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聖女との交流内容だけなら問題なしだと思う。でも体の瘴気を浄化されちゃうし、向こうも浄化の力が減ってしんどかったと思う。お互いに魔力の影響に理解がないと攻撃を受けたと勘違いしそうだよ。
そろそろ終わりかなと思っている時に瘴気が這い寄る気配を感じた。魔界ではよくあることなんだけど人間界では珍しい。それに皆の表情が一瞬で険しくなった。
「聖女様、どうやらこの研究所に少々厄介なお客様が来たようです」
「え、ええ。私も感じます。」
聖女は不安そうな顔で護衛達の方をみたら彼等は静かにうなずいた。
所長さんは僕やロードリック様を見たような体の向け方をした。
「ヴァン君のところへ来た時と違って、本格的に来たようだね」
「あの時の侵入者が?分かるんですか?」
「君の家の見回りをした時に秘密の魔法を使ってね。泥棒の魔力の残滓を採取して、こっちに向かってきたらすぐわかるように仕掛けていたんだよ」
ロードリック様の問いに所長さんはさらりと答える。そういえばお父様がそういう魔法が得意で失くし物を探すのが
得意だったなぁ。
「今日を狙って来るとは……予想外だったけど向こうは聖女様が来る日を狙ってたのかな。ヴァン君の家に侵入したのは研究員の実力を調べるためだったのかもしれない。とりあえず聖女様達はこちらへ。シェルターに非難してください」
所長さんが左手を振ると空間が歪んで扉が出てきた。
「聖女様、こちらへ。別の研究所のシェルターに繋がっています。中のドアを開けたら出られますので安心してください。このドアは閉じるのでこの研究所から侵入者が向こうへは行けないようにしておきますから」
「え、ええ……でも私にできることがあれば一緒に戦いたいんです。どうか……」
「いけません。聖女様。貴女がここに残るのなら彼女たちもここに残ってしまいます」
護衛がそう言った。彼のいう彼女達は聖女のお付きの人達だ。
「どうか聖女様だけでもお逃げください。私達が聖女様のかわりに戦います」
「そんな!駄目よ!残って戦うのは私だけでいいわ!」
「はいはい!ダメダメ!聖女様も貴女達も残っちゃ駄目!」
今更だけど非常ベルが鳴る。
「侵入されたみたいだ。さあ、聖女様達は早く非難して。戦闘訓練を受けてるのは騎士だけじゃないよ。呪いを払うために戦う研究員がそろっているのがこの研究所なんだから」
「嫌です!私が、私が残って戦えば!」
聖女が所長さんに食い下がる。ロードリック様が護衛に目配せをすると護衛がひょいっと聖女を抱き上げた。
「きゃっ!?何をするのですか!?」
「暴れないでください。聖女様。我々の任務は貴女を守ること。どうか、お願いします」
護衛は聖女を抱えたまま所長さんの開けたドアをくぐって行く。
「嫌です!下ろして!ヴァンヴァイド様!」
避難させられまいと手を伸ばす聖女に僕は自然と体が動いていた。
「アレックス!」
ロードリック様が僕を咎めるように呼んだ。
「ていっ!」
「きゃっ!?」
ロードリック様に心配してもらえるなんてずるい!大人しく向こうに非難しててよ。と思って聖女に向かって眠りの魔法を飛ばしたのだけど効かなかった。
でも僕が眠り魔法をかけたことは分かったらしく、ショックそうな顔をしていた。
「さあ、聖女の付き添いの人達も入って。入ってくれないなら僕が眠らせてしまうよ。その間に運んじゃうからね。僕は淫魔だから副作用が出ても知らないよ」
淫魔の魔法の副作用と聞いたら誰でも恥ずかしいことを考えちゃうよね。お付きの人は女の人がほとんどだから顔を青くして所長さんが出したシェルターに繋がるドアをくぐった。
「アレックス、君も……」
「大丈夫です。それにもう……」
最後の一人が通るとドアが小さくなって音を立てずに消えてしまった。空間を切り裂いて別の場所と繋げるって高度な魔法だ。長くは持たないし、僕はロードリック様と一緒に残って戦うって決めている。
聖女の清浄な気にやられた僕にとって瘴気はエネルギーになるものだし、ちょうど欲しいと思っていたんだ。
「ヴァン君、悩んでる暇はないよ」
「……ああ」
所長さんは一度こちらを見ると研究室の方に向き直って手を前にかざした。その手を中心に大きな魔法陣が広がっていく。そして鏡が壁一面に現れた。そこには人の姿が映し出されている。
どの鏡にも数人の人と魔物が交戦している姿が写っていた。
「皆!僕の支持が無くても持ち場に着いてるね。現在エリア2の壁を突き破られ侵入者あり。エリア1と3はさらなる侵入と突破に備えて!至急エリア5から増援を」
所長さんが鏡に向かって叫ぶと向こう側から返事が返ってきた。
「了解した!」「任せてください」「ラジャー!」
「さあ、ヴァン君はアレックス君を連れて持ち場に行こうか」
顔がないから分からないけど所長さんの声はこんな状況だけど落ち着いていた。
「アレックスはここに残していきます」
ロードリック様は怒りが滲む声だし表情も怒ってる。ヒヤリとするけど僕はここで逃げたくない。
「気持ちは分かるし、僕も彼を逃がそうとした。でも彼が逃げないと判断したなら戦ってもらうよ。彼の特殊な力が今は必要だ」
「ですがあれはアレックスの力だとまだ確定したわけじゃ」
「いきましょう。ロードリック様!僕、魔王様を守るための戦闘訓練もしてきたんです。危なくなったら僕がロードリック様を守りますから!」
二人の話はよく分からないけど僕がむふんっと鼻息荒くぽよっとした胸を叩くとロードリック様は顔を歪めてため息をついた。
「だってさ。頼もしいね、ヴァン君」
「アレックスは俺の大切な家族だ。俺が守るが絶対に危ないことはしないでくれ」
「大丈夫です!僕、瘴気があればすぐに回復できるんで!」
「二人は、まずは壁が破られたエリア2に向かって。魔物を辿っていけば召喚陣があるはずだ。他の研究員も向かっているはずだから協力して、まずはそれを壊そう」
「わかりました!」
所長さんに言われるままロードリック様と一緒にエリア2と呼ばれる研究エリアに向かった。
そろそろ終わりかなと思っている時に瘴気が這い寄る気配を感じた。魔界ではよくあることなんだけど人間界では珍しい。それに皆の表情が一瞬で険しくなった。
「聖女様、どうやらこの研究所に少々厄介なお客様が来たようです」
「え、ええ。私も感じます。」
聖女は不安そうな顔で護衛達の方をみたら彼等は静かにうなずいた。
所長さんは僕やロードリック様を見たような体の向け方をした。
「ヴァン君のところへ来た時と違って、本格的に来たようだね」
「あの時の侵入者が?分かるんですか?」
「君の家の見回りをした時に秘密の魔法を使ってね。泥棒の魔力の残滓を採取して、こっちに向かってきたらすぐわかるように仕掛けていたんだよ」
ロードリック様の問いに所長さんはさらりと答える。そういえばお父様がそういう魔法が得意で失くし物を探すのが
得意だったなぁ。
「今日を狙って来るとは……予想外だったけど向こうは聖女様が来る日を狙ってたのかな。ヴァン君の家に侵入したのは研究員の実力を調べるためだったのかもしれない。とりあえず聖女様達はこちらへ。シェルターに非難してください」
所長さんが左手を振ると空間が歪んで扉が出てきた。
「聖女様、こちらへ。別の研究所のシェルターに繋がっています。中のドアを開けたら出られますので安心してください。このドアは閉じるのでこの研究所から侵入者が向こうへは行けないようにしておきますから」
「え、ええ……でも私にできることがあれば一緒に戦いたいんです。どうか……」
「いけません。聖女様。貴女がここに残るのなら彼女たちもここに残ってしまいます」
護衛がそう言った。彼のいう彼女達は聖女のお付きの人達だ。
「どうか聖女様だけでもお逃げください。私達が聖女様のかわりに戦います」
「そんな!駄目よ!残って戦うのは私だけでいいわ!」
「はいはい!ダメダメ!聖女様も貴女達も残っちゃ駄目!」
今更だけど非常ベルが鳴る。
「侵入されたみたいだ。さあ、聖女様達は早く非難して。戦闘訓練を受けてるのは騎士だけじゃないよ。呪いを払うために戦う研究員がそろっているのがこの研究所なんだから」
「嫌です!私が、私が残って戦えば!」
聖女が所長さんに食い下がる。ロードリック様が護衛に目配せをすると護衛がひょいっと聖女を抱き上げた。
「きゃっ!?何をするのですか!?」
「暴れないでください。聖女様。我々の任務は貴女を守ること。どうか、お願いします」
護衛は聖女を抱えたまま所長さんの開けたドアをくぐって行く。
「嫌です!下ろして!ヴァンヴァイド様!」
避難させられまいと手を伸ばす聖女に僕は自然と体が動いていた。
「アレックス!」
ロードリック様が僕を咎めるように呼んだ。
「ていっ!」
「きゃっ!?」
ロードリック様に心配してもらえるなんてずるい!大人しく向こうに非難しててよ。と思って聖女に向かって眠りの魔法を飛ばしたのだけど効かなかった。
でも僕が眠り魔法をかけたことは分かったらしく、ショックそうな顔をしていた。
「さあ、聖女の付き添いの人達も入って。入ってくれないなら僕が眠らせてしまうよ。その間に運んじゃうからね。僕は淫魔だから副作用が出ても知らないよ」
淫魔の魔法の副作用と聞いたら誰でも恥ずかしいことを考えちゃうよね。お付きの人は女の人がほとんどだから顔を青くして所長さんが出したシェルターに繋がるドアをくぐった。
「アレックス、君も……」
「大丈夫です。それにもう……」
最後の一人が通るとドアが小さくなって音を立てずに消えてしまった。空間を切り裂いて別の場所と繋げるって高度な魔法だ。長くは持たないし、僕はロードリック様と一緒に残って戦うって決めている。
聖女の清浄な気にやられた僕にとって瘴気はエネルギーになるものだし、ちょうど欲しいと思っていたんだ。
「ヴァン君、悩んでる暇はないよ」
「……ああ」
所長さんは一度こちらを見ると研究室の方に向き直って手を前にかざした。その手を中心に大きな魔法陣が広がっていく。そして鏡が壁一面に現れた。そこには人の姿が映し出されている。
どの鏡にも数人の人と魔物が交戦している姿が写っていた。
「皆!僕の支持が無くても持ち場に着いてるね。現在エリア2の壁を突き破られ侵入者あり。エリア1と3はさらなる侵入と突破に備えて!至急エリア5から増援を」
所長さんが鏡に向かって叫ぶと向こう側から返事が返ってきた。
「了解した!」「任せてください」「ラジャー!」
「さあ、ヴァン君はアレックス君を連れて持ち場に行こうか」
顔がないから分からないけど所長さんの声はこんな状況だけど落ち着いていた。
「アレックスはここに残していきます」
ロードリック様は怒りが滲む声だし表情も怒ってる。ヒヤリとするけど僕はここで逃げたくない。
「気持ちは分かるし、僕も彼を逃がそうとした。でも彼が逃げないと判断したなら戦ってもらうよ。彼の特殊な力が今は必要だ」
「ですがあれはアレックスの力だとまだ確定したわけじゃ」
「いきましょう。ロードリック様!僕、魔王様を守るための戦闘訓練もしてきたんです。危なくなったら僕がロードリック様を守りますから!」
二人の話はよく分からないけど僕がむふんっと鼻息荒くぽよっとした胸を叩くとロードリック様は顔を歪めてため息をついた。
「だってさ。頼もしいね、ヴァン君」
「アレックスは俺の大切な家族だ。俺が守るが絶対に危ないことはしないでくれ」
「大丈夫です!僕、瘴気があればすぐに回復できるんで!」
「二人は、まずは壁が破られたエリア2に向かって。魔物を辿っていけば召喚陣があるはずだ。他の研究員も向かっているはずだから協力して、まずはそれを壊そう」
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