上 下
13 / 105

尋問的な質問

しおりを挟む
好きな人は誰かと聞かれて「みさきの副担任の先生よ」なんて言っていいものなの?副担任に姉が片想いしてるって気まずくない?

「その沈黙は無駄なんだから白状してよ」

興味津々の妹。この前はクッキーを渡しただけで私が副担任に片想いしていると早とちりして泣いてた妹に実はあの後に好きになりましたって言っていいの?

「ねえ、私が知ってる人?」

この質問に私は頷く。嘘は良くないし、きっと学校行事か何かでミサキを交えて会うし、すぐにバレてしまう。

「うーん、会社の人?」

首を横にふる私。会社の人はほぼおじさんとおじいちゃんなんだよ。支社は若い人がいるけどあんまり会わないし。私の会社は年上好きには天国かもだけど私の恋愛対象年齢から外れてる。

「朝日亭のイケメン店員さん?」

首を横にふるしかない私。イケメンが多いけどどの店員さんだろ?

「んー、他に私が知ってる人といえば学校の先生?」

ブンブンと音がなりそうなほど激しく首を縦に振る。

「……もしかして、氷川先生?めちゃくちゃライバル多いけど応援するよ!」

「えっと・・・・・・ううん。お姉ちゃんは先生のファンだし、先生と一日デート出来るなら私の稼ぎのありったけを貢ぐけど違うの」

口では冗談をいうけどこれ以上は核心にたどり着くからもう勘弁してください。

「お姉ちゃん、まさかね、この前は「妹の先生としかみてないよ」みたいに否定してたけど……長山先生?」

そのとおりだ。恋心を自覚した私は無言でコクリコクリとうなずいた。

「お姉ちゃん、言っちゃ悪いけど趣味悪いよ。やめときなよ。長山先生って暗いし目つきも悪いし怖いし。頭ボサボサで寝癖がひどいまま放課後までそのままだったこともあるし。なんか頼りないじゃん」

ぐさっ。

「分かってるわよ、見た目のことは!でも、長山先生って会う度に魅力が出てきて毎日メッセージや電話してると味わいがあって素敵なの。すごく紳士だし、優しく気遣ってくれるんだから頼りなくなんてないし」

「でも長山先生ってモテないし、まだ独身なんだよ。結婚願望もないみたいだし」
「お互いに独身ならお付き合いしてもいいじゃないの。結婚願望は私もないからずっと恋人でもいいし」
「うぐぐ」

今度はミサキが口を閉ざした。そして少し考える素振りを見せたあと、口を開いた。

「……それ、本気で言ってる?」
「もちろんよ」
「……そう。お姉ちゃんが本気なら何も言わないけど、先生がお姉ちゃんと遊び半分で付き合うなら私が許さないよ」
「どうしてよ。遊びから本気になってもらえたらチャンスがあるじゃないの」
「……関係あるよ」
「えっ?」
「だって私はお姉ちゃんの妹なんだもん。お姉ちゃんが遊ばれて悲しむ姿を見たくない」
「ミサキ……」

私の妹は本当に優しい子だわ。嬉しくて涙がこぼれそうになる。

「大丈夫よ。お姉ちゃん、ふられてもハートが強いから!」

私がミサキにギュッと抱きつくと「お姉ちゃんをふるなら先生でもゆるさないわよ!」と笑いながら怒るから私もちょっと泣いて笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

形だけの妻ですので

hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。 相手は伯爵令嬢のアリアナ。 栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。 形だけの妻である私は黙認を強制されるが……

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王妃さまは断罪劇に異議を唱える

土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。 そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。 彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。 王族の結婚とは。 王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。 王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。 ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。

公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます

柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。 社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。 ※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。 ※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意! ※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。

猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。 どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

処理中です...