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一日の終わり
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事情聴取を終えた私たちは警察署のロビーにいた。警察の人が調書を書き終えるまで待っていてほしいと言われたのだ。
「龍一さん、お疲れ様でした」
「いえ、トモヨさんのほうこそ怖かったでしょう?」
「でも龍一さんのおかげで助かりました」
私はソファに座っている龍一さんの横に腰を下ろした。顔に貼られたガーゼに薄っすらと血が見えた。
「トモヨさんの叫び声が聞こえたから」と犯人が入ってきた二階のベランダから龍一さんが駆けつけてくれて、男の背後から飛びついていて捕まえてくてた。だけど床に押さえつける前に男がナイフを振り回したらしく頬をナイフで切られたという。あの時は私も必死で傷のことに気がつかなかったけど警察署で簡単な手当を受けた龍一さんの顔に貼られたガーゼを見たとき、すごく怖くて涙が出て婦警さんに慰められてしまった。
「すみません。痛かったですよね」
「こんなの平気です。それより、トモヨさんが無事でよかった」
私の頭を撫でてくれる龍一さん。その優しい手にまた泣きそうになる。しばらく龍一さんに頭を撫でてもらっていると刑事のおじさんがやってきて私たちの前に立った。
「君たち、ありがとう。おかげで女性ばかりを狙う空き巣犯を捕まえることができたよ」
刑事のおじさんに褒められても私がもっと早く逃げることができたら龍一さんが怪我をしなかったかもしれないと思うと素直に喜ぶことはできなかった。
余罪について調査中だから詳しくは話せないけどもと前置きをされて、「また事情を聞くことになったら連絡をするから。できるだけ電話に出れるように頼むよ」と言われ私と龍一さんは開放された。
警察署を出て車の中で少し休む私達。。さっきまで明るかった空が暗くなり始めていて街灯には明かりが点り始めていた。
「トモヨさん、今日はもう遅いんで帰りましょう。さっきのこともありますし、ミサキさん一人で留守番をさせるのも心配ですし」
「はい」
「それと……」
龍一さんは言いにくそうな顔をしている。
「どうしました?」
「いや、なんでもないです。気にしないでください」
首を傾げる私を見て苦笑いを浮かべながら龍一さんは車を発進させた。
*******
龍一さんにマンションまで送ってもらい、いつものようにお別れのキスをしてギュッと抱きしめてもらう。離れたくないけども明日も仕事がある。
「じゃあ、トモヨさん。ゆっくり休んでください」
「はい」
名残惜しげに私から離れると龍一さんは車のエンジンをかけてゆっくりと動き出す。
「龍一さん!」
走りだそうとした車に私は慌てて声をかけた。
「ん?どうしたんですか?」
不思議そうな顔をしながら龍一さんが窓から身を乗り出した。
「あの……この前は電話しているときに泣いてごめんなさい。私を助けるために顔まで傷ついてしまって。本当にありがとうございます。あの、あんなことがあった後ですけどまた家に行っていいですか?」
「えっ!?い、いいんですか?俺の家、トラウマみたいになってないですか」
私は勢いよく首を横に振った。
「龍一さんに助けてもらったから何も怖くないです」
「良かった。トモヨさんが辛い思いをしてなくて」
嬉しいと思ってくれているみたいで龍一さんの声が少し明るくなった。
「わかりました。窓ガラスを新しくしてもらったりするんで、それが終わったらまた招待します」
「はいっ!私も準備しますから楽しみにしててください。それじゃあ、お休みなさい」
「はい、トモヨさんも気をつけて」
手を振ると車が遠ざかっていく。龍一さんの車が角を曲がって見えなくなるまで私は見送っていた。
「龍一さん、お疲れ様でした」
「いえ、トモヨさんのほうこそ怖かったでしょう?」
「でも龍一さんのおかげで助かりました」
私はソファに座っている龍一さんの横に腰を下ろした。顔に貼られたガーゼに薄っすらと血が見えた。
「トモヨさんの叫び声が聞こえたから」と犯人が入ってきた二階のベランダから龍一さんが駆けつけてくれて、男の背後から飛びついていて捕まえてくてた。だけど床に押さえつける前に男がナイフを振り回したらしく頬をナイフで切られたという。あの時は私も必死で傷のことに気がつかなかったけど警察署で簡単な手当を受けた龍一さんの顔に貼られたガーゼを見たとき、すごく怖くて涙が出て婦警さんに慰められてしまった。
「すみません。痛かったですよね」
「こんなの平気です。それより、トモヨさんが無事でよかった」
私の頭を撫でてくれる龍一さん。その優しい手にまた泣きそうになる。しばらく龍一さんに頭を撫でてもらっていると刑事のおじさんがやってきて私たちの前に立った。
「君たち、ありがとう。おかげで女性ばかりを狙う空き巣犯を捕まえることができたよ」
刑事のおじさんに褒められても私がもっと早く逃げることができたら龍一さんが怪我をしなかったかもしれないと思うと素直に喜ぶことはできなかった。
余罪について調査中だから詳しくは話せないけどもと前置きをされて、「また事情を聞くことになったら連絡をするから。できるだけ電話に出れるように頼むよ」と言われ私と龍一さんは開放された。
警察署を出て車の中で少し休む私達。。さっきまで明るかった空が暗くなり始めていて街灯には明かりが点り始めていた。
「トモヨさん、今日はもう遅いんで帰りましょう。さっきのこともありますし、ミサキさん一人で留守番をさせるのも心配ですし」
「はい」
「それと……」
龍一さんは言いにくそうな顔をしている。
「どうしました?」
「いや、なんでもないです。気にしないでください」
首を傾げる私を見て苦笑いを浮かべながら龍一さんは車を発進させた。
*******
龍一さんにマンションまで送ってもらい、いつものようにお別れのキスをしてギュッと抱きしめてもらう。離れたくないけども明日も仕事がある。
「じゃあ、トモヨさん。ゆっくり休んでください」
「はい」
名残惜しげに私から離れると龍一さんは車のエンジンをかけてゆっくりと動き出す。
「龍一さん!」
走りだそうとした車に私は慌てて声をかけた。
「ん?どうしたんですか?」
不思議そうな顔をしながら龍一さんが窓から身を乗り出した。
「あの……この前は電話しているときに泣いてごめんなさい。私を助けるために顔まで傷ついてしまって。本当にありがとうございます。あの、あんなことがあった後ですけどまた家に行っていいですか?」
「えっ!?い、いいんですか?俺の家、トラウマみたいになってないですか」
私は勢いよく首を横に振った。
「龍一さんに助けてもらったから何も怖くないです」
「良かった。トモヨさんが辛い思いをしてなくて」
嬉しいと思ってくれているみたいで龍一さんの声が少し明るくなった。
「わかりました。窓ガラスを新しくしてもらったりするんで、それが終わったらまた招待します」
「はいっ!私も準備しますから楽しみにしててください。それじゃあ、お休みなさい」
「はい、トモヨさんも気をつけて」
手を振ると車が遠ざかっていく。龍一さんの車が角を曲がって見えなくなるまで私は見送っていた。
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