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お茶会?

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日曜日。
朝早くから社長夫婦の家にお邪魔して、私達の亡きおばあちゃんが残してくれた振り袖の着付けをしてもらう。 
慣れない帯の締め付けに引き受けるんじゃなかったと思うけど社長達のためにも仕方がない。
そんな私を見ながら学校の制服に身を包んで朝食に作ってもらったサンドイッチを食べているミサキ。

「お姉ちゃん。大丈夫?」
「うん。多分……」

ちゃんと長山さんには今回のお茶会については伝えてある。

======
長山龍一との電話での会話・回想
「ーーということで断りきれずお茶会に参加することになったんです」
『なんだか面倒なことを頼まれたんですね』
『はい、社長夫婦には中学卒業からミサキと一緒に面倒を見てもらってて断るに断れなくて……なので相手の人には直接、嘘でも結婚前提の友達からの付き合いはできないと断りますから』
『分かりました。俺は吉永さんを信じて待ってますから』
回想・終
======

帯の苦しさもあって私はふうっとため息をついた。

******
お茶会と言う名の最後の最後は破断になることが前提のお見合いは仲人さんもいてなんとも本格的だった。テレビの再放送で見た、旅館の和室で向かい合って座る両家。
奥さん同士がウフフ、おほほと笑っている。だけどこちら中卒。向こうは有名大学卒。自慢の子供(のように思っている会社社員)だからか社長同士は渋い顔。両家ともに同じ年の高校生の妹が来ている。
妹さんの方は見覚えがあるけど・・・・・・初めましてと挨拶をしているから他人の空似かも。
お見合いって断る方はどっちからがスムーズだろうなんて考えを持っているから盛り上がらない。締まりのない顔をして私は座っていた。

ムードはともかくお見合い自体は仲人の手腕で滞りなく進み、「あとはお若いお二人で・・・・・・」と再放送で聞いたセリフを生で聞けたのはちょっと面白い。

二人で旅館の庭をまわって眺めてることになった。

「吉永さん。すみません」

相手から唐突に謝られるけど驚くことはなかった。

「いいんですよ。お付き合いされている方と結婚されたいのにご家族の説得が大変だと聞きしましたから」

なぜか沈黙が広がる。

「そのことなんですが、彼女に別れを告げられました。親が持ってきた見合い話も断ってくれないなら待つのはもう疲れた。別れて欲しいと」

「・・・・・・・・・・・・」

振られてたのね。さらに私が恋人がいるのを理由にこれから断ると考えるとあまりにも気まずくて、お茶会自体をお断りした方が良かったと後悔する私。

「お世話になった人にあんな失礼な頼みをしておき、信頼できる相手を厳選してもらいながら・・・・・・結局は彼女に逃げられるなんて馬鹿ですよね」

「それは・・・・・・心中お察しします」

重い、なんて重い!返事はこれで良かったかしら?
沈黙がのしかかり、庭の景色を眺めるどころではない。

「吉永さんは恋人と上手くいっていますか?」

なんとか次郎さん、自分自身に塩をすり込む質問はやめて~!!失恋した相手に向かって「お付き合いしている人とは順調です」なんて言えるわけがない。お断りのタイミングも逃すし、何て返せば良いか分からず曖昧に笑って誤魔化す。

「ええと、あの、そろそろ戻りましょうか?」
「そうですね」

盛り上がりもなく部屋に戻ろうかというときだった。聞き慣れた、私を必死に呼ぶ声が耳に届いた。
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