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突然の訪問 中編
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とりあえずあおいさんへフォローを入れてみたものの自信がない。ミサキは黙ったまま『大人の話は分かりません』と言わんばかりに目を閉じている。
たぶん、ミサキも「これはない」と思ってるんでしょうけど余計な事を言わない子で良かったわ。
「じゃあ、これで解決ですね!」
「はい」
私がそういうとあおいさんは微笑んで返事をして、また悲しげな表情になり俯いた。そしてポツリと言った。
「……今日ね、本当は、家を出るつもりでここに来たの。だから、秀一さんには何も言ってないから。心配かけてるかしら?」
龍一さんは何だかとても複雑そうな顔をして天井を見上げた。私は龍一さんの代わりにあおいさんに聞いてみた。
「それって離婚を考えていたってことですか」
あおいさんは無言でこくりとうなずき、「でも」と言いかけたけど口を閉じた。私も何と言っていいかわからなかった。だってアフリカっぽい木彫りの人形でここまで深刻な話になるなんて誰が想像できるだろう。
「もう一度、二人でゆっくり話あうのが一番だと思いますよ。好きな人からプレゼントを貰うのって嬉しいですし、何も言わずに出て行かれるのは辛いですよ。早く帰って仲直りしましょうよ」
私の言葉にあおいさんは納得したのか弱々しくだけど笑ってくれて安心する。
「そうね。そうした方がいいわよね」
そう言って彼女は立ち上がった。そのままリビングから出て行こうとする。
「あっ、あおいさん、トイレなら廊下を出て右のドアです」
「いえ、電車があるうちに帰ろうかと」
帰るつもりみたいだけどカバンも木彫りの人形も持って帰るのを忘れているので声をかける。
「あおいさん、カバン!あとお人形忘れてますよ」
「これは、お礼としてトモヨさんに」
ふわりと笑うその姿は天女かと思わせる程、美しく感じた。これが「美しすぎる人妻」なんだわ、と思ってしまう。だけども、今はそれよりも……
「気持ちだけで結構ですのであおいさんの家で飾ってあげてください」
私は遠回しに断った。義理のお姉さんのプレゼントとはいえ置場所に困るし、夜中にうっかりコレと目が合ったら怖そうだもの。
「そう……なのね。二体あるほうが夫婦おそろいっぽいものね」
あ、そういうことじゃないんですけどね。一体持ってるからもう一体あったら夫婦でおそろいだなとか思わないです。
あおいさんは納得して、紙袋の中に人形を戻した。
「あおいさん、実はあおいさんと会う前から兄さんからメッセージでこっちにいるなら迎えに行くと。だから兄さんが来るまで待っていてください」
龍一さんの言葉にあおいさんが躊躇いを見せた。
「あの人が?いつも忙しいのに」
「兄さんは気に入ったものや好きな人は大切にする人なんで、多分、いや、絶対にこう、すごく、なんとかしたんだと思います」
龍一さんから恐れみたいなものが滲んでいるけど大丈夫かしら。
「秀一さん」
あおいさんが夫を思って微笑むのだけど龍一さんの表情は戻らない。
「先生、大丈夫?」
「ああ、多分、あおいさんを兄に引き渡せたら大丈夫だ」
犯人の身柄引き渡しみたいな緊張感って言ってもおかしくない雰囲気に私もミサキも不安を感じた。
たぶん、ミサキも「これはない」と思ってるんでしょうけど余計な事を言わない子で良かったわ。
「じゃあ、これで解決ですね!」
「はい」
私がそういうとあおいさんは微笑んで返事をして、また悲しげな表情になり俯いた。そしてポツリと言った。
「……今日ね、本当は、家を出るつもりでここに来たの。だから、秀一さんには何も言ってないから。心配かけてるかしら?」
龍一さんは何だかとても複雑そうな顔をして天井を見上げた。私は龍一さんの代わりにあおいさんに聞いてみた。
「それって離婚を考えていたってことですか」
あおいさんは無言でこくりとうなずき、「でも」と言いかけたけど口を閉じた。私も何と言っていいかわからなかった。だってアフリカっぽい木彫りの人形でここまで深刻な話になるなんて誰が想像できるだろう。
「もう一度、二人でゆっくり話あうのが一番だと思いますよ。好きな人からプレゼントを貰うのって嬉しいですし、何も言わずに出て行かれるのは辛いですよ。早く帰って仲直りしましょうよ」
私の言葉にあおいさんは納得したのか弱々しくだけど笑ってくれて安心する。
「そうね。そうした方がいいわよね」
そう言って彼女は立ち上がった。そのままリビングから出て行こうとする。
「あっ、あおいさん、トイレなら廊下を出て右のドアです」
「いえ、電車があるうちに帰ろうかと」
帰るつもりみたいだけどカバンも木彫りの人形も持って帰るのを忘れているので声をかける。
「あおいさん、カバン!あとお人形忘れてますよ」
「これは、お礼としてトモヨさんに」
ふわりと笑うその姿は天女かと思わせる程、美しく感じた。これが「美しすぎる人妻」なんだわ、と思ってしまう。だけども、今はそれよりも……
「気持ちだけで結構ですのであおいさんの家で飾ってあげてください」
私は遠回しに断った。義理のお姉さんのプレゼントとはいえ置場所に困るし、夜中にうっかりコレと目が合ったら怖そうだもの。
「そう……なのね。二体あるほうが夫婦おそろいっぽいものね」
あ、そういうことじゃないんですけどね。一体持ってるからもう一体あったら夫婦でおそろいだなとか思わないです。
あおいさんは納得して、紙袋の中に人形を戻した。
「あおいさん、実はあおいさんと会う前から兄さんからメッセージでこっちにいるなら迎えに行くと。だから兄さんが来るまで待っていてください」
龍一さんの言葉にあおいさんが躊躇いを見せた。
「あの人が?いつも忙しいのに」
「兄さんは気に入ったものや好きな人は大切にする人なんで、多分、いや、絶対にこう、すごく、なんとかしたんだと思います」
龍一さんから恐れみたいなものが滲んでいるけど大丈夫かしら。
「秀一さん」
あおいさんが夫を思って微笑むのだけど龍一さんの表情は戻らない。
「先生、大丈夫?」
「ああ、多分、あおいさんを兄に引き渡せたら大丈夫だ」
犯人の身柄引き渡しみたいな緊張感って言ってもおかしくない雰囲気に私もミサキも不安を感じた。
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