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思いやり

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昼休みは八津野目さんに邪魔されてメッセージが送れなかったし、ミサキの学校で知り合ったお母さん達が心配してくれるメッセージがくるのでその返事をしたり忙しい日だった。それにミサキ達の帰りの方が早いから家まで送ってくれた長山さんに会うこともできなかった。

いつもの時間になると私はすぐに長山さんに電話をかけた。

「長山さん、こんばんは」
「ども、吉永さん」

いつもの挨拶にホッと安心する。長山さんの声は私にとって甘いミルクみたい。

「吉永さん達はあれから変わりはないですか?俺の方は、今日のことで人にいろいろ聞かれたりしたんで正しく説明しているんですけど・・・」
「実は私もなんですよ。ちょっと曲がって伝わっているんで訂正してはいるんですけど、面白がる人がいるみたいなんです。会社の支社の方まで噂が流れてるし、本当に噂ってやっかいですよね」
「あの、吉永さん達を傷つけようとする奴がいたら俺に話を回してください。私情は含みますけど俺が副担任ですし、教師として話すとそういう奴には結構、効果があるので・・・」

「あー、長山さんも同じようなことがあったんですか・・・もうっ、ミサキやコウ君がそんなことする訳ないのに」
「コウ君?島田浩介のことですか?」

なぜ吉永さんが・・・って呟きが聞こえてきた。

「あっ、コウ君は家が近所でミサキと小学生からの幼なじみなんですよ。だからその頃から家に行き来してて向こうの家でミサキがお世話になったり、私も彼の面倒を見たりしてたんですよ」

「・・・ま、まさか今も家に・・・?」
「さすがにこの時間にいませんよ。それに中学生くらいからコウ君は部活で忙しくて家に来ることがなくなりましたし」
「あっ、ああっ、そうですよね。子供は家にいる時間だ」

ため息混じりに呟かれた言葉。先生って生徒が夜遊びしてないか心配するのね。大変だわ。

「吉永さん、話は変わるんですが、次の日曜にカフェと図書館が一体化したところがあるんで良かったら俺と・・・」
「そこ、テレビで見て気になっていたんですよ。ぜひ行きましょう」

一も二もなく誘いに乗ると小さな笑い声が聞こえた。

「じゃあ十時に駅前で待ち合わせしましょう。図書館の後は二人でランチでも・・・」
「それなら私がランチのお店を探しますね。苦手な食べ物ってありますか?」
「いいんですか?俺はなんでも食べれるので吉永さんの好きな店に行きたいです」

社長の受け売りだけど仕事の接待も男と女も人間関係なのだから持ちつ持たれつがいい。と、社長がお酒を飲み飲み教えてくれた。聞いた当時はピンとこなかったけど今になって分かってきた。
私に学歴コンプはないとは言わないけど長山さんの隣に立てる女でいたいなって思う。

「美味しいお店、リサーチしておきます」
「じゃあ、また明日。明日は俺からこの時間に電話しますから」
「はい、じゃあ明日も楽しみにしてますね。おやすみなさい」
「おやすみ、吉永さん」

電話がきれたけど明日は長山さんから電話をしてくれる喜びで寂しくなくて胸があたたまる。


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