現代乙女ゲー世界に転生したら主人公のモブな社会人な姉でしたがゲームに出ない陰気な先生に溺愛されました。

からどり

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風邪ひきの話 2

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さらにミールはう~んと唸って目を閉じ、何か思いついたように私に目を向けた

「黒原って女の言う小説を読んでないからハッキリ言えねーけどさ、姉貴がどうこうしなくても大丈夫だと思うぞ。姉貴が副担長山と付き合ってる時点で小説の話とズレてるんだ。黒原の話が本当なら小説での副担長山は黒原って奴に片思いするんだろ?」
「そうよ。彼女、小説の中ではヒロインに対して龍一さんが好意を持っているって言ってたもの」

私は彼の言葉に頷いた。

「じゃあ副担は姉貴と婚約までしてるから合コンの時点で『こいつじゃない』って思ったんだろうな。だからずっと副担の前に現れなかった。でもやっぱり副担だったって考え直してクリスマスイブに邪魔しにきた。でも好意を持ってもらえなかったからヒーローに当てはまる男と小説通りの方法で会えないから直接言いにきたのか。で、姉貴に返り討ちにされる、っと」
「そうよ!私がビシッと怒って言ったのよ!そした黙って帰っていったわ」
「じゃあ、諦めたか、そうじゃなくても向こうに作戦が立つまでは大人しいんじゃないか?」
「……確かに言われてみるとそうだわ」

龍一さんを盗られる!あおいさんと彼のお兄さんの仲が引き裂かれる!って頭がいっぱいになっていたけどミールに言われて気がつく。だけどもしも…って不安と苛立ちが波のように心に押し寄せてきた。

「でも自信満々に龍一さんのことを出会いの土台とか踏み台って言ったのよ!今思い出してもほんっっとうに腹が立つわ!小説の世界がなんだっていうのよ!?」

怒りで頭がカーッと熱くなってくる。あの時の彼女の顔を思い出すと余計にイラついてきた。

「そこなんだけどよ。俺様、前世のことは詳しく知らないから何とも言えないが姉貴は今の人生をちゃんと生きてんのか?」
「はい?」

急に何を言っているのよ。ミールは。私の人生、ちゃんと生きているからこうして悩んでいると言ってもいいのに。

「だから、黒原が本当に転生者でこの世界を小説にした話のことを知っているとしてもよ。姉貴の話しも本当なら俺たちや姉貴はゲームの世界の住人ってことになる」
「そう、だと思ってたけど私が知るゲームのストーリーと全然違うわ」
「そうだよな。だって設定や登場人物がそっくりでも、ここの世界と同じ世界観だとしても、俺たちは『プレイヤー』や『作者』に操られていない。俺たちの気持ちや考えで選んできてる。なのに姉貴は『小説の原作通り』にしようとする黒原って女に影響を受けて怒って、黒原の頭の中にしかない小説の話が起きると怯えてるのにそれはちゃんと生きてるっていえるのか?」
「…………」

その言葉に黙り込んでしまった私を見てミールがさらに続ける。

「俺様の知ってる前世持ちの話だと『前世の記憶のせいで性格が変わって悪い運命に変わった奴」もいるんだ。前世の記憶を持った人間に限ったことじねーけど、前世とかスピリチュアルに影響され過ぎちまうのは危ねーぞ。妖精の俺様が言うことじゃねーけどな」
「……そっか。悪い方になる場合もあるよね。頭が冷えたよ。ありがとうミール」

私は少しだけ冷静になった。前世の記憶の影響で人生が変わる。ミールの言葉で前世の影響が必ずしも良い物でもないことに改めて気付かされたからだ。それにどれだけ小説やゲームの中のように振る舞ったって相手が同じ返事をしてくれるなんて保証は一つもない。

不意に私の電話が鳴った。龍一さんからだ。私は直ぐに電話をとった。

「もしもし。龍一さん?」
『あ、ども、トモヨさん。体調の方は大丈夫ですか」
「ええ。もうすっかり。熱も下がって明日からまた元気に仕事に行けますよ」

私がそう言うと安心してくれたようでため息が聞こえた。
『良かった。ミサキさんからは大丈夫と言われてはいたんですが、どうしても自分で確認したくて』
「いつもは風邪を引かないくらい元気なんですよ。風邪薬ものんでますから心配ないですよ」
『なにかあったら俺のことも頼ってください」

その言葉を聞いて私は覚悟を改める。絶対に黒原さんに龍一さんを盗られたくないって。

「ありがとうございます。龍一さんも何かあったときはいつでも相談してくださいね。それでは、失礼しますね」
『じゃあ、また』

通話終了のボタンを押してから私はスマートフォンの画面を見つめていた。

「昨日のことは話さないのか?」

「うん。親戚のとき以上に私の大事な人を守りたいってやる気が出たわ」

ただ肝心の作戦はなにも思いつかないのが残念だけど。

「ふーん。とりあえずは俺様にできることがあったら言ってくれよな」
「ありがとね」


そう言ってくれたことが嬉しくて私はミールの頭に手を伸ばして撫でてあげた。
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