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クリスマスイブも大騒ぎ 3
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黒なんとかさんはおばさんと言われたことでワナワナと震えて怒りに満ち溢れた顔でミールを睨む。
「だいたいよ。こいつらの関係が上手くいくのってお互いの気持ちがあってこそじゃねえの?俺から見てもお似合いだよ。おばさんみたいに横からぶち壊して成り代わろうとしても無駄だって。さっさと消えな。偽の証拠もスマホにはもうねーんだ。そんなもん信じこませようとしても時間の無駄なんだよ!」
ビシッと黒なんとかさんを指差し、格好をつけるミール。
「なによ!私はおばさんじゃないわよ!子供だからって何を言っても良いと思わないで!薄っぺらい顔の女になんかに騙されてんじゃないわよ!」
いきなりこちらを指差すから私はムッとして言い返そうと前へ出る。だけど龍一さんがそれを許さなかった。腕を引かれたと思ったら龍一さんに庇われ、彼の広い背中しか見えなくなった。
「彼は態度も口が悪い奴ですが、根は正直者で優しいあいつの言うことを信じてます。あいつのことは差し引いても貴女の話しは僕には信じることができません」
「ほれ、こいつから俺様の方が信用されてるぜ。早く帰れよ。時間の無駄だぜ」
龍一さんの言葉を聞いて勝ち誇ったように胸を張るミール。
「なんでよっ?!私の方がその女より年は若いし、可愛くってスタイルだって良いんだから。あんんなブスより私の方が絶対良いに決まってるじゃないの。貴方達だってその子と付き合ってる手前、義理で断ってるだけでしょ?!本当は私のことを思いながら、私とのことを考えているんでしょ?」
どんどんと勢いをなくて震えはじめた声。どうして普段は会うことがない龍一さんに会った途端にそこまで執着するんだろう?龍一さんからなにかフェロモンでも出てるの?
「どんだけ自信満々なんだよ。てめえ鏡見たことあんのかよ?このナルシストババアが!」
「なんですって!?」
このまま弱まって立ち去ってくれればと思ったのに油が注がれて、とうとう始まってしまった口喧嘩。
「ちょっとミ、ミール?」
「なんだよ、姉貴」
良かった。ミールで合ってたわ。って今はそこじゃなかったわ。
「駄目よ。女性に対して乱暴に言っちゃ……」
「ババアはババアだろ。姉貴も好き放題言わせてんなよ。得になんねーぞ」
「ミール。失礼な発言はやめて。それに私にも流れ弾が致命的にずっと当たってるのよ」
「そうよ!ババアはこの女よっ!!私の方がずっと年下よ!価値があるのよ!」
私のことで(色んな意味で)争わないでと言いたくなったけど余計に火を吹き上げることになる。だから別の言葉で必死に止める。
後ろから誰かに抱きすくめられて身動きが取れなくなる。
「俺にとって価値があるのはトモヨさんだけだ。他はいらない」
何がスイッチを入れたのか、声だけでも分かるくらい静かに怒っている龍一さん。
抱きしめてくれる腕に私が手を添えると「本当に素敵な人だ」と首に顔をうずめてくるのでくすぐったかった。
「うわー。こりゃ重症だぜ……。ババアが可哀想になってくるな。もう決着着いたし帰ろうぜ」
「そんな……嘘よ……こんな地味な女達に何度も負けるなんて……話が違うわ」
小さくつぶやきながらフラフラと立ち去った黒なんとかさん。彼女の言葉の意味が怖いけど、でも今はそれよりも彼の大きな胸に甘えたくて仕方がなかった。
「なー、そろそろ存在感を薄くする結界の効果が切れるぞ。抱き合ったままでいいのか」
「ヤレヤレ。手間のかかる奴らだ」みたいな顔で立っている少年の姿のミール。
そういえばココはクリスマスイブの町で人通りが一番多い場所。
その言葉で私たちは慌てて身体を離す。周りを見渡すと喧嘩も起きていない。抱き合うカップルもいないかのように人々が歩いていた。
龍一さんは恥ずかしそうな顔で私を見ると「帰ろうか」と呟いて私の手を引いて歩き出す。
「うん、ミールも一緒にね」
そう言って笑うと龍一さんはなぜか口をへの字に曲げた。ミールは「ごちそうがっつり食わせろよ」と笑う。
今日は大切な人を家に招く日。家で待っていてくれるミサキと一緒にクリスマス・イブを家族で過ごす大切な日。
他の家族とは違う形だし、それぞれ黙っていた秘密を打ち明けることになるだろうけど、それでも私にとっては幸せで暖かい時間になるはずだから。
「だいたいよ。こいつらの関係が上手くいくのってお互いの気持ちがあってこそじゃねえの?俺から見てもお似合いだよ。おばさんみたいに横からぶち壊して成り代わろうとしても無駄だって。さっさと消えな。偽の証拠もスマホにはもうねーんだ。そんなもん信じこませようとしても時間の無駄なんだよ!」
ビシッと黒なんとかさんを指差し、格好をつけるミール。
「なによ!私はおばさんじゃないわよ!子供だからって何を言っても良いと思わないで!薄っぺらい顔の女になんかに騙されてんじゃないわよ!」
いきなりこちらを指差すから私はムッとして言い返そうと前へ出る。だけど龍一さんがそれを許さなかった。腕を引かれたと思ったら龍一さんに庇われ、彼の広い背中しか見えなくなった。
「彼は態度も口が悪い奴ですが、根は正直者で優しいあいつの言うことを信じてます。あいつのことは差し引いても貴女の話しは僕には信じることができません」
「ほれ、こいつから俺様の方が信用されてるぜ。早く帰れよ。時間の無駄だぜ」
龍一さんの言葉を聞いて勝ち誇ったように胸を張るミール。
「なんでよっ?!私の方がその女より年は若いし、可愛くってスタイルだって良いんだから。あんんなブスより私の方が絶対良いに決まってるじゃないの。貴方達だってその子と付き合ってる手前、義理で断ってるだけでしょ?!本当は私のことを思いながら、私とのことを考えているんでしょ?」
どんどんと勢いをなくて震えはじめた声。どうして普段は会うことがない龍一さんに会った途端にそこまで執着するんだろう?龍一さんからなにかフェロモンでも出てるの?
「どんだけ自信満々なんだよ。てめえ鏡見たことあんのかよ?このナルシストババアが!」
「なんですって!?」
このまま弱まって立ち去ってくれればと思ったのに油が注がれて、とうとう始まってしまった口喧嘩。
「ちょっとミ、ミール?」
「なんだよ、姉貴」
良かった。ミールで合ってたわ。って今はそこじゃなかったわ。
「駄目よ。女性に対して乱暴に言っちゃ……」
「ババアはババアだろ。姉貴も好き放題言わせてんなよ。得になんねーぞ」
「ミール。失礼な発言はやめて。それに私にも流れ弾が致命的にずっと当たってるのよ」
「そうよ!ババアはこの女よっ!!私の方がずっと年下よ!価値があるのよ!」
私のことで(色んな意味で)争わないでと言いたくなったけど余計に火を吹き上げることになる。だから別の言葉で必死に止める。
後ろから誰かに抱きすくめられて身動きが取れなくなる。
「俺にとって価値があるのはトモヨさんだけだ。他はいらない」
何がスイッチを入れたのか、声だけでも分かるくらい静かに怒っている龍一さん。
抱きしめてくれる腕に私が手を添えると「本当に素敵な人だ」と首に顔をうずめてくるのでくすぐったかった。
「うわー。こりゃ重症だぜ……。ババアが可哀想になってくるな。もう決着着いたし帰ろうぜ」
「そんな……嘘よ……こんな地味な女達に何度も負けるなんて……話が違うわ」
小さくつぶやきながらフラフラと立ち去った黒なんとかさん。彼女の言葉の意味が怖いけど、でも今はそれよりも彼の大きな胸に甘えたくて仕方がなかった。
「なー、そろそろ存在感を薄くする結界の効果が切れるぞ。抱き合ったままでいいのか」
「ヤレヤレ。手間のかかる奴らだ」みたいな顔で立っている少年の姿のミール。
そういえばココはクリスマスイブの町で人通りが一番多い場所。
その言葉で私たちは慌てて身体を離す。周りを見渡すと喧嘩も起きていない。抱き合うカップルもいないかのように人々が歩いていた。
龍一さんは恥ずかしそうな顔で私を見ると「帰ろうか」と呟いて私の手を引いて歩き出す。
「うん、ミールも一緒にね」
そう言って笑うと龍一さんはなぜか口をへの字に曲げた。ミールは「ごちそうがっつり食わせろよ」と笑う。
今日は大切な人を家に招く日。家で待っていてくれるミサキと一緒にクリスマス・イブを家族で過ごす大切な日。
他の家族とは違う形だし、それぞれ黙っていた秘密を打ち明けることになるだろうけど、それでも私にとっては幸せで暖かい時間になるはずだから。
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