23 / 23
23.二人の夜
しおりを挟む
******
冬になり、俺は紹介で木彫り細工の内職の仕事を得た。観光シーズンになると熊が魚を食べる姿の木彫りを観光客が買うらしい。
はっきり言って俺はいらないが、旅行ができる金持ちはこれが好きなのだとか。
作業の合間に俺は夕飯作りのために台所に立った。リムルが学校から帰ってきてすぐに台所へやってきた。
「リムル。おかえり。今日は何が食べたいんだ?」
冷蔵庫の中の食材をチェックする。肉と豆、トマトにじゃがいも。牛乳もあった。他にソーセージや野菜が何種類かある。
この材料ならトマト煮込みかとも思うが、リムルがテーブルに座ってこっちを見ているから聞いてみた。
「お前が作ってくれるなら何でもいいぞ。クラウスの料理は美味しいからな」
「じゃあトマトとソーセージの煮込みとサラダな」
「サラダは嫌いだ」
「好き嫌いするなよ。ちゃんと食え。野菜を食べないと大きくなれないぞ」
「大きくなったら可愛くなくなるだろ。この僕の可愛さが損なわれたら世界の損失だ」
俺がいるときは口にも態度にも出さないが、身長を気にして屋敷のコックに頼んで背が高くなる食事を用意しろとか言っていたのに何の心境の変化だ?
「そのデカイ態度を小さくしたらもっと可愛いぞ」
「……クラウスのくせに生意気だ」
俺の言葉が気に障ったのか、俺を睨みつけてきた。でも俺の方が背が高いから上目遣いになるし、そんな顔をしたって単に可愛いだけだと思った。
「ほら、それより宿題済ませろよ。さっさと終わらせて一緒に飯を食べて風呂入るぞ」
「クラウスと風呂に入ったら狭くなるだろ。どうしても一緒がいいなら入ってやってもいい」
「んじゃ、早くしようぜ」
立って調理を始めるとリムルは椅子に座って足をぶらつかせながら俺のことを見つめていた。
「……クラウスの背中は大きいな」
「まあな」
「僕は小さいから羨ましい」
「じゃあ野菜を食べろ。大きくなるぞ」
「大きくなったら男らしくなるだろ。可愛くなくなった僕をお前は抱けるのか?」
振り返るとリムルは眉を釣り上げているのに潤んだ目で俺を見ていた。
「ああ、俺は余裕で抱けるな」
これからリムルは背が高くなるだろうし、大人になれば綺麗な男になるだろう。だけど中身は変わらないと思うし、変わらずに俺を好きでいてくれると信じている。
「…………やっぱりクラウスはズルい」
俺の答えを聞いたリムルが顔を赤くしながら俯いて呟いた。
***
二人でベッドで横になり寝るまでダラダラと過ごす。
「なぁ、クラウス。お前が家の中でエッチしてみたい場所はどこだ?」
「はあ?」
「だから、ボクと家の中でエッチしたい場所だ」
「……ベッド?」
いきなり変なことを聞いてきたから戸惑いながらも答える。するとリムルは不服そうだった。
「一箇所だけか?いっぱいあるのになんでだ」
「なんでって、こういう質問されたら答えの数は一つって思ったんだよ。リビングや風呂場も良いがやっぱり落ち着くのはベッドだ。そのまま寝ることもできるし」
「僕とベッド以外でするのは嫌なのか?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど……」
リムルと求めるままやってるとその場所で朝まで、なんてこともある。俺は兵士の頃に野営をしていたから固い木の板で寝るのは平気だがリムルは坊っちゃんだ。体のことを気にしてしまう。
「ふんっ、どうせ僕はちんちくりんで魅力がないですよ」
拗ねたように唇を尖らせてそっぽを向いてしまった。リムルはたまに理不尽に不機嫌になる。多分、学校で嫌なことでもあったんだろう。
「そんなこと言うなよ。俺は結婚できる国に一緒に行きたいって今もずっと思ってるのに」
「……ほんとに?」
「本当だ。嘘なんかつかない」
「じゃあ、証明しろよ」
リムルは俺の方へ向き直り起き上がって両手を俺の顔の横についた。そしてじっと見下ろしてくる。
「何をすればいいんだ?」
きっとキスだろうなあって思っていたんだが
「ボクを100回イカセロ」
「ひゃっ?」
100回ってどういうことだ。できたとしても搾り取られて骨すら残らないかもしれない。
「いいから、さっさと脱げ」
リムルに急かされてパジャマを脱ぐと下着姿になった俺に跨がってきた。
「リムル?」
「言っただろ。セックスで最低100回はイカセロ」
「百って、お互い途中で干からびるぞ」
本気だとは思っていない。だが漫画の知識を鵜呑みにしているときがあるから念のために釘を刺したもののリムルは笑うだけだ。
「ふふん、だれも連続でなんて言ってないぞ。一生かけてだ。100回したら次も100回する。終わりなんてないから覚悟しろ」
そう聞かされて、俺が先に爺さんになるから勃たなくなったらどうするんだと思うがその時に考えるとしよう。
「俺は良いが、リムルは本当にそれで良いのか?」
「もちろんだ。僕たちは愛し合っているんだから当然だろ」
いつもはどもる癖にこんなときだけサラリと言ってしまうなよ。
「~~~そうだな」
恥ずかしくて照れ隠しのように俺はリムルの背中に腕を回して引き寄せた。
「クラウス、離れるなよ」
「ああ、離れるかよ」
お互いの胸が重なり合う。どちらの心臓の動きか分からないくらい鼓動が混ざり合った。
「クラウス、好きだ」
「ああ、俺もリムルが好きだ」
リムルの体を抱き寄せたまま俺達は深い口付けを交わした。
【おわり】
冬になり、俺は紹介で木彫り細工の内職の仕事を得た。観光シーズンになると熊が魚を食べる姿の木彫りを観光客が買うらしい。
はっきり言って俺はいらないが、旅行ができる金持ちはこれが好きなのだとか。
作業の合間に俺は夕飯作りのために台所に立った。リムルが学校から帰ってきてすぐに台所へやってきた。
「リムル。おかえり。今日は何が食べたいんだ?」
冷蔵庫の中の食材をチェックする。肉と豆、トマトにじゃがいも。牛乳もあった。他にソーセージや野菜が何種類かある。
この材料ならトマト煮込みかとも思うが、リムルがテーブルに座ってこっちを見ているから聞いてみた。
「お前が作ってくれるなら何でもいいぞ。クラウスの料理は美味しいからな」
「じゃあトマトとソーセージの煮込みとサラダな」
「サラダは嫌いだ」
「好き嫌いするなよ。ちゃんと食え。野菜を食べないと大きくなれないぞ」
「大きくなったら可愛くなくなるだろ。この僕の可愛さが損なわれたら世界の損失だ」
俺がいるときは口にも態度にも出さないが、身長を気にして屋敷のコックに頼んで背が高くなる食事を用意しろとか言っていたのに何の心境の変化だ?
「そのデカイ態度を小さくしたらもっと可愛いぞ」
「……クラウスのくせに生意気だ」
俺の言葉が気に障ったのか、俺を睨みつけてきた。でも俺の方が背が高いから上目遣いになるし、そんな顔をしたって単に可愛いだけだと思った。
「ほら、それより宿題済ませろよ。さっさと終わらせて一緒に飯を食べて風呂入るぞ」
「クラウスと風呂に入ったら狭くなるだろ。どうしても一緒がいいなら入ってやってもいい」
「んじゃ、早くしようぜ」
立って調理を始めるとリムルは椅子に座って足をぶらつかせながら俺のことを見つめていた。
「……クラウスの背中は大きいな」
「まあな」
「僕は小さいから羨ましい」
「じゃあ野菜を食べろ。大きくなるぞ」
「大きくなったら男らしくなるだろ。可愛くなくなった僕をお前は抱けるのか?」
振り返るとリムルは眉を釣り上げているのに潤んだ目で俺を見ていた。
「ああ、俺は余裕で抱けるな」
これからリムルは背が高くなるだろうし、大人になれば綺麗な男になるだろう。だけど中身は変わらないと思うし、変わらずに俺を好きでいてくれると信じている。
「…………やっぱりクラウスはズルい」
俺の答えを聞いたリムルが顔を赤くしながら俯いて呟いた。
***
二人でベッドで横になり寝るまでダラダラと過ごす。
「なぁ、クラウス。お前が家の中でエッチしてみたい場所はどこだ?」
「はあ?」
「だから、ボクと家の中でエッチしたい場所だ」
「……ベッド?」
いきなり変なことを聞いてきたから戸惑いながらも答える。するとリムルは不服そうだった。
「一箇所だけか?いっぱいあるのになんでだ」
「なんでって、こういう質問されたら答えの数は一つって思ったんだよ。リビングや風呂場も良いがやっぱり落ち着くのはベッドだ。そのまま寝ることもできるし」
「僕とベッド以外でするのは嫌なのか?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど……」
リムルと求めるままやってるとその場所で朝まで、なんてこともある。俺は兵士の頃に野営をしていたから固い木の板で寝るのは平気だがリムルは坊っちゃんだ。体のことを気にしてしまう。
「ふんっ、どうせ僕はちんちくりんで魅力がないですよ」
拗ねたように唇を尖らせてそっぽを向いてしまった。リムルはたまに理不尽に不機嫌になる。多分、学校で嫌なことでもあったんだろう。
「そんなこと言うなよ。俺は結婚できる国に一緒に行きたいって今もずっと思ってるのに」
「……ほんとに?」
「本当だ。嘘なんかつかない」
「じゃあ、証明しろよ」
リムルは俺の方へ向き直り起き上がって両手を俺の顔の横についた。そしてじっと見下ろしてくる。
「何をすればいいんだ?」
きっとキスだろうなあって思っていたんだが
「ボクを100回イカセロ」
「ひゃっ?」
100回ってどういうことだ。できたとしても搾り取られて骨すら残らないかもしれない。
「いいから、さっさと脱げ」
リムルに急かされてパジャマを脱ぐと下着姿になった俺に跨がってきた。
「リムル?」
「言っただろ。セックスで最低100回はイカセロ」
「百って、お互い途中で干からびるぞ」
本気だとは思っていない。だが漫画の知識を鵜呑みにしているときがあるから念のために釘を刺したもののリムルは笑うだけだ。
「ふふん、だれも連続でなんて言ってないぞ。一生かけてだ。100回したら次も100回する。終わりなんてないから覚悟しろ」
そう聞かされて、俺が先に爺さんになるから勃たなくなったらどうするんだと思うがその時に考えるとしよう。
「俺は良いが、リムルは本当にそれで良いのか?」
「もちろんだ。僕たちは愛し合っているんだから当然だろ」
いつもはどもる癖にこんなときだけサラリと言ってしまうなよ。
「~~~そうだな」
恥ずかしくて照れ隠しのように俺はリムルの背中に腕を回して引き寄せた。
「クラウス、離れるなよ」
「ああ、離れるかよ」
お互いの胸が重なり合う。どちらの心臓の動きか分からないくらい鼓動が混ざり合った。
「クラウス、好きだ」
「ああ、俺もリムルが好きだ」
リムルの体を抱き寄せたまま俺達は深い口付けを交わした。
【おわり】
2
お気に入りに追加
58
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる