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止まらない流れ

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*水曜日 夜*

お風呂の湯につかり見る自分の体。数えきれないほどつけられた初めてのキスマーク達はすっかり消えてしまい寂しさを感じてしまう。
前以上に仲を深めているはずなのに龍一さんともっと一緒にいたいって胸が締め付けられる。

「結婚したら」

ずっと一緒。は、深呼吸に混ぜて吐き出す。
前世の記憶ではミサキのためのお姉ちゃんだからゲーム内で役割が終わればその先は何もない。
でもゲームのストーリーを作った人達は私達が生きる世界で来年から成人年齢が引き下がり、ミサキが18歳で成人式に参加して振袖を着るかもなんて考えたことはないと思う。
この世界は私が少しも干渉できない場所で大きな変化が起きていて、前世の記憶だと思っていたものは両親を亡くし、おばあちゃんとミサキと暮らすために早く大人になろうとした昔の私の思い込みじゃないかとこの頃考えている。


「おねえちゃーん!イージーZ初担番組もうすぐ始まるよー」

現実に引き戻された私は慌ててお風呂から上がる。

「ちょっ、ちょっと待って~、時間止めて!」

「それはムリだからお姉ちゃん早く動いて!リアタイ逃せないよ!」

そして今日もバタバタと一日が終わっていく。

******
*木曜日*

今週も仕事を乗りきって日曜日は龍一さんとデートの日。なんて幸せなことを考えながら自転車をこぐ。会社のお使いで本社から支社に急ぎの書類を届けた帰り道。自転車で路肩に止まっていた車を通りすぎた時に聞こえたシャッター音で嫌な予感に塗り替えられた。
ぎくりと嫌な感覚が背中にして自転車を停めて振り返るけど車は止まったまま走り出す様子もない。龍一さんのことを考えるのと同じくらいミサキのことを考えすぎているからか目に入った車が不審者かもと疑ってしまったせいで鳴ってもいないシャッター音が聞こえたのかも。
それにこの辺りは人通りもあるし、誰かのスマホの音かもと不安を払い、私は再びペダルを踏み込み走り出した。

会社に着くとちょうど昼休みで、支社から預かってきた書類を社長に渡せば私の午前中の仕事は終わり。
買っておいたパンを食べてからスマホでメッセージを確認すると龍一さんから花束のスタンプ。その次に『こんにちは。今度の日曜日、予定を変更して結婚指輪を買いに行きませんか』というメッセージ。クマが二匹、ハートを背景に手を繋ぐスタンプが届いていた。
驚きのあまりパンを落としそうになり、なんとかキャッチしたけど力が入って潰れてしまった。
私は『嬉しい!』や『ありがとうございます』とか、ありのままに『最高に幸せです』とメッセージを打っては消す。本当に最高に幸せなことを伝えられる言葉が見つからなくて、新作スタンプも探してみたけど私の気持ちを龍一さんに伝えられそうにない。
昼休みは龍一さんへの返事を考えるためにつかっても良い言葉が思い浮かばなくて、仕方なく仕事が終わったらすぐに返事をしようと思うのだった。
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