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初・合コン

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*別の日*
ミサキが友達の家に泊まりに行って家にいない。ミサキは「私がいない時くらいハメを外して友達と飲みに行ったりしてね」と言ってくれたけど妹がいるから残業以外は定時に帰る人と定着してしまっている。それに仕事一筋だし、会社は飲み会の代わりにランチ会だし、社長夫婦に晩ごはんを誘われた時は必ずミサキも呼んでおいでと言ってくれる。はっきり言って飲みに行く誘い方も誘われ方も分からない私。

今日も真っ直ぐ帰ろうと思っていたら新人の後輩さんが「先輩、今日は予定ありますか?合コンの参加者が足りなくて探しているんですよ。二次会はムリ言いませんからちょっとだけ顔を出してもらえたら助かるんですけど」と言ってきてくれた。いつもなら断る合コンだけど今日は家でご飯を作って待っていてくれるミサキがいない。せっかく誘ってもらえたので二つ返事で参加させてもらうことにした。

さてさて初めての合コン。会場はオシャレ居酒屋で集まった女性陣は私以外は気合が入りすぎないように見せていながら気合いが入っている。一方の男性陣は知った顔のミサキの副担任を除いてオシャレなスーツでピリッとキメていた。

「あ、お久しぶりです」
「お久しぶりです。妹がお世話になってます」

一番手前側の端の席に着いて早々に一番奥の席に座っている副担任の先生から挨拶をされたので私も挨拶を返した。

「あれ?2人は知り合い?」

「彼女の妹さんの副担任を僕が……」

「そうなんですよ。私の妹は高校生なんで、先生のお世話になってるんです。先日、授業参観で先生と会って、まさかここでも会うなんてびっくりしました」

副担先生、副担先生とミサキは言うし、私も今日の一度しか会ったことがないから名前を覚えていなくて彼を先生と呼ぶ。先生と言われて嫌がる人はあまりいないし、これから自己紹介があるはずだからしっかり聞いておきましょう。

全員が揃うと予想通り自己紹介が始まって副担任の
先生は「長山 龍一」だと分かった。年は私より一つ上。男性の皆とは友達なのだとか。みんながいろいろと喋る中で私は自然と聞き役になっていて、長山先生はちびちびと酒と料理を味わっていた。
お酒と話が進んだところで席替えが提案された。

「じゃあ吉永っちは長の隣ね!教師と生徒の姉の親睦を深めちゃって!私はイケメン男子達の間にど真ん中~!」

私の隣に座り、お酒で赤くなった顔で合コンメンバーの女性が言った。それをみて周囲が楽しそうに笑う。あの子、お酒に弱いのかな?大丈夫かな?

「席替えする前にお水飲んどこ。はい。ちょっとずつ飲もうね」

そう思った途端に私の手と口が勝手に動いて誰もまだ手をつけていないお冷を彼女にもたせていた。

「あーい!あははは~、おみず~」

勢いよくグビグビと水を飲んでいる。このまま倒れるんじゃないかとオロオロする私。そんな私や酔っている人をみて無邪気に笑っている周りの人達に少し寒いものを感じてしまった。

長山先生がゆらりと立ち上がった。

「明日も早いのでこれで。注文代、割り勘で幾らに?」

「あっ、食べ飲み放題コースだから3500円よ」

合コンの幹事がそう言うと先生は財布からきっちり3500円を出して幹事に渡した。

「じゃあお金は支払うのでこれで失礼します。吉永さんも妹さんが待ってるでしょ。早く帰ったほうがいいですよ」


「あ……、はい。でも……」

ちらりと隣の女の子を見ると私を見つめている。男性達に悟られないように彼女の口だけが動いた。
その口の動きから伝えられた意味で私は彼女が酔ったフリをしているのに気がついた。
なるほど。酔って距離を近づける作戦なのね。どうやら私の方が合コンの空気を読めていないようだ。

「私も妹が家で留守番をしてるから名残惜しいんですけどそろそろ帰りますね。ごちそうさまでした」

本当はミサキがいないけど先生の助け舟もあったし帰る口実にさせてもらおう。私は財布を取り出してお金を幹事に渡した。

「えー、先輩まで帰るんですか?寂しいじゃないですか~」
「二人共帰るのかよ。盛り上がってきたのに残念だな~」

明るい性格の男性と後輩が別れを惜しんでくれるけどもう合コンはお腹いっぱいです。ありがとうございました。

「ごめんなさいね。今度参加させてもらう時はゆっくりするから」

笑いながら皆に謝って、次の誘いなんてないと思うけど形式的な約束をした。先に歩き出した長山先生の後を追うように私も席を離れた。
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