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ご挨拶2
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いきなり名前を呼ばれたけどまずは自己紹介。
「えっと……はじめまして、私は……」
「ああ、いいの。私、あなたのこと知ってるから。吉永トモヨさんでしょ。妹はミサキさん」
「なんで、母さんが……」
「だってうち、一応、この辺りで大きい病院だし?変な人がお嫁にきたら患者さんも不安で困るでしょ?あ、公平に龍ちゃんも興信所で調べてるわよ。お兄ちゃん達も結婚前にはちゃんと調べてあるし、お嫁さんたちにはそれぞれ夫になる子の調査書を渡してるし、その結果を納得の上で嫁にきてもらってるからね?」
「じゃあ父さんや兄さんも俺の結婚相手のことを……」
「言ってないわよ。興信所の調査書の内容も私と本人たちにだけ見せてるもの。今回、龍ちゃんとトモヨさんの調書は今から二人に見せるけど、それまでは私だけの胸に納めてあるわよ」
龍一さんのお母さんは私の方を見てニッコリ笑った。反対に龍一さんが今まで見たことがないほど激昂している。
「母さん!なんでそんなことを!」
「あら、隠さず言ったし、二人の結婚は賛成なのよ。家柄なんてアテにならないし。それに反対なら付き合ってる時点で光一お兄ちゃんみたいに何度か別れさせてたわよ。最後の子は反対を押し切って結婚したから、それだけ本気だってことでもう何も言ってないけど」
展開がすごすぎて何も言えない私。百合子さんがお茶とお菓子とともに封筒をもって仏間に入ってきた。
「はいはい、奥様。ご用意できましたよ」
「ありがとう、百合子さん。はい、これが調査書。こっちがトモヨさんで、それから龍一のやつね」
まるで買い物メモを渡すかのような気軽さで目の前に出された調査書が入った封筒。龍一さんは黙ってそれを突き返した。私も手に取らず、テーブルに置いたままにする。
「見なくてもいい。俺はトモヨさんと生きていくなかで彼女のことを知っていくし、俺のことも彼女に知ってもらう」
「あらそう。でもあなた、仕事上、必要じゃないの?ほら、教師もそういうところうるさいんでしょう?」
龍一さんがムッとした顔で母親を見た。
「そうしなければいけないのなら俺はトモヨさんと一緒にいるために別の仕事をする。俺はこれから先、トモヨさんとしか結婚しないし、トモヨさんにも俺以外の男とは絶対に結婚して欲しくない」
その言葉を聞いて龍一さんのお母さんが嬉しそうな表情をした。
「まっ、百合子さん、聞いた?龍一はトモヨさんにメロメロよ」
「まあ、素敵ですねえ」
百合子さんもニコニコしている。龍一さんは仏頂面だ。対して私は別世界すぎてどうすればいいのか分からずにいる。この場合、どういう反応をするのが正解なのかしら。
「あの……」
「あ、ごめんなさいね。龍一から聞いてると思うけど、私、こういう性格だから。嫌なタイプでしょうけど気にしないで」
「いえ……そうではなくて、えっと、龍一さんとお付き合いさせていただいています。吉永トモヨです。龍一さんが教師をされている高校で妹がお世話になってます。そのご縁で結婚を前提にお付き合いをすることになりました。よろしくお願いいたします」
「あら、怒らないの?興信所で調べちゃうようなママよ?」
龍一さんの母親の言葉に百合子さんも同意するようにうなずいている。
「私の調書にかかれていると思いますけど、縁を切った親戚にも何度か調べられたことがありますので、慣れっこというか、逆に龍一さんのお母さまみたいに隠さず考えていることを話してくれる方が安心します」
正直に言えば腹がたつ。だけど高貴な家柄が結婚相手を調査するのは昔は珍しくなかったし、もしかしたら怒ったり泣いたりの反応をしたら結婚に反対する口実にするのかも。と思って冷静なふりをした。
「あら、嬉しいこと言ってくれちゃって。そうだ、百合子さん、トモヨさんのお茶がもう冷めてると思うから淹れかえてあげて。あと私のお饅頭を持ってきて」
「かしこまりましたぁ」
百合子さんが出ていったのを見届けてから、龍一さんのお母さんが私に問いかけてきた。
「ねえ、トモヨさん。私、まだおばあちゃんじゃないのよ。だからおめでた婚も私は歓迎なんだけど?」
「そ、そ、それは、」「母さん!」
真っ赤になってしどろもどろになる私に代わって龍一さんが声をあげた。すると、龍一さんの母親がまた楽しそうに笑う。
「えっと……はじめまして、私は……」
「ああ、いいの。私、あなたのこと知ってるから。吉永トモヨさんでしょ。妹はミサキさん」
「なんで、母さんが……」
「だってうち、一応、この辺りで大きい病院だし?変な人がお嫁にきたら患者さんも不安で困るでしょ?あ、公平に龍ちゃんも興信所で調べてるわよ。お兄ちゃん達も結婚前にはちゃんと調べてあるし、お嫁さんたちにはそれぞれ夫になる子の調査書を渡してるし、その結果を納得の上で嫁にきてもらってるからね?」
「じゃあ父さんや兄さんも俺の結婚相手のことを……」
「言ってないわよ。興信所の調査書の内容も私と本人たちにだけ見せてるもの。今回、龍ちゃんとトモヨさんの調書は今から二人に見せるけど、それまでは私だけの胸に納めてあるわよ」
龍一さんのお母さんは私の方を見てニッコリ笑った。反対に龍一さんが今まで見たことがないほど激昂している。
「母さん!なんでそんなことを!」
「あら、隠さず言ったし、二人の結婚は賛成なのよ。家柄なんてアテにならないし。それに反対なら付き合ってる時点で光一お兄ちゃんみたいに何度か別れさせてたわよ。最後の子は反対を押し切って結婚したから、それだけ本気だってことでもう何も言ってないけど」
展開がすごすぎて何も言えない私。百合子さんがお茶とお菓子とともに封筒をもって仏間に入ってきた。
「はいはい、奥様。ご用意できましたよ」
「ありがとう、百合子さん。はい、これが調査書。こっちがトモヨさんで、それから龍一のやつね」
まるで買い物メモを渡すかのような気軽さで目の前に出された調査書が入った封筒。龍一さんは黙ってそれを突き返した。私も手に取らず、テーブルに置いたままにする。
「見なくてもいい。俺はトモヨさんと生きていくなかで彼女のことを知っていくし、俺のことも彼女に知ってもらう」
「あらそう。でもあなた、仕事上、必要じゃないの?ほら、教師もそういうところうるさいんでしょう?」
龍一さんがムッとした顔で母親を見た。
「そうしなければいけないのなら俺はトモヨさんと一緒にいるために別の仕事をする。俺はこれから先、トモヨさんとしか結婚しないし、トモヨさんにも俺以外の男とは絶対に結婚して欲しくない」
その言葉を聞いて龍一さんのお母さんが嬉しそうな表情をした。
「まっ、百合子さん、聞いた?龍一はトモヨさんにメロメロよ」
「まあ、素敵ですねえ」
百合子さんもニコニコしている。龍一さんは仏頂面だ。対して私は別世界すぎてどうすればいいのか分からずにいる。この場合、どういう反応をするのが正解なのかしら。
「あの……」
「あ、ごめんなさいね。龍一から聞いてると思うけど、私、こういう性格だから。嫌なタイプでしょうけど気にしないで」
「いえ……そうではなくて、えっと、龍一さんとお付き合いさせていただいています。吉永トモヨです。龍一さんが教師をされている高校で妹がお世話になってます。そのご縁で結婚を前提にお付き合いをすることになりました。よろしくお願いいたします」
「あら、怒らないの?興信所で調べちゃうようなママよ?」
龍一さんの母親の言葉に百合子さんも同意するようにうなずいている。
「私の調書にかかれていると思いますけど、縁を切った親戚にも何度か調べられたことがありますので、慣れっこというか、逆に龍一さんのお母さまみたいに隠さず考えていることを話してくれる方が安心します」
正直に言えば腹がたつ。だけど高貴な家柄が結婚相手を調査するのは昔は珍しくなかったし、もしかしたら怒ったり泣いたりの反応をしたら結婚に反対する口実にするのかも。と思って冷静なふりをした。
「あら、嬉しいこと言ってくれちゃって。そうだ、百合子さん、トモヨさんのお茶がもう冷めてると思うから淹れかえてあげて。あと私のお饅頭を持ってきて」
「かしこまりましたぁ」
百合子さんが出ていったのを見届けてから、龍一さんのお母さんが私に問いかけてきた。
「ねえ、トモヨさん。私、まだおばあちゃんじゃないのよ。だからおめでた婚も私は歓迎なんだけど?」
「そ、そ、それは、」「母さん!」
真っ赤になってしどろもどろになる私に代わって龍一さんが声をあげた。すると、龍一さんの母親がまた楽しそうに笑う。
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