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☆☆☆★

お父様達のお迎えのために茶器の準備やお茶菓子選びを選びつつ家事をして、時間があるとテレビをみて人間世界の情報を集めていく。
まだ他の家のお茶会やパーティーに呼ばれたことはないけどお話ができないとツマラナイからね。

「あっちゃん、おるかー?わいが来たで~」

少し前に聞いた声なのに懐かしく感じちゃうアモンの声が窓の外から聞こえた。
窓を開けると前に会ったときと変わらず全身を黒いローブに包んでいた。

「アモン、どうしたの?玄関を開けるから入っておいでよ」

「おお、頼むわ。なんか玄関は前より厳重なっとるんや」

「厳重?」

首をかしげて聞くとアモンが苦笑した。

「変なんが入ってこんようにしてるってことや。愛されとって良かったやん。そやけどわいみたいなエエ悪魔まで玄関に寄せ付けんほど強いのかけてるのは困りもんやわ。加減せえって言うといてや」

アモンが肩をすくめて言うけど、ロードリック様は結界を張ってるなんて言ってなかったけどなあ。僕が出入りする時は結界もなにも感じないし。

「とりあえず入れてえや。結界がある上に悪魔は勝手に玄関ドアを通り抜けれんのやから」

「あ、うん。開けに行くから玄関に周って」

僕はアモンを玄関から迎え入れて一緒にリビングに移動した。

「ドゥフッ、なんやその山盛りのテーブルのお菓子は。ええやつばっかやん。茶にぴったりやん」

アモンがテーブルの上のお菓子を物欲しそうに見ているけど、これ全部お父様達に出すお菓子を選ぶのに買ったものだからロードリック様と一緒に食べる分だ。でも見られちゃったし駄目っていうのもなぁ。
いっぱい入ってるやつはアモンにも分けてあげよう。
僕がお茶を用意してくるとアモンはすでに椅子に座ってリモコン片手にテレビを見ていた。

「あ、そや。あっちゃん。ちゃんと瘴気や精気を旦那からもらえるようになったか?」

僕はぎくりと身体をこわばらせた。

「あ……まあ、ぼちぼちやなかな」

ティーポットからカップにお茶を注ぐけど手がプルプル震えちゃう。
アモンは僕を見ながらニヤニヤしてるし絶対分かってるよね!でもそれ以上聞かないでよ? 僕はテーブルの上のお菓子をいくつか自分の小皿に移した。

「まだやねんな?そやったら今晩くらい自分から『旦那さまぁ~エッチしてえ~ん』と体をくねらしながら誘って旦那といっぱいエッチせんとなあ」

その言葉に僕はお茶をこぼしそうになった。
ロードリック様とエッチ!あのしなやかで引き締まった筋肉の身体に服を脱いで抱かれるってこと!?

「ほわあぁ……」

僕は顔を赤くして下を向いた。お茶のカップから湯気がのぼっていた。

「淫魔のくせにおぼこちゃんみたいな反応しとったらホンマに餓死するで?」

「うっ……で、でも抱きしめ合うだけですっごく幸せでお腹いっぱいになるんだよ。それに人間のご飯って美味しいし。瘴気が足りなくてしんどいって感じたこともないんだ。だから大丈夫だよ」

僕は慌ててアモンに言ってお菓子を一口で食べてお茶を飲んだ。

「まあ……前に比べるとこの屋敷から漂う瘴気が濃くなってるし、空気から吸収できとるんやろかもしれんけどな。でもホンマにあかんて思う前にちゃんと旦那から貰うんやで?」

アモンはそれだけ言うとケーキとクッキーを食べて帰ってしまった。

もう!変な事言うから今晩ロードリック様とのエッチのこと考えちゃったじゃないか! あーーー、どうしよう?自分から誘うなんてできないよー!!だけど僕と仲良くしてくれるし、エッチしてみたい。
でも淫魔なのにノーテクニックで幻滅されたらどうしよう!?僕が不感症だったら?!
不安でお菓子を食べる手が止まらない!美味しい!!

★☆★
ロードリック様は寝る前のお酒を止めて僕と一緒にホットミルクを飲む。

「アレックス、どうした?」

二人並んで飲むミルクは甘くて美味しいけど今日はあんまり喉を通らない。

「なんでもないです」

「顔が赤いぞ?熱でもあるのか?」

ロードリック様がおでこに手を当てようとしたのでビクッとしてしまった。
アモンが変なことを言ったから意識しちゃうじゃないか!どうしよう!?

「だ、大丈夫です!パパ達のお出迎えのお菓子選びとか、ちょっと疲れちゃってて」

僕は立ち上がって慌てて自分の部屋に戻った。
あーーー!僕のバカバカ!!せっかくロードリック様が心配してくれたのに! 自分のベッドに潜り込んで布団をかぶる。

ああ~~~、あの時に「抱いて」って言えばよかった。でもエッチなんかしたことないのにどうやってするの!? アモンから話は聞いたことあるけど肝心のとこは「ぶちゅっとやってズコズコしたんや」って擬音ばっかりで全然分かんないよ。
布団の中で悶えているとノックが聞こえた。

「アレックス、まだ起きているか?」

ロードリック様の不安そうな声に僕はベッドから飛び降りた。
急いでドアを開けると不安そうな表情をしたロードリック様がいた。

「あ……あの、ごめんなさい。なんでもないんです!」

「俺は悪魔の生活について詳しくはないが、人間の生活に合わせてアレックスにはいろいろと我慢させていると思ってる。だから思い詰めるほど悩んでいるのなら言ってくれ。無理をしてほしくない」

ロードリック様が僕を優しく抱きしめた。背中に手を回すとロードリック様の体温を感じる。ドキドキしてたけどこの不安を打ち明けていいのかな?

「えっと、その……お父様達には内緒にしてほしいんですけど」

僕はアモンとの会話を洗いざらい話した。抱かれたことがないから幻滅されるのではないかとか、純白の淫魔として体の開発ということをされてないから不感症かもしれないとかすごく恥ずかしいけど全部話した。

「ほお……」

話を聞いたロードリック様の目が冷たい色になった気がしたけど気のせいだよね?

「経験がないということは結婚前から聞いていたことだ。それで幻滅することはない。そしてキミの体が感じにくいかもしれないという心配は無用だ。頭を撫でたり、お腹を揉むだけで蕩ける顔は十分に感じてる証だ」

そう言われて一緒に眠ったときのことを思い出す。ロードリック様の手が触れてくれるとお腹なのにすごく気持ちよかった。

「それに……俺のほうが限界になってきている。キミの全てを俺のものにしたい」

……ふぇ?ロードリック様が僕のことを誘ってる?!今日こそ僕も大人になる日だ!

「旦那さま~、エ、エッチしてえ~~ん」

アモンから教わった体をくねくねさせてのお誘いをしたのだけど、「エッチ」の辺りでガラスの割れるような音が響いた。

ロードリック様、今舌打ちした?すごい怖い顔してますけど??

「侵入者だ。アレックス。俺の部屋にいなさい。鍵を確認して絶対にドアを開けては駄目だ。部屋に電話がある。そこにアドレス帳を置いてあるから『所長』にかけて助けを求めてくれ」

「ロードリック様は!?一緒に」

「俺は侵入者を始末しに行く。今すぐ部屋を移りなさい。俺の部屋とこの部屋を繋ぐドアの鍵も必ずかけるんだ」

ロードリック様が僕を安心させるようにキスしてから部屋を出ていった。
僕は急いでロードリック様のお部屋に入って鍵を閉めた。もちろん窓や廊下に繋がるドアの鍵もしたよ。
次に電話のところに行った。使い方は一度練習をした。アドレス帳には確かに所長の電話番号があったからすぐにかけたんだけど、コール音だけで出ないよ!?なんで?練習でロードリック様に電話したときは家の中同士だったからすぐに出れたの? 不安で泣きそうになったけどロードリック様のためにできることは電話をすること。僕はずっとコール音を聞き続けた。
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