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映画
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映画館に着くともう既に席は埋まっていた。
「どうしよう。座れないかも」
「そうだなぁ……。あ、ここ空いてる」
「え?」
空いていると言われた席を詩織が見るとそこはカップルシート。2人掛けのソファーが並んでいる。
「でもこれって恋人同士じゃないとダメなんでしょ?私たち、付き合っていないのに……」
詩織が戸惑っていると誠人が笑った。
「男女で座ってたら恋人同士に見えるから大丈夫だよ。それにほら、周りを見ろよ」
そう言われて詩織は周囲を見渡してみた。みんな楽しげにパンフレットを見たり、映画の上映を心待ちにしてスクリーンに注目している。
「たしかに。みんな、映画を楽しみにして来ているから他人に興味を持つ人なんていないよね」
二人はカップルシートに腰掛けた。
******
映画が始まる。最初はラブコメのような展開だったのだが、どんどん不穏な空気が流れてきた。
『この女は俺の女だ。誰にもやらん』
『お前みたいなクズには絶対に負けねぇ』
男と男が殴り合いを始める。
詩織は隣にいる誠人の顔を見た。彼は真剣に映画に見入っている。
『俺の女に手を出すな!』
『俺だって彼女が好きだ!好きなんだよぉ~』
―――
――――――
激しい殴り合いの末、決着がついて2人の男は涙を流して抱き合った。詩織は誠人の顔を見る。
「……何?」
「ううん、なんでもない」
詩織は慌てて視線を前に戻した。喧嘩に負けた男は女の元から去ろうとするのだが、女は彼を追いかけて仕事さえやめてしまう。
この映画は一人の女性を巡って男性と男性の親友が取り合うドロドロの恋愛映画で、初デートに見るものではなかった。
詩織は気まずくなって隣の誠人をチラリと見る。誠人は映画のことを考えているのか難しい顔をしている。
(映画の脚本とかしたいって言っていたし、男主人公の小説を書いているのに人気がでないって悩んでいたものね。スランプから抜け出る糸口になるといいなあ)
映画よりも誠人の事が気になって仕方がない詩織は彼の真剣な眼差しを目に焼き付けるように見つめていた。
「どうしよう。座れないかも」
「そうだなぁ……。あ、ここ空いてる」
「え?」
空いていると言われた席を詩織が見るとそこはカップルシート。2人掛けのソファーが並んでいる。
「でもこれって恋人同士じゃないとダメなんでしょ?私たち、付き合っていないのに……」
詩織が戸惑っていると誠人が笑った。
「男女で座ってたら恋人同士に見えるから大丈夫だよ。それにほら、周りを見ろよ」
そう言われて詩織は周囲を見渡してみた。みんな楽しげにパンフレットを見たり、映画の上映を心待ちにしてスクリーンに注目している。
「たしかに。みんな、映画を楽しみにして来ているから他人に興味を持つ人なんていないよね」
二人はカップルシートに腰掛けた。
******
映画が始まる。最初はラブコメのような展開だったのだが、どんどん不穏な空気が流れてきた。
『この女は俺の女だ。誰にもやらん』
『お前みたいなクズには絶対に負けねぇ』
男と男が殴り合いを始める。
詩織は隣にいる誠人の顔を見た。彼は真剣に映画に見入っている。
『俺の女に手を出すな!』
『俺だって彼女が好きだ!好きなんだよぉ~』
―――
――――――
激しい殴り合いの末、決着がついて2人の男は涙を流して抱き合った。詩織は誠人の顔を見る。
「……何?」
「ううん、なんでもない」
詩織は慌てて視線を前に戻した。喧嘩に負けた男は女の元から去ろうとするのだが、女は彼を追いかけて仕事さえやめてしまう。
この映画は一人の女性を巡って男性と男性の親友が取り合うドロドロの恋愛映画で、初デートに見るものではなかった。
詩織は気まずくなって隣の誠人をチラリと見る。誠人は映画のことを考えているのか難しい顔をしている。
(映画の脚本とかしたいって言っていたし、男主人公の小説を書いているのに人気がでないって悩んでいたものね。スランプから抜け出る糸口になるといいなあ)
映画よりも誠人の事が気になって仕方がない詩織は彼の真剣な眼差しを目に焼き付けるように見つめていた。
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