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ミールの仕事 :長山龍一視点:
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俺が吉永さんとの電話を終えて帰宅すると玄関の鍵が開いていた。ドアを開けると部屋の中に明かりがついていることに驚いた。
まさか空き巣か!? 警戒しながらゆっくりと部屋に近づきそっと室内のドアを開けると、そこには妖精小僧がいた。
「よお、副担の長山。調子はどうだ?俺様が来てやったぞ」
こいつは吉永トモヨさんの妹で俺の生徒の吉永ミサキさんのそばにいる妖精だ。
入学式のときからこいつの姿がミサキさんの側を飛んでいた。この妖精小僧は学校の授業妨害などすることがなく、俺も他の人には見えていないものと話して変人扱いされたくはない。だから互いに干渉しなかった。
それが吉永さんからお礼のクッキーをもらったすぐ後にこいつが現れて「俺にクッキーを寄越せ」と言う。こいつをうっかりはたき落としてしまってから、俺の前に現れてちょっかいをかけてくるようになった。
「お前がいるとはいえ、せめて鍵だけはかけておいてくれ。他の奴には見えないんだろう?これじゃあ空き巣に入られる」
「入ったところで盗られる物はないじゃんかよ。せーぜーエロ本か?」
「そういう問題じゃない。それにミサキさんはトモヨさんが帰るまで留守なんだろ。だったら早く帰れっ」
手で追い払うがフワリと避け、俺の周りを一周して顔の前に来た。
「エロ本は否定しないのか。つうか、お前、俺様が来たのに失礼だな。せっかく来たのに。それとミサキなら大丈夫だ。あの家には俺様が結界を張ってるからな」
「結界って、・・・・・・頭が痛くなってきた」
目の前にいる妖精と話す自分も大概だが、結界なんてどこのゲームの世界だ。
「まあまあ。それより今日はいいものを持ってきた。ほれっ」
奴は小さな袋にどういいう仕組みで入っているのか分からないが明らかに袋に入らないサイズの何かを取り出してテーブルの上に投げ出す。それは小さな箱で中身は……。
「指輪?しかもペアリングじゃないか」
「そうだ。これでミサキの姉ちゃんである糸目姉貴に明日にでもプロポーズしろ。つまり姉貴と仲良く結婚して夫婦になれ」
「はぁ!?」
「糸目姉貴は恋愛初心者だ。攻略は容易いぞ。そこでだ。明日、仕事場に迎えに行ってデートしてキスして、指輪を渡してプロポーズ。完璧だ」
何が完璧だ。簡単に言っているがプロポーズにたどり着くまで一体どれくらいのカップルが苦労し、破局していると思っているんだ。
それになぜ妖精が俺の前にいきなり現れて吉永さんとの仲を深めようとするのかも分からない。
「吉永さんは俺の大切な人だから仲をかき混ぜるようなことをするな。人外が人間に干渉してどうする」
「お前の気持ちなんか俺様には関係ないね。それに俺は人間じゃないからお前らの考える理なんて興味ないしな」
「質問を変えるぞ。なんでペアリングを用意したり、吉永さんが買い物をするスーパーを俺に教えてきたんだ」
「ミサキの『姉ちゃんに幸せになって欲しい』って想いを叶えるためさ。ちょうどいいタイミングでお前が糸目姉貴を意識してたから手っ取り早くひっつくように狙った」
たしかにこいつに言われた場所に行けばタイミングよくトモヨさんに会えた。小僧が言ってることに嘘はないようだ。
「なんで一人の女の子の願いを妖精が叶えようとする」
「そりゃあミサキの幸せのためだからだよ。ミサキの幸せが溜まったら俺は妖精の国の国家試験に合格なんだ」
「妖精の国って……妖精の国に国家試験ってあるのか?」
「当たり前だろう。お前の目の前にいるのは妖精の国から来た妖精で妖精ランクを上げにきた妖精だぞ」
「へぇ」
「反応うすっ!もっと驚くとかしろよ。この狭いマンションの住人め!」
「はいはい。驚いた。でも、俺と吉永さんはもう付き合ってるし、俺の力で幸せにしたいと思ってるよ」
「……。けっ。勝手にやってろ」
妖精はそう言って消えた。残されたペアリング。俺はため息をついてそれをポケットにしまい込んだ。
まさか空き巣か!? 警戒しながらゆっくりと部屋に近づきそっと室内のドアを開けると、そこには妖精小僧がいた。
「よお、副担の長山。調子はどうだ?俺様が来てやったぞ」
こいつは吉永トモヨさんの妹で俺の生徒の吉永ミサキさんのそばにいる妖精だ。
入学式のときからこいつの姿がミサキさんの側を飛んでいた。この妖精小僧は学校の授業妨害などすることがなく、俺も他の人には見えていないものと話して変人扱いされたくはない。だから互いに干渉しなかった。
それが吉永さんからお礼のクッキーをもらったすぐ後にこいつが現れて「俺にクッキーを寄越せ」と言う。こいつをうっかりはたき落としてしまってから、俺の前に現れてちょっかいをかけてくるようになった。
「お前がいるとはいえ、せめて鍵だけはかけておいてくれ。他の奴には見えないんだろう?これじゃあ空き巣に入られる」
「入ったところで盗られる物はないじゃんかよ。せーぜーエロ本か?」
「そういう問題じゃない。それにミサキさんはトモヨさんが帰るまで留守なんだろ。だったら早く帰れっ」
手で追い払うがフワリと避け、俺の周りを一周して顔の前に来た。
「エロ本は否定しないのか。つうか、お前、俺様が来たのに失礼だな。せっかく来たのに。それとミサキなら大丈夫だ。あの家には俺様が結界を張ってるからな」
「結界って、・・・・・・頭が痛くなってきた」
目の前にいる妖精と話す自分も大概だが、結界なんてどこのゲームの世界だ。
「まあまあ。それより今日はいいものを持ってきた。ほれっ」
奴は小さな袋にどういいう仕組みで入っているのか分からないが明らかに袋に入らないサイズの何かを取り出してテーブルの上に投げ出す。それは小さな箱で中身は……。
「指輪?しかもペアリングじゃないか」
「そうだ。これでミサキの姉ちゃんである糸目姉貴に明日にでもプロポーズしろ。つまり姉貴と仲良く結婚して夫婦になれ」
「はぁ!?」
「糸目姉貴は恋愛初心者だ。攻略は容易いぞ。そこでだ。明日、仕事場に迎えに行ってデートしてキスして、指輪を渡してプロポーズ。完璧だ」
何が完璧だ。簡単に言っているがプロポーズにたどり着くまで一体どれくらいのカップルが苦労し、破局していると思っているんだ。
それになぜ妖精が俺の前にいきなり現れて吉永さんとの仲を深めようとするのかも分からない。
「吉永さんは俺の大切な人だから仲をかき混ぜるようなことをするな。人外が人間に干渉してどうする」
「お前の気持ちなんか俺様には関係ないね。それに俺は人間じゃないからお前らの考える理なんて興味ないしな」
「質問を変えるぞ。なんでペアリングを用意したり、吉永さんが買い物をするスーパーを俺に教えてきたんだ」
「ミサキの『姉ちゃんに幸せになって欲しい』って想いを叶えるためさ。ちょうどいいタイミングでお前が糸目姉貴を意識してたから手っ取り早くひっつくように狙った」
たしかにこいつに言われた場所に行けばタイミングよくトモヨさんに会えた。小僧が言ってることに嘘はないようだ。
「なんで一人の女の子の願いを妖精が叶えようとする」
「そりゃあミサキの幸せのためだからだよ。ミサキの幸せが溜まったら俺は妖精の国の国家試験に合格なんだ」
「妖精の国って……妖精の国に国家試験ってあるのか?」
「当たり前だろう。お前の目の前にいるのは妖精の国から来た妖精で妖精ランクを上げにきた妖精だぞ」
「へぇ」
「反応うすっ!もっと驚くとかしろよ。この狭いマンションの住人め!」
「はいはい。驚いた。でも、俺と吉永さんはもう付き合ってるし、俺の力で幸せにしたいと思ってるよ」
「……。けっ。勝手にやってろ」
妖精はそう言って消えた。残されたペアリング。俺はため息をついてそれをポケットにしまい込んだ。
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