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餅つき大会 1

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世間的には鏡開きも終わって、おめでたい気分が抜けた日曜日。うちの会社では毎年恒例のお汁粉を作ることになっていた。市販のお餅を使ったほうが楽なのだけど会社では餅つきから始まる。
すでに会社の隣にある社長の家で小豆から炊いたお汁粉が完成しており、もち米が蒸されて出番を待っている。社内の敷地にテントを並べ、長机と椅子も沢山並んでいた。
今年も杵と石臼がしっかり用意されている。社長が小豆の産地までこだわって作っているので美味しいと評判で、ご近所さんにも振る舞ううちに手伝いに来てくれる人が集まり地域貢献活動として会社の年間イベントの一つになっていた。

今年も皆勤賞といっていい私とミサキの参加に社長と奥さんも喜んでくれる。

「まさかトモヨちゃんの婚約者とミサキちゃんのお友達も来てくれるなんて光栄ねぇ!あんた!涙ぐんでないで準備してきなよ!」
「だってよお。こうして10年近く欠かさず来てくれるんだぞ。こんな義理堅い娘さん二人、残して逝った親のこと考えるとよお」
「もお、だからウチラで見守ってきたんでしょうが!」

龍一さんの表情が真剣なものに変わって二人に深く頭を下げた。

「これからは俺が守っていきますので安心してください」

「うおおお、婿殿ー!!ありがとうよ、ほんと、よろしく頼むな」

そう言って泣きながら龍一さんと固く握手をする社長。周りに囃されて照れてしまうのだけどやっぱり嬉しい。

「もお、あんた!ココで泣いてどうすんの。早く涙を拭いて!お汁粉を待ってるおチビ達もいるんだから早くしな!」

感動の空気を払う、奥さんによる社長のお尻への一撃、平手打ちはいい音がした。

そして私達はその音に思わず笑ってしまう。

「おっちゃんたち、相変わらずだなー」

コウ君もみらいちゃんと一緒に来てくれて、ミサキの姉としてちょっと複雑な私。だけど変わらず友だちとしてミサキと仲良くしてくれていて嬉しい。

「トモヨさん。なんかいつもこうなのか?」

龍一さんは笑いながらも私に尋ねてきた。私は苦笑いをしながら答える。

「ええ。いつも通りですよ。でもそれがうちの会社の名物でもあるんです。会社に苦手な人もいますけど良い人達が多いから私でもずっと働けてこれたんですよ」

そう言うと龍一さんは納得顔になった。仲良しな夫婦をみたから私は龍一さんに甘えるように腕にくっつく。それをみたミサキがニヤリと笑って私を肘でつついてきた。

「お姉ちゃん、ここでいちゃついてどうすんの。お汁粉を待ってる私達がいるんだから早くしな」

奥さんの口真似をしてくるミサキ。さすがにお尻は叩かないけどそのモノマネはよく似ていた。

********

それから参加者が集まってきて社旗をたてられた。社長の長い祝辞を奥さんが止めて短くまとめる恒例のコントが終わって餅つきが始まった。社長自ら杵を動かし、ある程度もち米を潰す。

「初めて餅つきに参加したんですが、最初からつくんじゃないんですね」
「ああすると粒が潰れて粘り気がでてお互いにひっついて、杵を振り上げて勢いよくもち米にぶつけても米粒が飛び散りにくくなるんですよ」

それを見て龍一さんが驚いているので私は昔教えてもらったことをそのまま説明をした。

「そろそろだな」
「あんた、やるよ」

そこからは社長が杵でつき、奥さんが絶妙なタイミングで餅を返したり、杵に水がつかないように餅の表面に水をつける。「ほいっ」「はい」という掛け声がリズムよく響く。仕事も私生活もずっと一緒、そんな夫婦のコンビネーションで最初の餅が作られていった。
家族に付き添われ餅つきが初めてというちびっ子達に混じって、ミールや龍一さんの目が輝いていた。
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