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僕はローリック様の部署にいた。
聖女がお付きの人と護衛を連れてやって来た。彼女たちをちょっと離れた席でみたいたのだけど、聖女は前に比べてお化粧が濃いなあって思った。けばけばしい方じゃなくて厚塗りって意味の方で。
そしてキラキラした雰囲気が消えて、お客様が減ってきたお姉様達のような陰りが見えた。
「皆様、こんにちは。所長様をはじめ、皆様にお会いできて光栄ですわ」
スカートを摘んでご挨拶する姿はマナーの本になりそうなくらい綺麗だ。
「ようこそいらっしゃいました。聖女様。この研究所の所長をさせてもらっています。名も姿もないためゴーストと呼ばれておりますので聖女様も気兼ねなくそうお呼びください」
所長さんも丁寧にお辞儀をする。服が動いているだけに見えない、ちゃんとしたお辞儀だった。
僕と聖女様の交流は後半だから、ロードリック様の席の隣で待機。
他の人達はいつも通り仕事をしてて、研究所の案内は所長さんがするんだって。
てっきり全員で並んでご挨拶すると思ったんだけどそこは魔界とは違うんだね。
所長さんが聖女達を連れて別室に向かっていく。やましいことはないんだけど、僕は気が付かれないようにロードリック様の影に隠れてみていた。
「聖女様って美人ね~」
「なんか空気が綺麗になった気がするよ」
聖女様が部屋を出た途端に皆の緊張も解けたのかそんな声が上がった。
聖女は浄化の能力があるみたいで研究所に漂う瘴気を減らしてしまうから、人間には気分が良くなるみたいだ。
僕の方は聖なる力が少し漂っているから濁った空気に感じちゃうけど敵対しちゃうから黙っておこう。
「ローリック様、彼女、元気がなさそうでしたね」
皆、聖女が素敵だって言うから水を差さないようにそおっとロードリック様にだけ伝えた。
「そうだったか?俺には普通に見えたが……所長が透明人間だからきっと彼女は怖かったんだろうな」
それもあるかもしれないけど……ロードリック様は聖女を良く見ていなかったから気が付かなかったみたい。
予定の時間に所長さんの案内が終わったと連絡を受け、一足先に僕達は聖女と交流するため別室へ移動した。
座って待つことになったのだけどなんだか落ち着かない。瘴気が減っていくのと同時に光の力を感じるせいかな。
結婚式の時はここまでじゃなかったんだけどなぁ……。
「聖女様、こちらでございます」
聖女の護衛が扉を開け、聖女様が一歩踏み入れた途端、ゾワッと背筋が震えた。研究所に来たときに比べて彼女の力が強くなっている。この研究所には呪われた物が保管してあるってローリック様のお仕事の話で聞いたことがあるし、聖女様が呪いを祓ったことで力がついたのかもしれない。
「ロードリック様……」
机の下でそっとロードリック様の手を握るとぎゅっと握り返してくれて、僕を安心させるために小さく笑ってくれた。
席に座ったのは聖女と所長さんだけ。他の人は彼女から少し離れた場所に立っている。
「お久しぶりですね。ヴァンヴァイド様御フウフに会えて光栄ですわ。この度は私のわがままを受け入れていただきありがとうございます」
こ、こういう時はお父様達みたいな悪魔紳士らしく振る舞えるよう頑張らなきゃ。
「僕も聖女様から交流を望まれて光栄です。どうぞよろしくお願いします」
僕は頭を下げて笑顔で聖女へ挨拶をした。
「ええ、よろしくお願い致しますわ……ヴァンヴァイド様」
僕、ロードリック様と結婚したから姓がヴァンヴァイドになったけどそう呼ばれるのって初めてかも。
認められてて嬉しいけど聖女様の表情が良くなさそうなんだよね。お化粧でわかりにくいけど顔色もあんまりいい感じじゃないかも。
「聖女様。もしかしてお加減でも悪いのですか?」
「どうしてそう思いますの?」
コテンと音が出ちゃいそうな首のかしげ方をして聞かれたから僕も少し首をかしげた。
「いえ、その、なんとなく……」
会話の切り出しに困って聞いちゃったから変に思われちゃうかも……。
「ふ……ふふふ」
あれ?笑われちゃった?
「ごめんなさい。ヴァンヴァイド様ったら、可愛らしい方だと思って」
お父様達やお姉様達から『可愛い!』って言われるし僕もそう思っているし、ロードリック様に可愛いって言われるのは最高だけどね。人間の言う僕への可愛いって「マスコット的可愛さ」なんでしょ?そういうのはちゃんとテレビで勉強したんだからね。でも悪い気持ちじゃないからいいや。
「ふふ、失礼ながら魔族はもっと怖い存在だと思っておりましたの。魔界出身なのでしょう?優しさとは無縁ではないのですね」
聖女様はクスクス笑いながらそう言った。
「あ、魔族ってそ、そう思われちゃうのかな。でも人間界に行った悪魔は皆『人間は怖い』って言ってましたけど……お互いに知らないせいかもですね」
まあ人間達にしてみれば魔族は怒りっぽいし強い力を操るから恐いだろうけど……
「私の侍女も『人間は恐ろしい生き物だ』と常々申しておりましたわ……」
「まあ、善も悪も持っているのが人間ですからね。そこにつけ入る魔族に破滅させられた人間が『魔族は怖い』って言うんでしょうし反対もまたありますよ。でもこれから若い人間と若い魔族が交流を深めれば協力的な関係になれますよ」
所長さんがするっと話に入ってきた。良かった。聖女のお付きの人達は物みたいに待機しているし、所長さん達もそうするのかと思ったよ。
「僕も人間界に来て人間の優しさを知ったから、人間っていいなって思いました」
ロードリック様と結婚した日、美味しいチョコレートやジュースを貰ってすごく嬉しかったなぁ。他にもいっぱい優しくしてもらったよ。
「そうなのですね……私も人から優しくしてもらうと心が温かくなり、もっと頑張ろうと思いますのよ」
聖女様は今までみたことがないくらいに柔らかく微笑んでいる。この表情、きっと恋をしているからだね!僕はローリック様一筋だから自信あるよ。
仲良くなったら恋のお話もできるかなぁって思いながら、話が魔族が使う結界の話になって、僕が話せる範囲のことを聖女とお話をした。
聖女がお付きの人と護衛を連れてやって来た。彼女たちをちょっと離れた席でみたいたのだけど、聖女は前に比べてお化粧が濃いなあって思った。けばけばしい方じゃなくて厚塗りって意味の方で。
そしてキラキラした雰囲気が消えて、お客様が減ってきたお姉様達のような陰りが見えた。
「皆様、こんにちは。所長様をはじめ、皆様にお会いできて光栄ですわ」
スカートを摘んでご挨拶する姿はマナーの本になりそうなくらい綺麗だ。
「ようこそいらっしゃいました。聖女様。この研究所の所長をさせてもらっています。名も姿もないためゴーストと呼ばれておりますので聖女様も気兼ねなくそうお呼びください」
所長さんも丁寧にお辞儀をする。服が動いているだけに見えない、ちゃんとしたお辞儀だった。
僕と聖女様の交流は後半だから、ロードリック様の席の隣で待機。
他の人達はいつも通り仕事をしてて、研究所の案内は所長さんがするんだって。
てっきり全員で並んでご挨拶すると思ったんだけどそこは魔界とは違うんだね。
所長さんが聖女達を連れて別室に向かっていく。やましいことはないんだけど、僕は気が付かれないようにロードリック様の影に隠れてみていた。
「聖女様って美人ね~」
「なんか空気が綺麗になった気がするよ」
聖女様が部屋を出た途端に皆の緊張も解けたのかそんな声が上がった。
聖女は浄化の能力があるみたいで研究所に漂う瘴気を減らしてしまうから、人間には気分が良くなるみたいだ。
僕の方は聖なる力が少し漂っているから濁った空気に感じちゃうけど敵対しちゃうから黙っておこう。
「ローリック様、彼女、元気がなさそうでしたね」
皆、聖女が素敵だって言うから水を差さないようにそおっとロードリック様にだけ伝えた。
「そうだったか?俺には普通に見えたが……所長が透明人間だからきっと彼女は怖かったんだろうな」
それもあるかもしれないけど……ロードリック様は聖女を良く見ていなかったから気が付かなかったみたい。
予定の時間に所長さんの案内が終わったと連絡を受け、一足先に僕達は聖女と交流するため別室へ移動した。
座って待つことになったのだけどなんだか落ち着かない。瘴気が減っていくのと同時に光の力を感じるせいかな。
結婚式の時はここまでじゃなかったんだけどなぁ……。
「聖女様、こちらでございます」
聖女の護衛が扉を開け、聖女様が一歩踏み入れた途端、ゾワッと背筋が震えた。研究所に来たときに比べて彼女の力が強くなっている。この研究所には呪われた物が保管してあるってローリック様のお仕事の話で聞いたことがあるし、聖女様が呪いを祓ったことで力がついたのかもしれない。
「ロードリック様……」
机の下でそっとロードリック様の手を握るとぎゅっと握り返してくれて、僕を安心させるために小さく笑ってくれた。
席に座ったのは聖女と所長さんだけ。他の人は彼女から少し離れた場所に立っている。
「お久しぶりですね。ヴァンヴァイド様御フウフに会えて光栄ですわ。この度は私のわがままを受け入れていただきありがとうございます」
こ、こういう時はお父様達みたいな悪魔紳士らしく振る舞えるよう頑張らなきゃ。
「僕も聖女様から交流を望まれて光栄です。どうぞよろしくお願いします」
僕は頭を下げて笑顔で聖女へ挨拶をした。
「ええ、よろしくお願い致しますわ……ヴァンヴァイド様」
僕、ロードリック様と結婚したから姓がヴァンヴァイドになったけどそう呼ばれるのって初めてかも。
認められてて嬉しいけど聖女様の表情が良くなさそうなんだよね。お化粧でわかりにくいけど顔色もあんまりいい感じじゃないかも。
「聖女様。もしかしてお加減でも悪いのですか?」
「どうしてそう思いますの?」
コテンと音が出ちゃいそうな首のかしげ方をして聞かれたから僕も少し首をかしげた。
「いえ、その、なんとなく……」
会話の切り出しに困って聞いちゃったから変に思われちゃうかも……。
「ふ……ふふふ」
あれ?笑われちゃった?
「ごめんなさい。ヴァンヴァイド様ったら、可愛らしい方だと思って」
お父様達やお姉様達から『可愛い!』って言われるし僕もそう思っているし、ロードリック様に可愛いって言われるのは最高だけどね。人間の言う僕への可愛いって「マスコット的可愛さ」なんでしょ?そういうのはちゃんとテレビで勉強したんだからね。でも悪い気持ちじゃないからいいや。
「ふふ、失礼ながら魔族はもっと怖い存在だと思っておりましたの。魔界出身なのでしょう?優しさとは無縁ではないのですね」
聖女様はクスクス笑いながらそう言った。
「あ、魔族ってそ、そう思われちゃうのかな。でも人間界に行った悪魔は皆『人間は怖い』って言ってましたけど……お互いに知らないせいかもですね」
まあ人間達にしてみれば魔族は怒りっぽいし強い力を操るから恐いだろうけど……
「私の侍女も『人間は恐ろしい生き物だ』と常々申しておりましたわ……」
「まあ、善も悪も持っているのが人間ですからね。そこにつけ入る魔族に破滅させられた人間が『魔族は怖い』って言うんでしょうし反対もまたありますよ。でもこれから若い人間と若い魔族が交流を深めれば協力的な関係になれますよ」
所長さんがするっと話に入ってきた。良かった。聖女のお付きの人達は物みたいに待機しているし、所長さん達もそうするのかと思ったよ。
「僕も人間界に来て人間の優しさを知ったから、人間っていいなって思いました」
ロードリック様と結婚した日、美味しいチョコレートやジュースを貰ってすごく嬉しかったなぁ。他にもいっぱい優しくしてもらったよ。
「そうなのですね……私も人から優しくしてもらうと心が温かくなり、もっと頑張ろうと思いますのよ」
聖女様は今までみたことがないくらいに柔らかく微笑んでいる。この表情、きっと恋をしているからだね!僕はローリック様一筋だから自信あるよ。
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