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11.他人事のようなこと
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**お預け一日目**
リムルが学校に行っている間に俺が家事を済ませる。そろそろ買い物に行く時間だ。
万屋より大きいスーパーは時間によって安売りが始まる。
リムルの家から仕送りはあるけど俺の生活費はリムルがずっと出してくれていた。
仕事をしたいとは思うが、この話をするとリムルが反対して口をきいてくれなくなる。
でも家に閉じこもっていても暇だし、仲良くなった町の奴から日雇いの仕事をやったり、草むしりとか夕方までに終わるような手伝いをしたりしてリムルには内緒で小遣い稼ぎをしてた。
でも金を出したら働いているのがバレれるから、まだ稼いだ金は使ったことがなく俺のタンスの引き出しの奥に入れっぱなしだ。
「さて、行くかな」
荷物をまとめて家を出る。いつものように町の中心にあるスーパーは買い物客の出入りは激しかった。
「いらっしゃいませっ」
店員の元気な声を聞きながら店内に入る。今日は何が安いだろうか。
「えっと……今日の特売品は……」
チラシを見ながら今日の目玉商品を探す。野菜に肉に魚。どれもいつもより安くなっていた。でも通常の値段の物も混じっているからうっかりしてると節約のために買いに来た意味がなくなってしまう。
「おっ、卵が今日はセール数限定販売。しかもまだある。買っておくか」
卵の使い道はいろいろあるからな。メインにもサブにもなれる万能食材だ。
他にも必要そうな物をカゴに入れて会計を済ませた。
「ありがとうございましたー」
レジ袋を受け取って店を後にする。
「さて、帰るか」
早く帰らないとリムルが帰って来てしまう。年頃だから腹が減るのが早いんだよな。おやつがないと『ご主人様のためにおやつくらい用意しておけ』ってうるさいし。
早足に町を歩いていると町の人たちの噂話が聞こえてきた。
「おい、聞いたか?……国から逃げて来た難民がこの国にも増えてるらしいぞ」
「ああ、あの戦争で負けた国か。領土も一部取られて大変らしいな」
「怖いわねぇ。私たちの国は平和なのに」
「怖いよなぁ。この国は戦争が起きないといいけど」
「そうね」
……俺がいた国だ。そうか。一年も経っても戦争が終わったからって落ち着く訳がないか。あの日、不可抗力で逃げ出した仲間達はどうしてるだろう?全く無関係な国で暮らす俺一人には今更どうすることもできないけどな。
もし帰れるならって思うこともあるが、帰ったところで俺の居場所はない。一般庶民の俺が捕虜の交換の事故でいなくなってもどっちの国も動いてる。
それなら俺を必要としてくれる奴の傍にいたいと思う。その相手はもちろんリムルだけど。
そんなことを考えているうちに自宅に着いた。玄関には当てつけのように靴箱から靴が出され、すべてど真ん中に綺麗に並んで置かれていた。
あいつ、嫌がらせに時間かけて暇なんだな。と思いながら使わない靴は靴箱に戻した。
「ただいま」
「遅い!ボクのオヤツがないぞ!ストックボックスに一つもないじゃないか!」
リビングのドアを開けるとリムルが制服のまま仁王立ちで立っていた。
「今日はオヤツがないから買いに行くって言っただろ。待ちきれないなら帰りに買ったらいいだろ」
「嫌だ。今日は自分で買って食べる気分じゃなかったんだ。だからクラウス、早くオヤツを食べさせろ。あーんってしろ」
わがままなやつめ。忙しい時にあーんを求めるとは悪魔か。でも甘やかす俺は大馬鹿者だな。
「あーんするから座って待ってろ。買ってきたものを冷蔵庫に入れるから」
「ボクが待ってるから早くしろよ」
俺がリムルくらいの時にこんな態度をとったら周りのおっさん達に甘えんなってゲンコツされただろうな。
国のことを耳にしたせいかガキの頃を思い出してしまった。だけど今は冷蔵庫に買った物を片付けるのが先だ。
***
「ほら、口開けろ」
「あーん♡お前のチョイスにしては美味いぞ。クラウス、お前も食べさせてやる」
「俺も?」
ミニホットケーキにクリームを薄く伸ばして挟んだだけのお菓子がそんなに美味いか?普段なら感想もなく「ごちそうさま」って言って自分だけ食べて終わるんだけどなぁ。なんか変なものを食べたのか?
「そうだ。ボクだけなんて不公平だろ。お前も食わせてやる」
「お、おう。いただきます」
リムルが差し出したフォークを口に含む。甘いけどクリームが薄いからしつこくないな。
「うん、なかなかいい味だったな。ご馳走さん」
「もっと食べさせてやってもいいぞ?」
「いや、もう夕食の準備もするし、食べ過ぎたらご飯が食べれないだろ」
「むぅ……まあいい。夕飯は何を作るつもりなんだ?」
「カレーだ。あとはサラダでも作るか」
「カレーか。サラダはいらないぞ」
「サラダも作るぞ」
「いらない」
俺達はキスしそうなくらい顔を近づけるがケーキみたいな甘いもんじゃない戦いに突入していく。
「喰え」
「いらない」
「ちゃんと喰え」
「いらない」
「く・え」
「いっらっなっいっ」
「……くえ!」
おもいっきり睨んでやる。
「いらないっ!」
リムルも負けじと睨んでくる。
「……サラダを食べたらデザートにフルーツヨーグルトだ」
「……仕方ないからサラダを食べてやってもいい」
交渉成立し、俺はキッチンに向かい、リムルはリビングに向かった。
リムルが学校に行っている間に俺が家事を済ませる。そろそろ買い物に行く時間だ。
万屋より大きいスーパーは時間によって安売りが始まる。
リムルの家から仕送りはあるけど俺の生活費はリムルがずっと出してくれていた。
仕事をしたいとは思うが、この話をするとリムルが反対して口をきいてくれなくなる。
でも家に閉じこもっていても暇だし、仲良くなった町の奴から日雇いの仕事をやったり、草むしりとか夕方までに終わるような手伝いをしたりしてリムルには内緒で小遣い稼ぎをしてた。
でも金を出したら働いているのがバレれるから、まだ稼いだ金は使ったことがなく俺のタンスの引き出しの奥に入れっぱなしだ。
「さて、行くかな」
荷物をまとめて家を出る。いつものように町の中心にあるスーパーは買い物客の出入りは激しかった。
「いらっしゃいませっ」
店員の元気な声を聞きながら店内に入る。今日は何が安いだろうか。
「えっと……今日の特売品は……」
チラシを見ながら今日の目玉商品を探す。野菜に肉に魚。どれもいつもより安くなっていた。でも通常の値段の物も混じっているからうっかりしてると節約のために買いに来た意味がなくなってしまう。
「おっ、卵が今日はセール数限定販売。しかもまだある。買っておくか」
卵の使い道はいろいろあるからな。メインにもサブにもなれる万能食材だ。
他にも必要そうな物をカゴに入れて会計を済ませた。
「ありがとうございましたー」
レジ袋を受け取って店を後にする。
「さて、帰るか」
早く帰らないとリムルが帰って来てしまう。年頃だから腹が減るのが早いんだよな。おやつがないと『ご主人様のためにおやつくらい用意しておけ』ってうるさいし。
早足に町を歩いていると町の人たちの噂話が聞こえてきた。
「おい、聞いたか?……国から逃げて来た難民がこの国にも増えてるらしいぞ」
「ああ、あの戦争で負けた国か。領土も一部取られて大変らしいな」
「怖いわねぇ。私たちの国は平和なのに」
「怖いよなぁ。この国は戦争が起きないといいけど」
「そうね」
……俺がいた国だ。そうか。一年も経っても戦争が終わったからって落ち着く訳がないか。あの日、不可抗力で逃げ出した仲間達はどうしてるだろう?全く無関係な国で暮らす俺一人には今更どうすることもできないけどな。
もし帰れるならって思うこともあるが、帰ったところで俺の居場所はない。一般庶民の俺が捕虜の交換の事故でいなくなってもどっちの国も動いてる。
それなら俺を必要としてくれる奴の傍にいたいと思う。その相手はもちろんリムルだけど。
そんなことを考えているうちに自宅に着いた。玄関には当てつけのように靴箱から靴が出され、すべてど真ん中に綺麗に並んで置かれていた。
あいつ、嫌がらせに時間かけて暇なんだな。と思いながら使わない靴は靴箱に戻した。
「ただいま」
「遅い!ボクのオヤツがないぞ!ストックボックスに一つもないじゃないか!」
リビングのドアを開けるとリムルが制服のまま仁王立ちで立っていた。
「今日はオヤツがないから買いに行くって言っただろ。待ちきれないなら帰りに買ったらいいだろ」
「嫌だ。今日は自分で買って食べる気分じゃなかったんだ。だからクラウス、早くオヤツを食べさせろ。あーんってしろ」
わがままなやつめ。忙しい時にあーんを求めるとは悪魔か。でも甘やかす俺は大馬鹿者だな。
「あーんするから座って待ってろ。買ってきたものを冷蔵庫に入れるから」
「ボクが待ってるから早くしろよ」
俺がリムルくらいの時にこんな態度をとったら周りのおっさん達に甘えんなってゲンコツされただろうな。
国のことを耳にしたせいかガキの頃を思い出してしまった。だけど今は冷蔵庫に買った物を片付けるのが先だ。
***
「ほら、口開けろ」
「あーん♡お前のチョイスにしては美味いぞ。クラウス、お前も食べさせてやる」
「俺も?」
ミニホットケーキにクリームを薄く伸ばして挟んだだけのお菓子がそんなに美味いか?普段なら感想もなく「ごちそうさま」って言って自分だけ食べて終わるんだけどなぁ。なんか変なものを食べたのか?
「そうだ。ボクだけなんて不公平だろ。お前も食わせてやる」
「お、おう。いただきます」
リムルが差し出したフォークを口に含む。甘いけどクリームが薄いからしつこくないな。
「うん、なかなかいい味だったな。ご馳走さん」
「もっと食べさせてやってもいいぞ?」
「いや、もう夕食の準備もするし、食べ過ぎたらご飯が食べれないだろ」
「むぅ……まあいい。夕飯は何を作るつもりなんだ?」
「カレーだ。あとはサラダでも作るか」
「カレーか。サラダはいらないぞ」
「サラダも作るぞ」
「いらない」
俺達はキスしそうなくらい顔を近づけるがケーキみたいな甘いもんじゃない戦いに突入していく。
「喰え」
「いらない」
「ちゃんと喰え」
「いらない」
「く・え」
「いっらっなっいっ」
「……くえ!」
おもいっきり睨んでやる。
「いらないっ!」
リムルも負けじと睨んでくる。
「……サラダを食べたらデザートにフルーツヨーグルトだ」
「……仕方ないからサラダを食べてやってもいい」
交渉成立し、俺はキッチンに向かい、リムルはリビングに向かった。
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