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近所のスーパーで
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二日に一回は仕事終わりに買い物に行くスーパーの入り口で長山先生とばったりと会った。
「ども、吉永さんも買い物ですか」
「あ。こんばんは。仕事の帰りに私、よくこの店で買い物するんです」
挨拶の時に先生は視線を上に上げ口だけ笑った。前は先生も自然に笑ってたはずなのに今日はなんだか怖い笑い方。先生もお疲れなのね。
「そのカゴ、持ちましょうか?」
先生の視線が元に戻って私が手にするカゴに向いた。
「あっ、大丈夫ですよ。こうやってカートに乗せたら重くないんで」
私はカゴ置き場の側にあるカートを引っ張り出してその上にカゴを置いた。
「べ、便利なものがあるんですね」
先生の顔が引き攣っているけどそんなに衝撃的?スーパーならどこにでもあるカートなのに・・・
「お米とか重い物を乗せて移動できますし、お店の中で使えて便利ですよ」
「便利ですね」
「じゃあ、私はこれで・・・先生もゆっくり買い物してくださいね」
チラッと腕時計を見る。もうこんな時間。早く帰らないと今日はイージーZがゲスト出演する番組を見逃してしまう。
「あぁ・・・どうも・・・」
先に店の中に入り野菜売り場から順にセール品や割引商品をチェックしながらカゴに買う物を入れて進んで行く。
******
スーパーの行く先々で背中に視線を感じて商品を見るフリをして振り返るのだけど買い物中のおばさん達とたまにおじさんがいるくらいだった。
「あ、ミールかも」
姿を見せない主ならぬ私には姿が見えない主の妖精ミール。今日は買い物の日だと知ってオヤツチェックに来たのね。最近、ミサキは激辛系スナックにハマってるし、幾つか買っといてあげよう。
お菓子コーナーに行くと「期間限定!激辛スナック特集!!」としてワンコーナに赤と黒が敷き詰められていた。
「すごい量。どれがいいかな?あ、白と緑がある。これはワサビ味・・・」
辛い食べものをあまり食べないから、お菓子ですら激辛になると未知の世界だわ。
「あーの、吉永さん、も、辛いのっ好きなんですか?」
妙なイントネーションで話かけてきたのは長山先生。カゴには発泡酒が数本。先生はおつまみを見にきたのね。
「いえ、私は辛い物は食べると赤くなって汗だくになるから控えてるんですけどミサキがハマってるから幾つか買って帰ろうと思って」
「・・・・・・」
先生が静止する。視線が左上に向いている。私もそっちを見るけどよく見る飴やガムのコーナーだった。
「先生?」
「お、俺のおすすめはこれです。あとこれもっこれが珍しいのであったら買います!」
急に先生が動きだして、私のカゴに詰められていく激辛お菓子。
「これが胡椒強めでビールとよく合うんです。こっちは花椒が使われてて流行の痺辛系なんで他の激辛とは違う辛さなんで買った方がいいです」
1個か2個のつもりだったけど先生の評価付きで入れられるものだから止めるに止められずカゴにはみ出すほどになってしまった。棚のお菓子が1種類ずつ入ってる気がする。
「先生。も、もう大丈夫です。二週目に突入しそうです」
激辛好きっておすすめが始まると止まらなくなるのかしら。カゴいっぱいになっているし、さすがに私は先生を止めた。
「あ・・・・・・すいません!買い物の邪魔をしてっ・・・・・・」
「大丈夫ですよ。しばらくミサキとお菓子パーティーしますね」
私はチラッと腕時計に目をやる。まずい、ギリギリ間に合うかな。
「それじゃあ、私はこれで」
私は先生に頭を下げてレジに向かった。
家の玄関を開けると同時に番組が始まり、私は着替えも後回し。晩御飯前の小腹を満たすため激辛お菓子を片手にミサキと一緒にイージーZを応援するのだった。
「ども、吉永さんも買い物ですか」
「あ。こんばんは。仕事の帰りに私、よくこの店で買い物するんです」
挨拶の時に先生は視線を上に上げ口だけ笑った。前は先生も自然に笑ってたはずなのに今日はなんだか怖い笑い方。先生もお疲れなのね。
「そのカゴ、持ちましょうか?」
先生の視線が元に戻って私が手にするカゴに向いた。
「あっ、大丈夫ですよ。こうやってカートに乗せたら重くないんで」
私はカゴ置き場の側にあるカートを引っ張り出してその上にカゴを置いた。
「べ、便利なものがあるんですね」
先生の顔が引き攣っているけどそんなに衝撃的?スーパーならどこにでもあるカートなのに・・・
「お米とか重い物を乗せて移動できますし、お店の中で使えて便利ですよ」
「便利ですね」
「じゃあ、私はこれで・・・先生もゆっくり買い物してくださいね」
チラッと腕時計を見る。もうこんな時間。早く帰らないと今日はイージーZがゲスト出演する番組を見逃してしまう。
「あぁ・・・どうも・・・」
先に店の中に入り野菜売り場から順にセール品や割引商品をチェックしながらカゴに買う物を入れて進んで行く。
******
スーパーの行く先々で背中に視線を感じて商品を見るフリをして振り返るのだけど買い物中のおばさん達とたまにおじさんがいるくらいだった。
「あ、ミールかも」
姿を見せない主ならぬ私には姿が見えない主の妖精ミール。今日は買い物の日だと知ってオヤツチェックに来たのね。最近、ミサキは激辛系スナックにハマってるし、幾つか買っといてあげよう。
お菓子コーナーに行くと「期間限定!激辛スナック特集!!」としてワンコーナに赤と黒が敷き詰められていた。
「すごい量。どれがいいかな?あ、白と緑がある。これはワサビ味・・・」
辛い食べものをあまり食べないから、お菓子ですら激辛になると未知の世界だわ。
「あーの、吉永さん、も、辛いのっ好きなんですか?」
妙なイントネーションで話かけてきたのは長山先生。カゴには発泡酒が数本。先生はおつまみを見にきたのね。
「いえ、私は辛い物は食べると赤くなって汗だくになるから控えてるんですけどミサキがハマってるから幾つか買って帰ろうと思って」
「・・・・・・」
先生が静止する。視線が左上に向いている。私もそっちを見るけどよく見る飴やガムのコーナーだった。
「先生?」
「お、俺のおすすめはこれです。あとこれもっこれが珍しいのであったら買います!」
急に先生が動きだして、私のカゴに詰められていく激辛お菓子。
「これが胡椒強めでビールとよく合うんです。こっちは花椒が使われてて流行の痺辛系なんで他の激辛とは違う辛さなんで買った方がいいです」
1個か2個のつもりだったけど先生の評価付きで入れられるものだから止めるに止められずカゴにはみ出すほどになってしまった。棚のお菓子が1種類ずつ入ってる気がする。
「先生。も、もう大丈夫です。二週目に突入しそうです」
激辛好きっておすすめが始まると止まらなくなるのかしら。カゴいっぱいになっているし、さすがに私は先生を止めた。
「あ・・・・・・すいません!買い物の邪魔をしてっ・・・・・・」
「大丈夫ですよ。しばらくミサキとお菓子パーティーしますね」
私はチラッと腕時計に目をやる。まずい、ギリギリ間に合うかな。
「それじゃあ、私はこれで」
私は先生に頭を下げてレジに向かった。
家の玄関を開けると同時に番組が始まり、私は着替えも後回し。晩御飯前の小腹を満たすため激辛お菓子を片手にミサキと一緒にイージーZを応援するのだった。
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