」

「そんなことはお客様のご都合に関係ありません。お帰りになるとおっしゃられた以上、引き止めることは強引な営業をかけたと訴えられる可能性があります」

「あーん、せめて私にもエステティシャンらしい話をお客様とさせて~」

「あの……あなたは」

カメリアは困惑しながらも目の前のツインテール少女に話しかけた。

「彼女も私と同じくただの店員です。お気になさらず」

「クラウディアだよ。よろしくね!」

「えっと……カメリアと申します」

「はい、よろしくお願いします。それではご挨拶も終わりましたし、こちらのお嬢さんにも帰って頂いてよろしいですね」

フィルンが淡々と終わらせようとする。

「ダメだってば~。カメリア様だよね?せっかくだからうちでやってかない?」

「いえ、私は……」

断ろうとするが、クラウディアが両手をガッと掴んできた。

「絶対後悔させないから!私のことを信じて!!効果がないって感じたら無料にするから!」

「ちょ、ちょっと!クラウディア!お客様の意思を無視して勝手をしてはっ」

「フィルンもカメリア様も絶対後悔させないから!任せて!」

有無を言わさず、半ば強引に案内されて長い台がある個室に入る。後ろからフィルンもついてきているが、カメリアを逃さないというよりもクラウディアが暴走しないように見張っているようだった。

「カメリア様。まずは服も下着も全部脱いでこちらの施術服に着替えてください!。終わったくらいに来ますからね!」

「ではカメリア様、私も失礼します」

クラウディアから渡されたのは綿や絹とは違う、何の素材か分からない布で出来たブラとパンツだった。紙のような布のようなそれ。ヒモ部分も同じ布で出来ており、薄くて軽いのにスケ感はまったくない。

(これ、初めて見る布だわ。織目がまったくない。フェルトのように見えるけどそれよりもずっと薄いわ。人形の服だとチープかしら。柔らかいのに手触りは癖がある。加工がしやすそうだから風変わりなデザインの帽子なんかに使えそうだわ)

布をじっくりと見た後、言われたとおりに施術服に着替えをした。少しするとクラウディアが戻ってきた。

「施術台にうつ伏せになってください」

「はい」

言われた通りに椅子のようだと思った台にうつ伏せになると顔の部分は穴があって横を向かなくても鼻や口が塞がらずに呼吸ができた。
施術台の上には素材は分からないが透明な袋に包まれた、これも素材は分からないが板のような布のようなものが敷かれていた。その上に言われるまま横になると何故か暖かいことに驚いてクラウディアを見る。

「魔法のホッカホッカラップです!コレも最後に使いますから楽しみにしてくださいね!さ、おでこも台につけてくださいね」

にっこり笑うクラウディアの手が背中に当てられた。

「まずは背中からオイルを塗って押していきますよ~?説明されたと思いますが、筋膜が硬い人ほど痛いですからね。力加減は調節しますけど痛みが我慢できなかったり、違和感があったら教えてくださいね」

(え?説明されてないんですけど……?)



しかしもう横になってしまっており、そんな話は聞いていないし痛いなら嫌と言える性格ならすでに帰れている。

「はい」

諦めてただそう答えるだけだった。
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