18 / 37
18(ロードリック視点)
しおりを挟む
★★☆
仕事中、変形したイヌの置物や俺の家で預かっていた呪物について最終の報告書を書き終えた。これが終われば明日は久々に丸一日休みになる。
「よし、これで完成だ」
俺はペンを置いてグッと背伸びをすると目の前にティーカップが置かれた。
「お疲れさん。お茶でも飲んで休憩しろよ」
ニカッと笑いながら茶菓子を持ってきたのは同期のカルマンだった。彼とは研究所に入所してからなので付き合いは長い。
もうすぐ子供が学園を卒業するらしく、子育てが一段落したと最近は毎日とても機嫌が良い。
「あぁ、ありがとう」
礼を言ってカップを手にするとふわりと香ばしい香りが鼻をくすぐる。これは俺の好みのお茶で、カルマンの気遣いを嬉しく思う。
お茶を一口飲むと口の中にスパイシーな風味が広がってほうっとため息が出るほど美味しかった。
「美味いな」
俺がそう言うとカルマンは嬉しそうに笑う。そして空いている椅子に座った。
「最近、ロードリックのところは色々あるけど大丈夫か?結婚に泥棒騒ぎ、呪物の管理もスケジュールが変わって忙しいって聞いていたから心配してたんだ」
「今のところは問題ない。俺のアレックスも色々と頑張ってくれているからな」
俺は毎日忙しく研究所との家を往復して帰りが日付を超えることもあるが、アレックスが俺になるべく負担をかけないように家事をしたり、話し相手をしてリラックスできるようにしてくれるから仕事の疲れも吹っ飛ぶほど元気をもらえている。
「そうか、なら良かったよ。やっぱり新婚だな。俺の家はもう喧嘩ばかりだぜ。学費だ、部費だと金のことからもっと家事を手伝えとか」
「お前のところは奥さんがしっかりしてるからこそだろ。お前一人だと生活出来ないだろ。逃げられないようにしておいた方がいいぞ」
そう言うとカルマンは照れくさそうに笑った。
「まあ、な。この仕事してたら人間の心って醜いって思うけどよ。家族が笑ってくれるとやっぱり、いいよ。子供がは小さい時が一番可愛かったけども……大きくなって一人前になるともう俺の世話もいらなくなるし……まあ、この年になって寂しいって思うこともあるんだな」
カルマンは少し照れたように鼻をかきながら嬉しそうに笑う。
「いい年して子離れできてないだけじゃないのか?」
俺がそう言うとカルマンは「うるせえ」と小突いてきた。
「それよりお前のことだよ。一番心配してるのがお前の嫁?との文化の違いだよ。向こうは悪魔だろ。しかも政略結婚で人間と悪魔の代表同士で結婚だ。それでも仲がいいみたいだけど生活を合わせるのが大変じゃないのか?」
「ああ、アレックスも多分それを分かってるから今は俺に負担をかけないようにって色々努力してくれているよ。俺は……人間や悪魔とか考えず、ただアレックスが喜ぶことをしてやりたいと思ってる」
「ひゅ~、熱いね!結婚式でお前の姿を見た時は絶対すぐ離婚すると思ってたんだけどな」
「ああ、彼の事を知る前は俺も不安だったが、今は離婚なんて考えられないほどアレックスが一番大切だ」
「ふーん、まあ上手くやっているんなら良かったよ!また何か困ったことがあったら言えよ?今度、聖女様が魔法研究所をあちこち巡るらしいぞ。それでまた忙しくなるみたいだからな。お互い頑張ろうぜ」
カルマンはグッと伸びをしてから立ち上がる。そして俺に手を振りながら自分の席に戻って行った。
仕事中、変形したイヌの置物や俺の家で預かっていた呪物について最終の報告書を書き終えた。これが終われば明日は久々に丸一日休みになる。
「よし、これで完成だ」
俺はペンを置いてグッと背伸びをすると目の前にティーカップが置かれた。
「お疲れさん。お茶でも飲んで休憩しろよ」
ニカッと笑いながら茶菓子を持ってきたのは同期のカルマンだった。彼とは研究所に入所してからなので付き合いは長い。
もうすぐ子供が学園を卒業するらしく、子育てが一段落したと最近は毎日とても機嫌が良い。
「あぁ、ありがとう」
礼を言ってカップを手にするとふわりと香ばしい香りが鼻をくすぐる。これは俺の好みのお茶で、カルマンの気遣いを嬉しく思う。
お茶を一口飲むと口の中にスパイシーな風味が広がってほうっとため息が出るほど美味しかった。
「美味いな」
俺がそう言うとカルマンは嬉しそうに笑う。そして空いている椅子に座った。
「最近、ロードリックのところは色々あるけど大丈夫か?結婚に泥棒騒ぎ、呪物の管理もスケジュールが変わって忙しいって聞いていたから心配してたんだ」
「今のところは問題ない。俺のアレックスも色々と頑張ってくれているからな」
俺は毎日忙しく研究所との家を往復して帰りが日付を超えることもあるが、アレックスが俺になるべく負担をかけないように家事をしたり、話し相手をしてリラックスできるようにしてくれるから仕事の疲れも吹っ飛ぶほど元気をもらえている。
「そうか、なら良かったよ。やっぱり新婚だな。俺の家はもう喧嘩ばかりだぜ。学費だ、部費だと金のことからもっと家事を手伝えとか」
「お前のところは奥さんがしっかりしてるからこそだろ。お前一人だと生活出来ないだろ。逃げられないようにしておいた方がいいぞ」
そう言うとカルマンは照れくさそうに笑った。
「まあ、な。この仕事してたら人間の心って醜いって思うけどよ。家族が笑ってくれるとやっぱり、いいよ。子供がは小さい時が一番可愛かったけども……大きくなって一人前になるともう俺の世話もいらなくなるし……まあ、この年になって寂しいって思うこともあるんだな」
カルマンは少し照れたように鼻をかきながら嬉しそうに笑う。
「いい年して子離れできてないだけじゃないのか?」
俺がそう言うとカルマンは「うるせえ」と小突いてきた。
「それよりお前のことだよ。一番心配してるのがお前の嫁?との文化の違いだよ。向こうは悪魔だろ。しかも政略結婚で人間と悪魔の代表同士で結婚だ。それでも仲がいいみたいだけど生活を合わせるのが大変じゃないのか?」
「ああ、アレックスも多分それを分かってるから今は俺に負担をかけないようにって色々努力してくれているよ。俺は……人間や悪魔とか考えず、ただアレックスが喜ぶことをしてやりたいと思ってる」
「ひゅ~、熱いね!結婚式でお前の姿を見た時は絶対すぐ離婚すると思ってたんだけどな」
「ああ、彼の事を知る前は俺も不安だったが、今は離婚なんて考えられないほどアレックスが一番大切だ」
「ふーん、まあ上手くやっているんなら良かったよ!また何か困ったことがあったら言えよ?今度、聖女様が魔法研究所をあちこち巡るらしいぞ。それでまた忙しくなるみたいだからな。お互い頑張ろうぜ」
カルマンはグッと伸びをしてから立ち上がる。そして俺に手を振りながら自分の席に戻って行った。
11
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる