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編み物は練習あるのみ
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仕事が終わり、家に帰ってミサキと食事を食べた後、いつもテレビを見ている私が編み物を始めたのでミサキが興味津々で見てくる。
「お姉ちゃん、編み物するの?先生へのクリスマスプレゼント?」
「そうよ。龍一さんから手編みのマフラーをリクエストされたから」
「へー、お姉ちゃんって編み物もできるんだー」
「……」
私は静かに首を振り、必死に毛糸と編み針の格闘をする。一段目の編み目ですでに黒歴史のマフラーを連想するデキなので、こんな調子ではクリスマスまでには完成しないんじゃないだろうかと思う。
なぜか編み針を動かすほどにキシキシ音もしてくるし、休憩で顔を上げると目に入ったミサキの表情も険しい。
「えっとね……その……編み棒がね、ちょっと……長い間、押入れに入ってたから湿気で曲がっちゃって」
私は嘘の言い訳をしたけど、ミサキの目は同情的に私を見ている。
「お姉ちゃん、マフラー、買った方が良いと思うよ」
「そっ、それは私も思うのよ。でも龍一さんって滅多にコレが欲しいって言わないし、クリスマスプレゼントのリクエストだし」
「お姉ちゃん、せめて100均の毛糸で練習してからにしたほうがいいよ」
「でも、時間がないからいっぱい作って綺麗に出来たマフラーをプレゼントしようと思って」
「うーん・・・そうだ!みらいちゃんに聞いたらいいよ。みらいちゃんもコウに手編みのマフラープレゼントするって言ってたから!」
みらいちゃんと言えば丸尾さんのところの。よくミサキとコウ君といるところを見るし、この前もコウ君がみらいちゃんのバイトを手伝っていたけど。
まさか、まさか!?
「ミサキ、もしかしてコウ君とみらいさんってお付き合いしてるの?」
「あ、お姉ちゃん知らなかったの。そうなんだよ。でもね、お父さんとお母さんにもまだ秘密だって。私とみらいちゃんのお兄ちゃんとお兄ちゃんの奥さんとの秘密」
ミサキが人差し指を口に当ててウインクしたのは可愛いけど衝撃的で、ミサキもあっけらかんと言うものだから余計びっくりしてしまった。
ゲームではルートに入ればちょっとくらい選択肢をミスしても恋愛エンドに行けるくらい幼なじみ補正が強くライバルもいない。今のミサキがコウ君へあんまり恋愛感情的なものがないのは感じていたものの、この世界でもミサキとコウ君が付き合うものとばかり思っていた。
「おねえちゃーん。未来ちゃんにメッセしたら編み物のやり方教えてあげるから一緒にがんばりましょう!だって」
私の動揺を知らず、ニコニコと笑う妹に複雑な気持ちで微笑み返したのだった。
******
私の仕事も休みでミサキたちも高校が休みの日。みらいさんに初心者向けのかぎ針編みを教えてもらい、なんとか形になっていた。
午後3時になると用意していたケーキと紅茶を出して三人で休憩する。
「みらいさんに教えてもらったおかげで編みかけだけど曲がらない絨毯から曲がる絨毯くらいにはなったわ」
「お姉さんのは編み目が詰まりすぎなんですよ。牛乳パックで作れる編み機の方が編み目も均一で簡単ですよ。どうしても編み針で編むのにこだわるなら極太や超極太の毛糸で編む方が早くできますから練習も本番も慣れないうちはそっちがいいですよ」
「毛糸の極太でこれからは編んで練習するわね。うちに来てくれて教えてくれてありがとう。それにとめ方も教えてくれたからマフラーがほつれずに完成させれそうよ」
「良かったね。お姉ちゃん。クリスマスには間に合うね」
練習二号は練習のため長さはとても短く、縫い止め方の方法を覚えるために作ったものとして一応の完成をした。三人でマフラーのことや好きなアイドルのことなど話をしているうちにあっという間に時間が過ぎていった。
「今日は楽しかったです。お姉さんの健闘を祈ります。ケーキとお茶、ありがとうございます。私、今日はこの辺で失礼しますね。ミサキちゃん、また来るから」
「うん、また来てね」
「ミライさん、今日はありがとう。ぜひ、またきてね。」
キビキビとしたみらいちゃんが帰ると部屋が静寂に包まれて、またミサキと一緒に黙々とマフラーを編み続けた。
「お姉ちゃん、編み物するの?先生へのクリスマスプレゼント?」
「そうよ。龍一さんから手編みのマフラーをリクエストされたから」
「へー、お姉ちゃんって編み物もできるんだー」
「……」
私は静かに首を振り、必死に毛糸と編み針の格闘をする。一段目の編み目ですでに黒歴史のマフラーを連想するデキなので、こんな調子ではクリスマスまでには完成しないんじゃないだろうかと思う。
なぜか編み針を動かすほどにキシキシ音もしてくるし、休憩で顔を上げると目に入ったミサキの表情も険しい。
「えっとね……その……編み棒がね、ちょっと……長い間、押入れに入ってたから湿気で曲がっちゃって」
私は嘘の言い訳をしたけど、ミサキの目は同情的に私を見ている。
「お姉ちゃん、マフラー、買った方が良いと思うよ」
「そっ、それは私も思うのよ。でも龍一さんって滅多にコレが欲しいって言わないし、クリスマスプレゼントのリクエストだし」
「お姉ちゃん、せめて100均の毛糸で練習してからにしたほうがいいよ」
「でも、時間がないからいっぱい作って綺麗に出来たマフラーをプレゼントしようと思って」
「うーん・・・そうだ!みらいちゃんに聞いたらいいよ。みらいちゃんもコウに手編みのマフラープレゼントするって言ってたから!」
みらいちゃんと言えば丸尾さんのところの。よくミサキとコウ君といるところを見るし、この前もコウ君がみらいちゃんのバイトを手伝っていたけど。
まさか、まさか!?
「ミサキ、もしかしてコウ君とみらいさんってお付き合いしてるの?」
「あ、お姉ちゃん知らなかったの。そうなんだよ。でもね、お父さんとお母さんにもまだ秘密だって。私とみらいちゃんのお兄ちゃんとお兄ちゃんの奥さんとの秘密」
ミサキが人差し指を口に当ててウインクしたのは可愛いけど衝撃的で、ミサキもあっけらかんと言うものだから余計びっくりしてしまった。
ゲームではルートに入ればちょっとくらい選択肢をミスしても恋愛エンドに行けるくらい幼なじみ補正が強くライバルもいない。今のミサキがコウ君へあんまり恋愛感情的なものがないのは感じていたものの、この世界でもミサキとコウ君が付き合うものとばかり思っていた。
「おねえちゃーん。未来ちゃんにメッセしたら編み物のやり方教えてあげるから一緒にがんばりましょう!だって」
私の動揺を知らず、ニコニコと笑う妹に複雑な気持ちで微笑み返したのだった。
******
私の仕事も休みでミサキたちも高校が休みの日。みらいさんに初心者向けのかぎ針編みを教えてもらい、なんとか形になっていた。
午後3時になると用意していたケーキと紅茶を出して三人で休憩する。
「みらいさんに教えてもらったおかげで編みかけだけど曲がらない絨毯から曲がる絨毯くらいにはなったわ」
「お姉さんのは編み目が詰まりすぎなんですよ。牛乳パックで作れる編み機の方が編み目も均一で簡単ですよ。どうしても編み針で編むのにこだわるなら極太や超極太の毛糸で編む方が早くできますから練習も本番も慣れないうちはそっちがいいですよ」
「毛糸の極太でこれからは編んで練習するわね。うちに来てくれて教えてくれてありがとう。それにとめ方も教えてくれたからマフラーがほつれずに完成させれそうよ」
「良かったね。お姉ちゃん。クリスマスには間に合うね」
練習二号は練習のため長さはとても短く、縫い止め方の方法を覚えるために作ったものとして一応の完成をした。三人でマフラーのことや好きなアイドルのことなど話をしているうちにあっという間に時間が過ぎていった。
「今日は楽しかったです。お姉さんの健闘を祈ります。ケーキとお茶、ありがとうございます。私、今日はこの辺で失礼しますね。ミサキちゃん、また来るから」
「うん、また来てね」
「ミライさん、今日はありがとう。ぜひ、またきてね。」
キビキビとしたみらいちゃんが帰ると部屋が静寂に包まれて、またミサキと一緒に黙々とマフラーを編み続けた。
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