上 下
52 / 105

二人で迎える朝

しおりを挟む
私までいつの間にか寝ていて「ごはんですよ~」と階下から呼ぶ声で目を覚ました。
目の前には気持ち良さそうに寝ている龍一さん。
私達は畳の上で横になっていたはずなのに、いつのまにか布団の中に入っていた。せっかく一緒なので布団からでるのがもったいなくて横になったまま彼の体を揺すった。

「龍一さん、起きてください。朝ご飯できたそうですよ」
「ん……あ、トモヨさん。おはようございます」
「はい、おはようございます。昨夜はありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。トモヨさん、とても可愛かった」
「あ、あー、そ、その、えと、(まだ何も起きてない、はず、よね。)」

こっそりちゃんと自分がズボンや下着を履いているか確認する。まだ脱がされた形跡がなくてホッとしつつもガッカリな気持ちで朝からイヤラシイ自分が恥ずかしい。

「目がさめたらちゃんとトモヨさんがいて安心しました。布団に一緒に入って、可愛い寝顔を見ていたら夢なんじゃないかと思って」
「ね、寝顔なんて、私のみても可愛いも向いてのじゃないんじゃ」

どうしよう。寝ている時に限って目が大きく開いて白目向いていたり、ヨダレが出ていたりしたのを見られていたら。

「あ、そうだ。トモヨさん、左手出して」
「え? あ、はい」

言われるままに手を出すと、龍一さんは私の手を両手で包むようにして持ちあげてキスをした。

「え?」
「あ、あー、あの、これはですね。あの、俺の決意表明というかなんといいますか」
「え、えっと?」
「結婚するまでにトモヨさんがお嫁さんになれて幸せだって思ってもらえる男になります。俺のこと好きになってくれるように頑張ります」
「龍一さん。ずっと前からずーっと好きですよ」
「トモヨさん」

龍一さんは私の言葉を聞くなりぎゅっと抱きついてきた。でも、私はそれが嬉しい。

「龍一さん、大好きです」
「俺もです。俺もトモヨさんのことが大好きだ」
「ふふっ、知っていますよ」
「あ、あの、トモヨさん。その、もし良かったらなんですが……」

「奥様ー!なんですかこの棚は!ドアを塞いで!坊ちゃま達、これじゃあ出てこれませんよ!」
「あーー!ごっめーん!昨日の夜、わざと置いてたのー!」

いつの間にか二階にあがって来たらしいお手伝いの百合子さんの声。龍一さんのお母様の声も聞こえてムードが台無しになってしまった。
「あの、えっと、朝食食べに行きましょうか」
「そ、そうですね」

二人で布団から出て苦笑しながら部屋を出る。塞がれていたドアは向こう側に置かれていたものが片付けられていてアッサリと開くようになった。私達が一階に降りると、龍一さんのお母さんが目を輝かせていた。多分、10ヶ月後に孫の顔を見れると期待されているわ。

「おはようございます」
「トモヨちゃん、龍一をよろしくね。こんな息子だけど見捨てないでやってちょうだい」
「お母様、逆ですよ。私の方が龍一さんにフラれないようがんばります」

すごく強烈な出来事もあったけれど無事に龍一さんの家族にご挨拶が出来た一泊二日だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。 どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。

私のお嬢様は……

悠生ゆう
恋愛
パン屋を目指していた紗雪はひょんなことから高飛車で口が悪くて素直じゃないお嬢様の使用人になった。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

処理中です...