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チャンスの扉を開いたら

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暗い気持ちは自分が書いた色鮮やかなデザイン画を見て自画自賛しているうちに薄まってくる。

(このままじゃダメだわ。学校にも行かなくては学業が遅れてしまいますし。そうだわ。気分転換に手芸屋さんへ行きましょう)

やがて湧き上がるやる気。それは残念ながらダイエットには向かわず、彼女の趣味の人形達の服作りに走って行った。
作った人形服は着せて楽しんだら、人形コレクター兼雑貨屋の人形好き仲間が買いとってくれるのでお小遣い稼ぎにはなっている。

移動は馬車が主流だが、最近は目新しい発明品、自転車という乗り物が一部の貴族の間で流行っていた。
この乗り物、前後についた二輪のタイヤだけで身体を支えるため不安定で乗るための練習が必要である。
特に女性は自転車の練習をするときに人前で転ぶことがあるこの乗り物に難色を示して人気がない。
カメリアの家に親戚のお下がりが一台あるが、カメリア以外に家族は誰も使わなかった。

(慣れてしまえば歩くよりもずっと楽な乗り物ですのに)

そう思いつつ彼女の相棒となったこの自転車を今日の買い物にも漕いで行く。

******

手芸店まで慣れた道を自転車で漕ぐと見慣れないのぼりをみつけてカメリアは足を止めた。
自転車から降りて、店の立て看板を見つめる。

(痩身エステマッサージ?私でも痩せれるのでしょうか)

白く清潔感がある外装。日がよく入りそうな窓はあったが、品のいい臙脂色のカーテンで室内は隠されていた。
カメリアは『ヴィーナス』と知らない単語が書かれた看板に魅せられ店の扉を開けた。
興味本位で店の中に入ると店内は薄暗く、店員らしきブルーシルバーと表現したくなる髪色のショートカットの女性がこちらに近寄ってきた。

「お客様、当店のご利用は初めてですか」

「えっ、あの……はい」

「初めてであればまずは体験コースをお勧めしておりますがいかがでしょうか」

「え、あの……その……痩身、エステ、マッサージが、何かから、お話をまずは……」

突然話しかけられて戸惑い下を向くカメリア。店員らしき女性に頑張って目を向ければ、美しい容姿をしている。
しかしカメリアは同性ながらも服の上からもわかる豊満な胸に目がいった。

「お客様、どうかなさいましたか」

「あっ、いえ。なんでもありません」

「では、こちらへどうぞ」

「あ、はい」

促されるまま入った奥にはカーテンで仕切られる数室の個室。全ての部屋のカーテンが開いていた。そこから見えるのは長い椅子のような全身が乗せれる台だった。

「ほんじチュ…失礼。本日、担当させていただく『フィルン』と申します。お客様は当店が初めてで痩身エステマッサージについてお聞きしたいということですね。当店についてご説明しますので、こちらに座ってください」

台のある部屋と違い、案内されたのはテーブルと椅子が置いてある部屋だった。テーブルに置いてある紙には見慣れない図や生き写したかのような女性の顔の絵などが書かれてあった。

「まずは説明をいたします前にお客様のお名前をよろしいでしょうか」

「カメリアと申します」

「カメリア様。当店の痩身エステマッサージは筋膜リリースと言われる施術方法取り入れ、全身の生命力を外から力を加えて動かすマッサージです」

「筋膜?」

(初めて聞く単語ですが、とても専門的な響きを感じますわ)

「体の表面には薄い皮がありますね。体の中にある筋肉にも皮がありコレを筋膜と言っております。これがよじれたりねじれているため筋肉の動きが悪くなり、姿勢などに悪い影響を与えて痩せにくい体になるのです。そこでこの筋膜を剥がし、本来の柔らかな筋膜に回復させて体のバランスを整えるのが目的となります」

「はぁ……」

「筋膜が柔らかくなると可動域も広がって体の筋肉も動きやすくなり体がスムーズに動きます。筋膜リリースをすることで体のバランスが整のうため姿勢が美しくなり、体のコリや不眠症に効果的である言われております。同時にリンパマッサージという全身の生命力を外から力を加えて正常に流れやすくします。血行の改善がされ肌の調子が良くなる。リフレッシュ効果やむくみ、たるみの解消など美容面の効果もございます」

「なるほど」

(よく分からないけど効果が高そうですし、良いものなら試してみたいわ)
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