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びっくり事件発生 2

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朝のホームルーム。いつもの通りチャイムと同時に氷川と長山の担任、副担任コンビが教壇に立つのだが、生徒のほとんどがざわついた。

「え、あれ、ナガ?」
「うそ。別人だろ」
「髪切ったのか?いや違う。短くなってるだけじゃない」

生徒たちの視線は変身したかのような長山に集中する。ミサキはミールの言った朝の言葉を思い出してピンと来た。

(まさか・・・・・・ラブジェリーの下着に気が付かずに履いてるんじゃ)

そして、その効果は絶大だったようだ。普段無口な長山が教室で大きな声で挨拶をしたのだ。

「おはようございます」

生徒たちも驚きながらも挨拶を返す。クールで通っている氷川も長山の隣で驚いていた

「長山先生……ど、どうかされたのですか?」
「いえ、特に理由はありません」
「しかし……いつもと雰囲気が……長山先生、何かありましたら遠慮なく相談してくださいね」
「はい。ありがとうございます」

心配する氷川の言葉に今まで一度も見たことがないようなワイルドなのに爽やかな笑顔で返してクラス全員が驚いた。

(これは……予想以上かも。これならいけるかも)

授業中も休み時間もずっと笑顔を絶やさない。そんな長山にクラスの女子たちも掌をかえしたかのように積極的に話しかけている。

「先生、ここ教えて欲しいんだけど」「私も~」
「私も」
「ああ、ちょっと待ってくれ。順番にな」

その光景を見て、ミサキはミールの作戦が成功したと確信した。

「な、うまくいってるだろ?」

胸を張ってミサキに話しかけるミール。暗くて目つきの悪い長山が凛々しく爽やかに笑顔を振り撒くその姿にミサキも「そうね」と納得した。

さらなる異変がおきたのは昼休みのことだった。クラスメイトの男子が教室に飛び込んで「長山先生が熱出して倒れたから次の授業は自習だぞ!」と言う。

「……ミール。どうなってんのよ!?」

ミールを連れて人がいない階段で話すミサキ。

「何がだよ」
「とぼけないで!長山先生のことよ!あんなに元気だったのにどうして……」
「だから、ラブジェリーの魔法効果だって。自信がつけば元の性格よりパワフルに元気に活動できるようになるもんだ。張り切って体が追いつかないのは仕方がないぞ」
「それって張り切っておしゃれしたり、明るい性格になった反動で疲れて熱がでるってこと?」
「体力があればいつもよりちょっと疲れた程度で乗り越えられるんだが、長山だからな」
「それって……その下着を学校のときに着けさせる意味あるの?」
「下着の効果は一日履くと消える。数日、自信をつければ変われる奴は変わる。だから数枚、用意しておけばいい。数日続けて自信がつけば自分はできると自己暗示にかかるんだ」

姉貴には用意しすぎた。とミールが呟く。

「なるほどね。でも、反動の方がひどいじゃない。数日でも毎回ぶっ倒れたら夏休みの補講授業が増えてくし……」

副担任の体調のことよりも夏休みが減る心配をするミサキ。

「そうだな。ここまで反動が出るとは俺様も思ってなかったぞ。まぁ、長山の場合、元々の性格もあるだろうし、ラブジェリーの魔法と相性が悪いみたいだな。性格を変えるのはすぐには無理か」

長山の家へパンツの回収に行ってくるというミールをミサキは見送って自分は教室に戻った。
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