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増えた悩み
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龍一さんとミサキと一緒に朝を過ごせたし、彼に初めてお弁当を渡せてウキウキした気分だったのが、今日の朝礼で社長がゴホンと咳払いをしたことで嫌な予感に変わった。
「えー、一部社員には話してたが、那須が年内で定年退職することになりました。来年に向けた後任の人材育成のため支社から八津野目さんに移動してもらいます。八津野目さんは支社側の引き継ぎもあるのでしばらくこっちと支社を行き来してもらうことになる。えー、二人に仕事で行き届かない部分が出たら皆で仕事のフォローを頼む」
後輩のモモさんが眉間にシワを寄せて私の顔をみた。私も彼女と同じ顔をしてモモさんを見てしまった。
口には出さないけど私が「絶対に嫌だ」と思っているのを彼女も知っているからだ。だって那須さんの退職が決まってからこの秋というタイミングでの異動って、那須さんの穴埋め的なものじゃなくて八津野目の本社勤務確定じゃないの。
それって私にとって今までのように楽しかったランチタイムが八津野目の俺様タイムでなくなるなんてそんなの最悪すぎる! 仕事内容が違うから関わらなくていいのに向こうが突っかかってくるから私も腹を立ててしまうのよね。
「先輩!大丈夫ですよ、那須さんなら仕事ビッチリ教えてくれるから近寄る時間なんてないですって!」
朝礼が終わるとモモさんが私の肩を持って励ましてくれる。そう那須さんならビシッと仕事を教えてくれるから私に構う暇はないでしょう。けど那須さんがいなくなった時が怖いわ。
「そうですよね。那須さんに性格も仕事も鍛え直されて生まれ変わって支社に戻ってほしいですね」
「吉永先輩、本音がダダ漏れになってます」
「えっ?」
「あはは。まあ、先輩たちの様子を見てたらそう思うのも仕方ないですけどね」
那須さんには私も入社当時からお世話になったから第二の人生を幸せに暮らしてほしいけどできることなら嘱託職員で残ってもらいたいです。だって八津野目が来るなら厳しいけど筋の通った那須さんの方が断然いいもの。
でも現実は残酷だからきっと八津野目は「那須先輩が居なくなった穴は僕が埋めて山を作ってみせるよ」とかいって無理矢理入ってくるんだろうな。
そうしたら私の仕事からプライベートまで引っ掻き回されそう。その時、私はどうすればいいの? もういっそミサキが後押ししてくれたのだから結婚を早くしてしまっても良いかもしれない。でも私は龍一さんが私達を想って待つと言った決意を無駄にして逃げるようで申し訳なく感じて、すぐに答えが出せずにいた。
(あ~、なんで移動なんてあるのよ~)
心の中で頭を抱えながらパソコンのキーボードを叩くのだった。
「えー、一部社員には話してたが、那須が年内で定年退職することになりました。来年に向けた後任の人材育成のため支社から八津野目さんに移動してもらいます。八津野目さんは支社側の引き継ぎもあるのでしばらくこっちと支社を行き来してもらうことになる。えー、二人に仕事で行き届かない部分が出たら皆で仕事のフォローを頼む」
後輩のモモさんが眉間にシワを寄せて私の顔をみた。私も彼女と同じ顔をしてモモさんを見てしまった。
口には出さないけど私が「絶対に嫌だ」と思っているのを彼女も知っているからだ。だって那須さんの退職が決まってからこの秋というタイミングでの異動って、那須さんの穴埋め的なものじゃなくて八津野目の本社勤務確定じゃないの。
それって私にとって今までのように楽しかったランチタイムが八津野目の俺様タイムでなくなるなんてそんなの最悪すぎる! 仕事内容が違うから関わらなくていいのに向こうが突っかかってくるから私も腹を立ててしまうのよね。
「先輩!大丈夫ですよ、那須さんなら仕事ビッチリ教えてくれるから近寄る時間なんてないですって!」
朝礼が終わるとモモさんが私の肩を持って励ましてくれる。そう那須さんならビシッと仕事を教えてくれるから私に構う暇はないでしょう。けど那須さんがいなくなった時が怖いわ。
「そうですよね。那須さんに性格も仕事も鍛え直されて生まれ変わって支社に戻ってほしいですね」
「吉永先輩、本音がダダ漏れになってます」
「えっ?」
「あはは。まあ、先輩たちの様子を見てたらそう思うのも仕方ないですけどね」
那須さんには私も入社当時からお世話になったから第二の人生を幸せに暮らしてほしいけどできることなら嘱託職員で残ってもらいたいです。だって八津野目が来るなら厳しいけど筋の通った那須さんの方が断然いいもの。
でも現実は残酷だからきっと八津野目は「那須先輩が居なくなった穴は僕が埋めて山を作ってみせるよ」とかいって無理矢理入ってくるんだろうな。
そうしたら私の仕事からプライベートまで引っ掻き回されそう。その時、私はどうすればいいの? もういっそミサキが後押ししてくれたのだから結婚を早くしてしまっても良いかもしれない。でも私は龍一さんが私達を想って待つと言った決意を無駄にして逃げるようで申し訳なく感じて、すぐに答えが出せずにいた。
(あ~、なんで移動なんてあるのよ~)
心の中で頭を抱えながらパソコンのキーボードを叩くのだった。
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