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突然の訪問 後編
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あおいさんのお迎えがくるまでに間がもたなくなってしまった。
「ミサキちゃん、喉乾いてきたでしょ。お茶、入れてくるわね。お二人のお茶のおかわりも用意してきますから」
そう言いながらテレビをつけて、私は台所でお茶のおかわりとクッキーやチョコなどをお皿に盛り付けて用意した。
戻ってくるとテレビではバラエティ番組が流れていたけど笑える気分でもなかった。
「話は変わるのだけどトモヨさん達は二人暮らしなの?ご両親はお仕事かしら。ご挨拶もせずに私ったら自分の話ばかりで失礼してしまったわ」
龍一さんが目を見開く。私達の親のことは学校から伝わっている彼が動揺するのはわかるし、何も知らないあおいさんがこの質問をするのは仕方ない。
「両親は10年以上前に事故で亡くなって、今は私とミサキの二人暮らしなんです」
「ごめんなさいっ!私、想像力が足りなくて……」
「いいんですよ。いずれ親戚になるんですからお付き合いしていくうちにどこかで話す必要もありまし」
「育ててくれたおばあちゃんも亡くなってるし、私とお姉ちゃんの親戚って人はいるみたいだけど会ったことがないです。だから新しい親戚になる人が個性的で楽しそうだから良かったね。お姉ちゃん」
個性的な部分にいろいろと考えるものが多いけど仲良くできればいいなって私も思ってミサキの言葉に頷いた。
*******
それからしばらくしてチャイムが鳴った。私はインターホンに出ると「お世話になっております。長山ですが吉永さんのご自宅ですか」と秀一さんの声が聞こえた。
「龍一さん、あおいさん、お兄さんが到着しましたよ」
そう私が言うと解放されたかのように龍一さんがため息をついた。
「そう、ありがとう。突然来てお土産もなく失礼してしまったわね。次は必ず素敵な物を用意するから」
あおいさんの言葉に私もミサキも「またいらっしゃってください」と笑顔で答えたのだった。
だけどあおいさんは「次はもっと可愛いものを探すわ」なんて言っていたけど「次回は食べ物のお土産が嬉しいな」とあの木彫りを思い出すたびに思わずにはいられなかった。
四人で一緒にエントランスへ降りるとブランドに疎い私も分かる高級車がマンション前に止まっていた。
「見た目までお兄さんの方が先生より洗練されてる。兄弟でここまで差が」
運転席でこちらを見ている秀一さんの姿を見てボソリと呟いたミサキの言葉にショックそうな龍一さん。私とミサキも外見に超えられない壁というか差があるのだけど、今はそんなことを言う場面でもないので黙ってあおいさんの背中を軽く押した。
「じゃあ、今日は本当に色々とありがとう。トモヨさんに会えてよかったわ」
そう言う彼女の顔はとても幸せそうに見えた。
「秀一さんと仲直りしてくださいね。夫婦喧嘩は犬も食わないって言いますし」
私が笑いながらそういうので、あおいさんは恥ずかしげな表情をして「そうね」と言ってくれた。そして私達に手を振り助手席に乗り込んだ。
そして運転席に乗っていた秀一さんともあおいさんは目が合ってお互い小さく微笑みあったのだった。
龍一さんが運転席に近寄って何か話しはじめた。きっと別れを惜しんでいるんだろうと思った私はミサキと少し離れた所で待っていることにした。
話が終わったみたいなので、ミサキと一緒にお別れの挨拶のために車に歩み寄った。
「吉永さん。あおいが突然、お邪魔してしまいすいません。私も急いで来たもので手土産もなくて。今度必ずお詫びさせていただきます。今日はまだ仕事が残っているので車内からの挨拶ですいません。今度はあおいを含めてゆっくり話ができるといいですね」
「お忙しいのにお気遣いありがとうございます。お二人の元気な顔が見れれば十分ですから。今日はもう遅いですからお気をつけて帰ってくださいね」
私は頭を下げた。ミサキも一緒に頭をさげてお見送りをする。
車に乗ったあおいさんも私達に手を振ると車は発進した。走り去るまで見送った私達は手を振り返しながらその車を眺めていた。
「ミサキちゃん、喉乾いてきたでしょ。お茶、入れてくるわね。お二人のお茶のおかわりも用意してきますから」
そう言いながらテレビをつけて、私は台所でお茶のおかわりとクッキーやチョコなどをお皿に盛り付けて用意した。
戻ってくるとテレビではバラエティ番組が流れていたけど笑える気分でもなかった。
「話は変わるのだけどトモヨさん達は二人暮らしなの?ご両親はお仕事かしら。ご挨拶もせずに私ったら自分の話ばかりで失礼してしまったわ」
龍一さんが目を見開く。私達の親のことは学校から伝わっている彼が動揺するのはわかるし、何も知らないあおいさんがこの質問をするのは仕方ない。
「両親は10年以上前に事故で亡くなって、今は私とミサキの二人暮らしなんです」
「ごめんなさいっ!私、想像力が足りなくて……」
「いいんですよ。いずれ親戚になるんですからお付き合いしていくうちにどこかで話す必要もありまし」
「育ててくれたおばあちゃんも亡くなってるし、私とお姉ちゃんの親戚って人はいるみたいだけど会ったことがないです。だから新しい親戚になる人が個性的で楽しそうだから良かったね。お姉ちゃん」
個性的な部分にいろいろと考えるものが多いけど仲良くできればいいなって私も思ってミサキの言葉に頷いた。
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それからしばらくしてチャイムが鳴った。私はインターホンに出ると「お世話になっております。長山ですが吉永さんのご自宅ですか」と秀一さんの声が聞こえた。
「龍一さん、あおいさん、お兄さんが到着しましたよ」
そう私が言うと解放されたかのように龍一さんがため息をついた。
「そう、ありがとう。突然来てお土産もなく失礼してしまったわね。次は必ず素敵な物を用意するから」
あおいさんの言葉に私もミサキも「またいらっしゃってください」と笑顔で答えたのだった。
だけどあおいさんは「次はもっと可愛いものを探すわ」なんて言っていたけど「次回は食べ物のお土産が嬉しいな」とあの木彫りを思い出すたびに思わずにはいられなかった。
四人で一緒にエントランスへ降りるとブランドに疎い私も分かる高級車がマンション前に止まっていた。
「見た目までお兄さんの方が先生より洗練されてる。兄弟でここまで差が」
運転席でこちらを見ている秀一さんの姿を見てボソリと呟いたミサキの言葉にショックそうな龍一さん。私とミサキも外見に超えられない壁というか差があるのだけど、今はそんなことを言う場面でもないので黙ってあおいさんの背中を軽く押した。
「じゃあ、今日は本当に色々とありがとう。トモヨさんに会えてよかったわ」
そう言う彼女の顔はとても幸せそうに見えた。
「秀一さんと仲直りしてくださいね。夫婦喧嘩は犬も食わないって言いますし」
私が笑いながらそういうので、あおいさんは恥ずかしげな表情をして「そうね」と言ってくれた。そして私達に手を振り助手席に乗り込んだ。
そして運転席に乗っていた秀一さんともあおいさんは目が合ってお互い小さく微笑みあったのだった。
龍一さんが運転席に近寄って何か話しはじめた。きっと別れを惜しんでいるんだろうと思った私はミサキと少し離れた所で待っていることにした。
話が終わったみたいなので、ミサキと一緒にお別れの挨拶のために車に歩み寄った。
「吉永さん。あおいが突然、お邪魔してしまいすいません。私も急いで来たもので手土産もなくて。今度必ずお詫びさせていただきます。今日はまだ仕事が残っているので車内からの挨拶ですいません。今度はあおいを含めてゆっくり話ができるといいですね」
「お忙しいのにお気遣いありがとうございます。お二人の元気な顔が見れれば十分ですから。今日はもう遅いですからお気をつけて帰ってくださいね」
私は頭を下げた。ミサキも一緒に頭をさげてお見送りをする。
車に乗ったあおいさんも私達に手を振ると車は発進した。走り去るまで見送った私達は手を振り返しながらその車を眺めていた。
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