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一件が落ち着いたので :長山龍一視点:
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割られた窓ガラスもネットで探した最短で対応できる店に頼み、俺の担当授業のなかった翌日の午前中に交換してもらい事なきを得た。
学校に行くと俺やトモヨさんの名前は伏せられていたが、すでに朝のニュースとして話題になっていた。
犯人の男はトモヨさんたちの近所で噂になっていた盗撮犯でもあり、本当に捕まって良かったと俺は思った。
男は道で気に入った女性を車の中から隠し撮りをしていた。不在でも女性が住んでいそうな部屋なら写真で盗撮し、さらには不法侵入して泥棒をする変態だった。
模様替えした俺の部屋を女性だと思って別の日に撮影し、たまたま日曜日にマンションへトモヨさんが入るのを見て『おとなしそうなので友達になれると思った』という理由で窓を割って侵入したという。たまたま俺の部屋で、妖精小僧の助けがあったからトモヨさんを助けることができたが、少しでも遅れていたらと思うと想像するだけで恐ろしい。
男につけられた顔の傷は浅いものですぐに治ると聞いて安心しているが、「傷跡が残ったりしたらと考えると申し訳なくて仕方がないんです」とトモヨさんが謝っていた。その言葉を聞いたとき、胸が締め付けられたように苦しくなった。
実はトモヨさんの悲鳴は駐車場から聞こえたわけではないし、半信半疑で妖精小僧に連れていかれたらベランダの窓から黒い塊が見えて「本当だった」とよじ登って助けようと必死になった結果だった。だからトモヨさんが思うほど俺は勇敢で立派な男じゃない。
そんなことがあったので、トモヨさんとはしばらく会えないだろうと覚悟していた。しかしいつもの電話の時間にトモヨさんから電話がかかってきた。
『龍一さん、今度の日曜日って何かご都合はありますか?』
「いいえ、何も」
『じゃあ、お昼ご飯を作りに行きます!私にごちそうさせてください!』
「手料理…ってことですか」
自分でもわかるほど声が上ずってしまう。トモヨさんが作る手料理を食べれるのはすごく魅力的だ。だけど彼女の負担になってしまわないだろうか。
『もちろんです。いつも美味しいものをごちそうになっていますし、この間のお礼とお詫びをしたいので……迷惑ですか?』
「とんでもない!すごく楽しみにしています」
当日はトモヨさんがこちらに来ると言うので、こっちに来てもらう時間を決めて、俺はしっかりとそれをスケジュールに登録した。
学校に行くと俺やトモヨさんの名前は伏せられていたが、すでに朝のニュースとして話題になっていた。
犯人の男はトモヨさんたちの近所で噂になっていた盗撮犯でもあり、本当に捕まって良かったと俺は思った。
男は道で気に入った女性を車の中から隠し撮りをしていた。不在でも女性が住んでいそうな部屋なら写真で盗撮し、さらには不法侵入して泥棒をする変態だった。
模様替えした俺の部屋を女性だと思って別の日に撮影し、たまたま日曜日にマンションへトモヨさんが入るのを見て『おとなしそうなので友達になれると思った』という理由で窓を割って侵入したという。たまたま俺の部屋で、妖精小僧の助けがあったからトモヨさんを助けることができたが、少しでも遅れていたらと思うと想像するだけで恐ろしい。
男につけられた顔の傷は浅いものですぐに治ると聞いて安心しているが、「傷跡が残ったりしたらと考えると申し訳なくて仕方がないんです」とトモヨさんが謝っていた。その言葉を聞いたとき、胸が締め付けられたように苦しくなった。
実はトモヨさんの悲鳴は駐車場から聞こえたわけではないし、半信半疑で妖精小僧に連れていかれたらベランダの窓から黒い塊が見えて「本当だった」とよじ登って助けようと必死になった結果だった。だからトモヨさんが思うほど俺は勇敢で立派な男じゃない。
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『龍一さん、今度の日曜日って何かご都合はありますか?』
「いいえ、何も」
『じゃあ、お昼ご飯を作りに行きます!私にごちそうさせてください!』
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自分でもわかるほど声が上ずってしまう。トモヨさんが作る手料理を食べれるのはすごく魅力的だ。だけど彼女の負担になってしまわないだろうか。
『もちろんです。いつも美味しいものをごちそうになっていますし、この間のお礼とお詫びをしたいので……迷惑ですか?』
「とんでもない!すごく楽しみにしています」
当日はトモヨさんがこちらに来ると言うので、こっちに来てもらう時間を決めて、俺はしっかりとそれをスケジュールに登録した。
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