わがまま坊っちゃんな主人と奴隷の俺

からどり

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17.優しい時間

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お互いの気持ちを打ち明けた翌日から俺は仕事を探したんだが外国人なのとこの国に職歴がないということで難航していた。
日雇いやじいさんばあさんの手伝いで小遣い程度の稼ぎしかできなかった。だがある日、庭の草むしりをさせてもらってるばあさんのところに町を出ていった息子から手紙が送られてきた。
だけどばあさんは学校もいったことがないから字なんて読めない。

「クウさん、どなたか字を読める人を知らないかしら?」

なぜか町のばあさんたちは俺をクラさんではなくクウさんと呼ぶ。

「どこの国の字っすか?この国のなら読めますけど」

リムルの実家にいた執事のじいさんが教えてくれたことによると俺のいた国やリムルの国、そして今住んでいる国は昔、同じ王様が収めていた時代があったらしい。
だから言葉が同じで、発音がそれぞれの国で訛りがある。ということだった。
時代の流れで生まれたこの国特有の言い回しや単語があったらお手上げだが、お世話になってるし、少しでも力になりたい。

「あら、そうなの?息子から手紙が来たんだけど読めなくて……クウさん、読めそう?」

封筒から出された便箋を開いて読むと綺麗な字が書かれていた。

「えーっと……読めそうだから読みますよ。……母さんへ。今年の冬は帰る予定です。母さんも父さんもお体に気をつけて。息子モリオンより」

短い手紙だったが、息子が冬に帰ってくると知ったばあさんは喜んでいた。だからばあさんは俺が字を読めるってことを交えながら息子から手紙がきて冬に帰るとご近所のお喋り仲間たちに話した。お喋り仲間たちも息子が帰ってくる良い話だからとどんどん広めていった。
すると数日後には知らない人が噂を聞いて俺を訪ねてきて「手紙を読めるならかけないか?」と言ってきた。
一人の手紙をお金と引き換えに書いてやるとその話を聞いた人が自分も手紙を代筆して欲しいと便箋を持って来て頼んでくるようになった。
手紙を送るのには金がかかるから毎日仕事があるってわけじゃないが、日雇いの仕事も毎日あるわけじゃないし。少しでも多く貯金を増やしたいから手紙を書く仕事も引き受けていた。

別の日、今日は朝から草むしりをして昼飯をごちそうになり、その後にばあさんから息子への手紙を頼まれて書いていた。手紙を渡すとばあさんは字を読めないけども嬉しそうに便箋を見ていた。

「クウさん、ありがとう。これで私も息子に手紙を送り返せるわ」

「俺の方こそいつもありがとうございます。昼までご馳走になってしまって」

「いいのよ。これ、今日のお礼ね。またお願いね」

お礼を受け取り、いい気持ちで仕事を終えた。せっかくだしこの金で1杯やりたいところだが、禁酒が一年以上も続いているし夢も出来た。
まだ金も貯まっていないから酒は控えよう。それに俺が酔うとたちが悪いらしい。ある程度飲むと記憶がないから寝てるだけだと思っていたが、昔の仲間によると寝ているなんて可愛いものじゃないらしい……。

「ただいま~」

家に帰ってリビングに行くとテーブルの上には食材が並んでいた。

「おかえり。クラウス。早速で悪いが早くエプロンをつけろ。僕とご飯を作るぞ」

エプロン姿のリムルが出迎えてくれた。今日の格好は青色のシャツと黒のズボンだ。またミニスカとか短パンを履いて欲しいと思って頼んでみたら「スーパー受け様は男に媚びない!」と怒られた。意味は分からないが多分、エロい漫画の話だろう。

「クラウス、今日は何をしてきたんだ?」

「ああ、ちょっと知り合いに手紙を書いたんだ」

リムルに渡された白のシンプルなエプロンを身につけた。

「ふぅん。どんな内容だ?」

「母親が息子に書く手紙だ。これだけはリムルにも内緒だ」

「……そうだな。それは秘密にしてもいいぞ。僕に内緒にすることを許可してやる」

俺の答えにリムルは少し考えて許してくれた。内容は体の心配とか帰って来て嬉しいってよくある手紙なんだが、ばあさんが何日も考えた返事を簡単に言うのは気が引ける。

「クラウス。仕事が増えて忙しくなったら言えよ。僕も家事を覚えていくから頼っていいからな」

「おう。その時は頼む」

リムルといるといきなりデレてくるから俺の心の中は振り回されていた。
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