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アモンと別れ、買い物をしてから家に帰って一人になると……やっぱり、あいつに食べられる前に捕まえるべきだった。と思ったり、悪魔が関わっていると知られないよう、波風を立てないためにはあれで良かったんだ。と思ったりする。
でもロードリック様はどう思うだろう。僕は学校で人間を騙すための心理学をかじったけど赤点を取らなかっただけで苦手だった。
「ただいま。アレックス」
「おかえり!」
ロードリック様の声に僕はリビングから飛び出した。
「無事だったんだね!良かった!」
僕は彼の手を摑んで安心した顔をすると驚いた顔をされた。
「どうしたんだ?なにか怖い事があったのか?」
「あ、ううん。なんにもないよ」
落ち着いて考えれば何もないのが当たり前だ。僕はアモンと一緒に、誰にも言わずに行動したんだから。
「それなら良いんだが、なにかあれば相談してくれ」
「うん。それより今日は買ってきたおかずでいいかな?」
「ああ。毎日作るのは大変だろ。手作りにこだわらなくていい。食費が足りないならもっと増やそうか」
「ううん。大丈夫。僕のおやつを買っても足りるよ」
「お金のことも遠慮せず相談してくれ。アレックスにばかり家事の負担をさせてすまないな」
ロードリック様のためならなんでもしたいけど……今日みたいにもやもやして動きたくない日がある。
買ったおかずで良いって言われて僕はホッとした。
それからは新婚らしく蜜月を過ごしていた。
聖女を襲った研究所破壊の犯人は、当然見つからず、騎士団は懸賞金をかけている。でも、壊れた部分以外、研究所の方は通常通りだ。ロードリック様は今も働いている。
夕食の時、ロードリック様に「ちょっと気になることがあって……」と前置きして話した。
「この前、家に泥棒が入ったり、研究所が襲われた事件ってどうなりました?」
犯人は知ってるんだけど、正直なことは隠すと決めたから言えない。
「それがまだ進展していないらしい。
んー、研究所と家の往復ばかりのロードリック様は、ニュースになったことくらいしか知らなかった。
「そうですよね、うん」
「アレックス、俺も聞きたいんだが、これから先、人間の友人を作ろうと思うか?」
「人間の友達?」
ご近所とは挨拶くらいだ。たまに散歩している犬に吠えられて、飼い主さんに謝られたりするけど……それくらいだ。
「あ、ああ、誤解しないで欲しい。君の友人関係を見張るつもりはないんだ。だが、この家には研究所に置ききれない危険な物を預かっている。不法侵入をされた日から結界は強化しているが、家の外の結界は物理や魔法の攻撃からの防御だ。それに『アレックスや俺がここに住んでいる』という情報があやふやになる、軽い認識阻害の魔法だ」
「うん。郵便物やお客様が来た時に困らないように、軽くしてるんだよね」
「ああ。いろいろとあったから考える事が増えて、ふと、アレックスに人間の友達ができたかもしれないと思ったんだ。もし、招き入れるほどの仲になったら、この認識阻害魔法は人によっては強く反応する場合もある。だから、外しておくべきかと……そう思ったんだ」
「今は大丈夫だよ。僕の友達はちゃんと来れるし」
今のところ、僕を訪ねてくれるのはアモンだけだ。
アモンは子供の頃から、自分で稼ぐお金にしか興味がない。だから他の悪魔と違って派閥にこだわらない。
一応、派閥に入ってるらしいけど、誰にも、僕にも教えてくれない。彼は「金がもらえるんやったら派閥関係なく仕事うけたるで~」ってスタンスだからね。
だから、僕はそんなアモンとは親しくなれた。
アモンがこの家に来れるなら結界はこのままで良いと思った。
「アレックス」
名前を呼ばれ、真剣に見つめられるのは好きだけど今は後ろめたい。
「な、なに?」
「不安だろうが心配しなくていい。この家には窓やドアを壊された時に音がなって、警備会社に通報する魔法も家にかけてあるんだ」
ああ、安心させたいのは僕の方だよ。犯人はもう食べられていないってことを言ってあげたい。でもごめんね。ロードリック様。僕は魔族なんだ。隠してることは全部死んでも言わないよ。その代わり、全部僕をあげるよ。
「色々とあったが、もうすぐ結婚して一年になるな。結婚記念日に合わせて旅行に行こうか」
「旅行、ですか」
「人間のイベントで、新婚旅行という特別なイベントがあるんだ。でも、俺達はしなかったから、一緒に行かないか。二人の仲を深めるために、綺麗な景色をみたり、旅行先の美味しい物を食べるんだ」
「美味しいモノ……」
「お土産も買おう。美味しい食べ物のお土産もあるんだ」
「行く!行きたい!」
僕はぶんぶんと頭を縦に振った。
「アレックスは食べるのが好きだな」
「えへへ。ロードリック様と一緒に御飯を食べると美味しくなるから、旅でのご飯がもっと美味しくなるよ」
「料理が美味い旅行先を探しておこう。一緒に美味しい物をたくさん食べよう」
「うん!」
旅行、楽しみだなあ。
でもロードリック様はどう思うだろう。僕は学校で人間を騙すための心理学をかじったけど赤点を取らなかっただけで苦手だった。
「ただいま。アレックス」
「おかえり!」
ロードリック様の声に僕はリビングから飛び出した。
「無事だったんだね!良かった!」
僕は彼の手を摑んで安心した顔をすると驚いた顔をされた。
「どうしたんだ?なにか怖い事があったのか?」
「あ、ううん。なんにもないよ」
落ち着いて考えれば何もないのが当たり前だ。僕はアモンと一緒に、誰にも言わずに行動したんだから。
「それなら良いんだが、なにかあれば相談してくれ」
「うん。それより今日は買ってきたおかずでいいかな?」
「ああ。毎日作るのは大変だろ。手作りにこだわらなくていい。食費が足りないならもっと増やそうか」
「ううん。大丈夫。僕のおやつを買っても足りるよ」
「お金のことも遠慮せず相談してくれ。アレックスにばかり家事の負担をさせてすまないな」
ロードリック様のためならなんでもしたいけど……今日みたいにもやもやして動きたくない日がある。
買ったおかずで良いって言われて僕はホッとした。
それからは新婚らしく蜜月を過ごしていた。
聖女を襲った研究所破壊の犯人は、当然見つからず、騎士団は懸賞金をかけている。でも、壊れた部分以外、研究所の方は通常通りだ。ロードリック様は今も働いている。
夕食の時、ロードリック様に「ちょっと気になることがあって……」と前置きして話した。
「この前、家に泥棒が入ったり、研究所が襲われた事件ってどうなりました?」
犯人は知ってるんだけど、正直なことは隠すと決めたから言えない。
「それがまだ進展していないらしい。
んー、研究所と家の往復ばかりのロードリック様は、ニュースになったことくらいしか知らなかった。
「そうですよね、うん」
「アレックス、俺も聞きたいんだが、これから先、人間の友人を作ろうと思うか?」
「人間の友達?」
ご近所とは挨拶くらいだ。たまに散歩している犬に吠えられて、飼い主さんに謝られたりするけど……それくらいだ。
「あ、ああ、誤解しないで欲しい。君の友人関係を見張るつもりはないんだ。だが、この家には研究所に置ききれない危険な物を預かっている。不法侵入をされた日から結界は強化しているが、家の外の結界は物理や魔法の攻撃からの防御だ。それに『アレックスや俺がここに住んでいる』という情報があやふやになる、軽い認識阻害の魔法だ」
「うん。郵便物やお客様が来た時に困らないように、軽くしてるんだよね」
「ああ。いろいろとあったから考える事が増えて、ふと、アレックスに人間の友達ができたかもしれないと思ったんだ。もし、招き入れるほどの仲になったら、この認識阻害魔法は人によっては強く反応する場合もある。だから、外しておくべきかと……そう思ったんだ」
「今は大丈夫だよ。僕の友達はちゃんと来れるし」
今のところ、僕を訪ねてくれるのはアモンだけだ。
アモンは子供の頃から、自分で稼ぐお金にしか興味がない。だから他の悪魔と違って派閥にこだわらない。
一応、派閥に入ってるらしいけど、誰にも、僕にも教えてくれない。彼は「金がもらえるんやったら派閥関係なく仕事うけたるで~」ってスタンスだからね。
だから、僕はそんなアモンとは親しくなれた。
アモンがこの家に来れるなら結界はこのままで良いと思った。
「アレックス」
名前を呼ばれ、真剣に見つめられるのは好きだけど今は後ろめたい。
「な、なに?」
「不安だろうが心配しなくていい。この家には窓やドアを壊された時に音がなって、警備会社に通報する魔法も家にかけてあるんだ」
ああ、安心させたいのは僕の方だよ。犯人はもう食べられていないってことを言ってあげたい。でもごめんね。ロードリック様。僕は魔族なんだ。隠してることは全部死んでも言わないよ。その代わり、全部僕をあげるよ。
「色々とあったが、もうすぐ結婚して一年になるな。結婚記念日に合わせて旅行に行こうか」
「旅行、ですか」
「人間のイベントで、新婚旅行という特別なイベントがあるんだ。でも、俺達はしなかったから、一緒に行かないか。二人の仲を深めるために、綺麗な景色をみたり、旅行先の美味しい物を食べるんだ」
「美味しいモノ……」
「お土産も買おう。美味しい食べ物のお土産もあるんだ」
「行く!行きたい!」
僕はぶんぶんと頭を縦に振った。
「アレックスは食べるのが好きだな」
「えへへ。ロードリック様と一緒に御飯を食べると美味しくなるから、旅でのご飯がもっと美味しくなるよ」
「料理が美味い旅行先を探しておこう。一緒に美味しい物をたくさん食べよう」
「うん!」
旅行、楽しみだなあ。
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