現代乙女ゲー世界に転生したら主人公のモブな社会人な姉でしたがゲームに出ない陰気な先生に溺愛されました。

からどり

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合コンを開いてみた。

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合コン当日。
場所はモモさんたちがいつも利用しているという駅にあるチェーン居酒屋の2階の大きい個室を予約しておいた。
私と龍一さんがお付き合いしているから幹事として参加しているだけで異性との出会いは求めていないことは参加している人達にあらかじめ伝えてある。
あくまで龍一さんの同僚の人のための合コンなので龍一さんがモテたりしないようにするため私が考えた策だった。
モモちゃんが呼んでくれた友だちや私達の会社の支社の女性達が乗り気で参加を希望し予想以上に増え、男性の人数合わせで支社の男性も呼ばれており、なぜか八津野目までいる。
彼も独身ですけども私のことすっごく嫌っているはず。なのに何で私が幹事をしている合コンに来たのか謎すぎるわ。

「ごめんなさい、遅れちゃいました」

待ち合わせ時刻に全員が揃っていて始めようかと席に座っていたのだけど見知らぬ女性が挨拶しながら入ってきた。

「あれれ。黒原さん?どうしたんですか?今日、忙しいって……」

口調はおだやかだけどモモちゃんが驚いて聞いている。支社の女性達の表情がツンと張り詰める。

「友井君達に『黒原さんもおいでよ~』って誘われたんですぅ。お邪魔でしたかぁ?」

支社の女性達の視線が支社の男性たちに注がれるけど彼らは気づいていないのか黒原さんという女の子を見てデレっとした顔をしている。

「人数が多いほうが楽しいですからありですよね!ね、長山先生!」
「あー、えー、そう、ですね。多分。皆さんもそう言うならいいのかと……合コンは二回目なので分かりませんが」

予定していなかった参加者が増えて龍一さんも困っている。せっかく来たのだからと皆は否定することなく彼女のために席を開けた。

私は支社の男性に挟まれて座る黒原という子を見つめる。なんていうか可愛さにすきがない。
彼女は肩までの髪は染めてはいないのだろう天然っぽい茶色の髪をゆるくカールさせてピンクのカチューシャを付けていた。化粧はナチュラルで顔立ちも可愛い系。服もワンピースで露出が多い服装じゃないのに胸の膨らみが強調されて見えた。
私は思わず隣の龍一さんのスーツの裾をぎゅうっと握った。

「はい、それでは皆さん揃ったようなので飲みましょうか。カンパーイ」

それを合図と思ったみたいで龍一さんが烏龍茶が入ったジョッキを持ち上げるので皆もそれに合わせて乾杯をする。
合コンはたまに女性陣が龍一さんにアプローチしようとするのでそれとなく妨害しつつ、モモちゃんのサポートを受けながら司会をしたり空気を和ますことに専念した。

「飲み物、追加頼みましょうか?店員さん呼びますけど他に一緒に注文するものありますか」
「じゃあこっちはレモンサワー追加」
「こっち生中2本と唐揚げ!」
「私、チーズ餅、お願いします」

私のかけた声で注文したいものを答えてもらい、忘れないようメモして店員さんを呼んで注文する。
料理や飲み物が届いたら量が多いし、店員さんに混じって配る。

「すいません。ありがとうございます」
「こちらこそありがとうございます。いっぱい頼んでますし手伝います」

わざわざ二階まで上がってもらってるからとついつい手伝いの手を出してしまう私。だって店員の女の子がミサキに似てたのもあるし。

「はい、ビールです」
「店員でもないのに給仕なんて恥ずかしげもなくよくやるもんだ」

注文した人が違うから油断してたわ。八津野目にビール出してしまったからといって笑った顔を引っ込める訳にもいかない。

「社長の奥様仕込みなんですよ」

私は営業スマイルで答えるけど彼の表情が変わることはない。まあお互いに嫌いだし当然なんだけど。
ササッと場所を移動して適当に話に混ざっていく私。その度に八津野目の視線を感じたけど気づかないふりをした。
他の人と喋る私を目で追う必要は八津野目には無いでしょうに。そんな風にイラつきながら仕事の愚痴や恋愛の話を聞いていた私だけど、行く先々で話しかけられて龍一さんのところに戻るタイミングがつかめなくて一番遠い場所まで来てしまった。
龍一さんの方を見ていると黒原さんが彼の手に触れたことに気がついた

(あっ!)

声を上げそうになるのを抑え込む。龍一さんの手がすぐに黒原さんの手から逃げるように引っ込んだのを見て安心したけど、あの子が龍一さんに対して好意を抱いているのは間違いないと思う。だって黒原さんの目が獲物を見つけた肉食獣みたいになっていた。
このままでは龍一さんが危ないと私は焦りだす。彼は私だけって言ってくれたし、次の休みは一緒に指輪を受け取りに行こうって約束してるけど、黒原さんの様子では可愛いだけじゃない百戦錬磨の猛者の空気が漂っていた。

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