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帰り道

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今日の昼休み、ミサキから電話があって不審者があちこちで目撃されているので学校に迎えに来て欲しいって連絡があった。
ミサキの部活が終わる時間に合わせて私は迎えに行ったら、校門前でミサキがコウ君とみらいさんと一緒に立っていた。

「あ、お姉ちゃんだ。じゃあね、コウ、みらいちゃん。また明日ね」
「おお、また明日な」
「じゃあね、バイバイ。また明日」

ミサキが手を振りながら二人と離れて私の方に駆け寄ってきた。

「ミサキ、二人と待ってたの?」
「うん。みらいちゃんも家族の人が迎えに来るのを待ってたから一緒に話してたんだよ。コウが私とみらいちゃんのボディーガード代わりに一緒にいてくれたから心配ないよ」

あらー。コウ君ったら両手に花ね。なんておばさんみたいな事を思っていまう。

「そっかぁ。今日は一緒に帰ろうね。ところで、不審者って大丈夫なの?」
「今のところは大丈夫みたいだよ。先生達からは危ないから捕まえようとせずに警察や学校に通報しなさいって言われたけど」
「そうよね。ミサキ達、前は現行犯で捕まえちゃったから先生たちから心配されるわよね」

社長の奥様から『警察から電話があった』と聞いた時はミサキに何かあったかと不安でたまらなかったわ。

「あ、そうだ。今度、私と一緒に防犯グッズを買いに行こうよ。今、防犯ベルとかホームセンターでも買えるんだって」
「え? どうして?」
「私達も襲われる可能性があるかもしれないじゃん」
「そ、それは……」

ミサキの言葉に私は言葉を失った。確かに、そうよね。ミサキは可愛いから危ないわ。私ならひったくりとかひったくりとか、あと置き引きにあう可能性もあるわ。

「だからさ、お揃いで色違いのものを買っておこうよ」
「いいわね! 日曜日に買いに行こっか」
「うん。あ、そうだ。お姉ちゃんはどんなものを買うつもり?」
「え? えっと……、まずは護身用のスタンガンかな」
「お姉ちゃん、そんな危険なことしないで。お巡りさんに任せておけばいいじゃない」
「で、でもミサキが襲われたらスタンガンで助けに行けるし」
「私まで感電したらどうするのよ。それに奪われたら危ないから防犯ベルを鳴らして逃げるのが一番良いんだって」

ミサキに叱られてしまった。でも、ミサキが危険にさらされているのに私が何も出来ないなんてイヤなのよ。

「わかったわ。ミサキがそこまで言うなら防犯ブザーにする。じゃあ、日曜日にホームセンターで見てみようね」
「久し振りに一緒にお出かけだね」
「そういえばそうね。ミサキは友達とよく出かけてるし」
「お姉ちゃんは先生とのデートで忙しいもんね。私のことなんて気にせず結婚しちゃいなよ」
「もう、まだ付き合って1年も経ってないのよ。向こうへの挨拶はしてきたけど結婚はまだ早いわ」
「えー。そうなの?」
「そうなの。だから、もう少しだけミサキのお姉ちゃんでいたいの」
「えへへっ、じゃあいい子にして待っててあげる。私も彼氏作るぞー!」
「ミサキにはコウ君がいるでしょ」
「コウは男っていうか兄とか弟ってかんじ?もっと頼りになる人が良いなぁ」

ミサキがそう言いながら私の腕にしがみついて来た。私はミサキの頭を撫でてあげた。

「えー、お姉ちゃんはコウ君ならミサキのこと安心して任せられるのにー。二人が結婚するならお姉ちゃんは応援するわよ」

なんだか龍一さんのお母さんみたいな事を言っている気がするけど影響を受けちゃったかしら。

「ん~、まだ先は長いし、彼氏もだけどもっと色んな人と会って色んなことをしたいんだよね。ま、お姉ちゃんが推すならコウも彼氏候補に入れとこうかな」
「ミサキって贅沢ね~」
「そりゃあ、天下無敵の女子高生ですから」

ミサキが私の腕から離れながら胸を張ってドヤ顔した。

「じゃあ、お家に帰ろっか」
「うん」

私達は手を繋いで歩き出した。ミサキが卒業した後はどんな道を進むのか分からないけどいつまでも仲のいい姉妹でいたいと私は願った。

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