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23.二人の夜

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冬になり、俺は紹介で木彫り細工の内職の仕事を得た。観光シーズンになると熊が魚を食べる姿の木彫りを観光客が買うらしい。
はっきり言って俺はいらないが、旅行ができる金持ちはこれが好きなのだとか。
作業の合間に俺は夕飯作りのために台所に立った。リムルが学校から帰ってきてすぐに台所へやってきた。

「リムル。おかえり。今日は何が食べたいんだ?」

冷蔵庫の中の食材をチェックする。肉と豆、トマトにじゃがいも。牛乳もあった。他にソーセージや野菜が何種類かある。

この材料ならトマト煮込みかとも思うが、リムルがテーブルに座ってこっちを見ているから聞いてみた。

「お前が作ってくれるなら何でもいいぞ。クラウスの料理は美味しいからな」

「じゃあトマトとソーセージの煮込みとサラダな」

「サラダは嫌いだ」

「好き嫌いするなよ。ちゃんと食え。野菜を食べないと大きくなれないぞ」

「大きくなったら可愛くなくなるだろ。この僕の可愛さが損なわれたら世界の損失だ」

俺がいるときは口にも態度にも出さないが、身長を気にして屋敷のコックに頼んで背が高くなる食事を用意しろとか言っていたのに何の心境の変化だ?

「そのデカイ態度を小さくしたらもっと可愛いぞ」


「……クラウスのくせに生意気だ」

俺の言葉が気に障ったのか、俺を睨みつけてきた。でも俺の方が背が高いから上目遣いになるし、そんな顔をしたって単に可愛いだけだと思った。

「ほら、それより宿題済ませろよ。さっさと終わらせて一緒に飯を食べて風呂入るぞ」

「クラウスと風呂に入ったら狭くなるだろ。どうしても一緒がいいなら入ってやってもいい」

「んじゃ、早くしようぜ」

立って調理を始めるとリムルは椅子に座って足をぶらつかせながら俺のことを見つめていた。

「……クラウスの背中は大きいな」

「まあな」

「僕は小さいから羨ましい」

「じゃあ野菜を食べろ。大きくなるぞ」

「大きくなったら男らしくなるだろ。可愛くなくなった僕をお前は抱けるのか?」

振り返るとリムルは眉を釣り上げているのに潤んだ目で俺を見ていた。

「ああ、俺は余裕で抱けるな」

これからリムルは背が高くなるだろうし、大人になれば綺麗な男になるだろう。だけど中身は変わらないと思うし、変わらずに俺を好きでいてくれると信じている。

「…………やっぱりクラウスはズルい」

俺の答えを聞いたリムルが顔を赤くしながら俯いて呟いた。

***
二人でベッドで横になり寝るまでダラダラと過ごす。

「なぁ、クラウス。お前が家の中でエッチしてみたい場所はどこだ?」

「はあ?」

「だから、ボクと家の中でエッチしたい場所だ」

「……ベッド?」

いきなり変なことを聞いてきたから戸惑いながらも答える。するとリムルは不服そうだった。

「一箇所だけか?いっぱいあるのになんでだ」

「なんでって、こういう質問されたら答えの数は一つって思ったんだよ。リビングや風呂場も良いがやっぱり落ち着くのはベッドだ。そのまま寝ることもできるし」

「僕とベッド以外でするのは嫌なのか?」

「いや、別にそういうわけじゃないけど……」

リムルと求めるままやってるとその場所で朝まで、なんてこともある。俺は兵士の頃に野営をしていたから固い木の板で寝るのは平気だがリムルは坊っちゃんだ。体のことを気にしてしまう。

「ふんっ、どうせ僕はちんちくりんで魅力がないですよ」

拗ねたように唇を尖らせてそっぽを向いてしまった。リムルはたまに理不尽に不機嫌になる。多分、学校で嫌なことでもあったんだろう。

「そんなこと言うなよ。俺は結婚できる国に一緒に行きたいって今もずっと思ってるのに」

「……ほんとに?」

「本当だ。嘘なんかつかない」

「じゃあ、証明しろよ」

リムルは俺の方へ向き直り起き上がって両手を俺の顔の横についた。そしてじっと見下ろしてくる。

「何をすればいいんだ?」

きっとキスだろうなあって思っていたんだが

「ボクを100回イカセロ」

「ひゃっ?」

100回ってどういうことだ。できたとしても搾り取られて骨すら残らないかもしれない。

「いいから、さっさと脱げ」

リムルに急かされてパジャマを脱ぐと下着姿になった俺に跨がってきた。

「リムル?」

「言っただろ。セックスで最低100回はイカセロ」

「百って、お互い途中で干からびるぞ」

本気だとは思っていない。だが漫画の知識を鵜呑みにしているときがあるから念のために釘を刺したもののリムルは笑うだけだ。

「ふふん、だれも連続でなんて言ってないぞ。一生かけてだ。100回したら次も100回する。終わりなんてないから覚悟しろ」

そう聞かされて、俺が先に爺さんになるから勃たなくなったらどうするんだと思うがその時に考えるとしよう。

「俺は良いが、リムルは本当にそれで良いのか?」

「もちろんだ。僕たちは愛し合っているんだから当然だろ」

いつもはどもる癖にこんなときだけサラリと言ってしまうなよ。

「~~~そうだな」

恥ずかしくて照れ隠しのように俺はリムルの背中に腕を回して引き寄せた。

「クラウス、離れるなよ」

「ああ、離れるかよ」

お互いの胸が重なり合う。どちらの心臓の動きか分からないくらい鼓動が混ざり合った。

「クラウス、好きだ」

「ああ、俺もリムルが好きだ」

リムルの体を抱き寄せたまま俺達は深い口付けを交わした。




【おわり】
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