60 / 105
窓は入り口ではない
しおりを挟む
玄関からノックをされたと思った私は立ち上がった。
(龍一さんよね)
玄関に行っていつもの癖で玄関の覗き窓で外を見てみるけど誰もいない。そういえば、私が部屋と一階のドアを開ける鍵を持っているから龍一さんは入れないことに気がつく。
じゃあ、誰がノックをしたんだろう?
私の思考を塞ぐように窓の方からガチャンッとガラスが割れる音が聞こえた。
(えっ!?)
驚いて振り返るとそこには窓の割れた穴から手を入れて鍵を開けようとする全身黒ずくめの男がいて、その手にはナイフが握られていた。
「きゃぁー!!」
悲鳴をあげると同時に窓の鍵が降りた。男は素早く中に入り込んでくると後ろ手で窓ガラスを閉めた。
「静かにしろ」
ドスの効いた声に恐怖を覚えながらも私は玄関ドアを背にして後手でドアノブを探る。まだ距離があるから逃げれるはず。
「やっ、やめなさい!警察を呼ぶわよ!」
男から目が離せないし、緊張と恐怖で上手く手がドアノブを掴めない。すると男は舌打ちをして言った。
「騒がれたら困るんだよ。大人しくしてろ。さもないと殺すぞ」
帽子とマスクで顔も表情も分からないけど男が苛立っているのだけはわかる。こちらにジリジリと近づいて来るのだけどなぜか虫を払うかのように腕を振り回している。まさか……変なクスリでもしてるの!?
あまり刺激したくはないけど、人が来ると分かれば窓から出ていくかも。
「私の恋人がもうすぐ来るわ。早く出ていきなさい」
「恋人?口からでまかせを!」
私の言葉に反応する男。だけど、次の瞬間、男がナイフを振り上げて私に襲いかかってきた。
「キャァー!!!」
振り下ろされるナイフ。思わず目をつむった時、男の叫びが響いた。
「トモヨさん!大丈夫ですか!?」
「え?」
目を開くと龍一さんが男の背中にしがみついて二人で床でもみ合っている。
「龍一さんっ!」
私はいまだにナイフを持っている男の手を蹴り上げるとナイフが宙を舞って床に転がった。
「チィッ!」
「トモヨさんっ、離れてっ」
男はなんとか逃れようともがき、龍一さんが必死に捕まえている。私は何か犯人を縛るために紐がないかと辺りを探し回る。
「小僧、早くしてくれっ!」
部屋にいる三人以外の誰かを龍一さんが呼ぶ。私の顔のそばで小さな風が吹いた。それは「任せろ」と言っているようだった。
不思議なことにあれだけ暴れていた男が急に力をなくしたかのように龍一さんに羽交い締めにされたまま動かなくなった。
「龍一さん、どうしよう。紐がないんです」
なぜか冷静な部分の自分が龍一さんに話かけた。
「えっと、じゃあ、俺のネクタイで」
「でも・・・」
「いいですから、それで縛りましょう」
龍一さんのタンスからネクタイを数本取り出して持って行くと男は気を失っているみたいで龍一さんがそおっと手を話しても動かない。
「危ないのでトモヨさんは外にでて警察に通報してください」
男の体の下から抜け出して立ち上がり、ネクタイを受け取る龍一さん。
「でも、龍一さんが一人に」
「俺は大丈夫です。ほら、早く警察に」
龍一さんは私の肩に手を置くと有無を言わさず玄関のほうに押しやった。私は心配になりながらも玄関を出た。
警察に通報し、あれこれと聞かれることに「お願いだから早く来て!」と叫びたいけどひたすら質問に答える。玄関のドアをあけて中を覗くと男はネクタイで手足を縛りつけられて床に転がっている。
そのそばで龍一さんが座って男を見張っていた。やがてサイレンの音が聞こえてきて警察官たちが駆けつけてきた。
(龍一さんよね)
玄関に行っていつもの癖で玄関の覗き窓で外を見てみるけど誰もいない。そういえば、私が部屋と一階のドアを開ける鍵を持っているから龍一さんは入れないことに気がつく。
じゃあ、誰がノックをしたんだろう?
私の思考を塞ぐように窓の方からガチャンッとガラスが割れる音が聞こえた。
(えっ!?)
驚いて振り返るとそこには窓の割れた穴から手を入れて鍵を開けようとする全身黒ずくめの男がいて、その手にはナイフが握られていた。
「きゃぁー!!」
悲鳴をあげると同時に窓の鍵が降りた。男は素早く中に入り込んでくると後ろ手で窓ガラスを閉めた。
「静かにしろ」
ドスの効いた声に恐怖を覚えながらも私は玄関ドアを背にして後手でドアノブを探る。まだ距離があるから逃げれるはず。
「やっ、やめなさい!警察を呼ぶわよ!」
男から目が離せないし、緊張と恐怖で上手く手がドアノブを掴めない。すると男は舌打ちをして言った。
「騒がれたら困るんだよ。大人しくしてろ。さもないと殺すぞ」
帽子とマスクで顔も表情も分からないけど男が苛立っているのだけはわかる。こちらにジリジリと近づいて来るのだけどなぜか虫を払うかのように腕を振り回している。まさか……変なクスリでもしてるの!?
あまり刺激したくはないけど、人が来ると分かれば窓から出ていくかも。
「私の恋人がもうすぐ来るわ。早く出ていきなさい」
「恋人?口からでまかせを!」
私の言葉に反応する男。だけど、次の瞬間、男がナイフを振り上げて私に襲いかかってきた。
「キャァー!!!」
振り下ろされるナイフ。思わず目をつむった時、男の叫びが響いた。
「トモヨさん!大丈夫ですか!?」
「え?」
目を開くと龍一さんが男の背中にしがみついて二人で床でもみ合っている。
「龍一さんっ!」
私はいまだにナイフを持っている男の手を蹴り上げるとナイフが宙を舞って床に転がった。
「チィッ!」
「トモヨさんっ、離れてっ」
男はなんとか逃れようともがき、龍一さんが必死に捕まえている。私は何か犯人を縛るために紐がないかと辺りを探し回る。
「小僧、早くしてくれっ!」
部屋にいる三人以外の誰かを龍一さんが呼ぶ。私の顔のそばで小さな風が吹いた。それは「任せろ」と言っているようだった。
不思議なことにあれだけ暴れていた男が急に力をなくしたかのように龍一さんに羽交い締めにされたまま動かなくなった。
「龍一さん、どうしよう。紐がないんです」
なぜか冷静な部分の自分が龍一さんに話かけた。
「えっと、じゃあ、俺のネクタイで」
「でも・・・」
「いいですから、それで縛りましょう」
龍一さんのタンスからネクタイを数本取り出して持って行くと男は気を失っているみたいで龍一さんがそおっと手を話しても動かない。
「危ないのでトモヨさんは外にでて警察に通報してください」
男の体の下から抜け出して立ち上がり、ネクタイを受け取る龍一さん。
「でも、龍一さんが一人に」
「俺は大丈夫です。ほら、早く警察に」
龍一さんは私の肩に手を置くと有無を言わさず玄関のほうに押しやった。私は心配になりながらも玄関を出た。
警察に通報し、あれこれと聞かれることに「お願いだから早く来て!」と叫びたいけどひたすら質問に答える。玄関のドアをあけて中を覗くと男はネクタイで手足を縛りつけられて床に転がっている。
そのそばで龍一さんが座って男を見張っていた。やがてサイレンの音が聞こえてきて警察官たちが駆けつけてきた。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【完結】推しの悪役にしか見えない妖精になって推しと世界を救う話
近藤アリス
恋愛
「え、ここって四つ龍の世界よね…?なんか体ちっさいし誰からも見えてないけど、推しから認識されてればオッケー!待っててベルるん!私が全身全霊で愛して幸せにしてあげるから!!」
乙女ゲーム「4つの国の龍玉」に突如妖精として転生してしまった会社員が、推しの悪役である侯爵ベルンハルト(通称ベルるん)を愛でて救うついでに世界も救う話。
本編完結!番外編も完結しました!
●幼少期編:悲惨な幼少期のせいで悪役になってしまうベルるんの未来を改変するため頑張る!微ざまあもあるよ!
●学園編:ベルるんが悪役のままだとラスボス倒せない?!効率の良いレベル上げ、ヒロインと攻略キャラの強化などゲームの知識と妖精チート総動員で頑張ります!
※推しは幼少期から青年、そして主人公溺愛へ進化します。
死にかけ令嬢の逆転
ぽんぽこ狸
恋愛
難しい顔をしたお医者様に今年も余命一年と宣告され、私はその言葉にも慣れてしまい何も思わずに、彼を見送る。
部屋に戻ってきた侍女には、昨年も、一昨年も余命一年と判断されて死にかけているのにどうしてまだ生きているのかと問われて返す言葉も見つからない。
しかしそれでも、私は必死に生きていて将来を誓っている婚約者のアレクシスもいるし、仕事もしている。
だからこそ生きられるだけ生きなければと気持ちを切り替えた。
けれどもそんな矢先、アレクシスから呼び出され、私の体を理由に婚約破棄を言い渡される。すでに新しい相手は決まっているらしく、それは美しく健康な王女リオノーラだった。
彼女に勝てる要素が一つもない私はそのまま追い出され、実家からも見捨てられ、どうしようもない状況に心が折れかけていると、見覚えのある男性が現れ「私を手助けしたい」と言ったのだった。
こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる