わがまま坊っちゃんな主人と奴隷の俺

からどり

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3.買われた理由

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朝起きて、朝食を食べて、リムルに命じられて俺はこの家の執事の爺さんから仕事を教わることを中心に家事全般やらされた。掃除洗濯料理。庭の手入れまでなぜかやらされた。
リムルが家にいるときは俺のことを呼びつけて茶を入れろや肩を揉めなど命じてくる。
気に入らないとやり直しを食うから嫌々ながら真面目に動いた。
リムルは唐突にエロいことを命じようとして声が小さくなって結局命令できないことは数えられないくらいあった。
何日も経ったが今のところ、俺の尻は無事だった。

リムルの学校がない日は一緒に町にでかけたり、今のように庭で花を眺めたりした。

「クラウス、生活には慣れたか」

「ん、まあまあ慣れてきたな。俺なんかに皆親切にしてくれるし」

国は違うが同じ言葉と文字なので会話ができるおかげで意思疎通は問題なかった。

「ボクは優しい主人だろう」

腕を組んでふんぞり返るリムル。

「ああ、服や食事まで面倒見てもらって感謝してる」

「ふん、当然だ。奴隷の一人くらい養えないのに買うわけないだろ」

……ん?まさか俺の生活の金はこいつが出してるのか?

「おい、俺にいくら使ったんだ」

「気にするな。ボクは金持ちだからな」

「いや、そういう訳にもいかないだろ。働いて返すようにするから」

「ダメだ。お前はボクの物なんだから、お前はボクを楽しく愉快に過ごせるように動けば良いんだ」

「でも」

「うるさい!やっとヒーロー様の一番目の奴隷ヤヌアに似た顔を見つけたんだ。他のところで働かせたりするもんかっ!」

急に顔を真っ赤にして叫ぶリムル。

「え?」

「な、なんでもない。忘れろ」

「お、おう」

なにがなにやらわからないが、俺の顔が誰かの奴隷の一番目に似てるらしい。その誰かというのはその日の晩に分かった。

寝室で寛いでいる時間にリムルは本を読むことが多い。少しなら字が読める俺はアイツが読む「ヒーロ様の最愛奴隷 3 ~最下位からの最愛になった奴隷物語~」という題名が気になった。

「その本、面白いのか」

「ん、当然だ。面白くない本を読むなんて時間の無駄だろ」

「俺も読んでみていいか?」

「……特別に読ませてやる」

許可が出たので本棚から一巻目を手にした。リムルの正面で椅子に座ってパラパラとページを捲るとそれは漫画というもので絵がいっぱいあり男同士のエロいシーンもあるようだ。

内容は主人公の奴隷の男がヒーローという名の仕事も勉強も武術もすごいハイスペック貴族に買われる。ヒーローの優しさに惚れた主人公は他の奴隷達や貴族に邪魔されながらも健気に頑張る話だった。
ただこのヒーロー、呪いがかけられていて愛する人でないと挿入できない。たくさん奴隷を飼ってるのも呪いを解くために愛することができる奴を探しているから。で、一人ひとりとちゃんと愛を深めるためにヒーローは尻で受け止めているのだが呪いを解くほどの愛は生まれない。でも奴隷達を大切にするヒーロー。それを知った主人公は奴隷としてせめてヒーローを守りたいと決意して一巻が終わった。

「どうだった?」

読み終わって本を閉じた俺をリムルは期待を込めた瞳で見つめている。

「面白かったけど、なんつーか……」

「なんだ、歯切れの悪い。感動するだろっ」

現実だと尻が痛くなりそうな回数をこなしているヒーローが心配になって集中しづらい。

「あ、あぁ。主人公とヒーローには頑張ってほしいとは思うよ」

「そうだろ。ヒーロー様と主人公のことを応援したくなるだろ。クラウスもそう思ってくれて嬉しいよ」

そう満足そうに頷いていたが、急にさみしげな顔になった。一巻で出てきたヒーローが最初に手に入れたヤアヌの外見は俺に似ている。ヤアヌはヒーローの幸せを願い、愛を捧げている。ヒーローもヤアヌを信頼し腹心の部下と思っているのだが抱こうとするとできない。見守る系の当て馬臭がプンプンなのである。

「……なあ、僕に魅力はないのか」

寂しそうな声音でポツンと呟いたリムル。

「え、そんなことないぞ。見た目は良いし、その歳なら背もこれから伸びるだろ。性格は、優しいとこがあるし俺は嫌いじゃない」

思わず励ますような言葉を口にしていた。するとリムルはパッと表情を変えて笑みを浮かべる。

「そっか、そうか。お前みたいな鈍感な馬鹿に好かれても仕方ないが、ボクは優しいからな。特別にボクを慕っていいぞ」

この偉そうにツンツンしてる部分がなければ良いんだけどな。可愛くない奴だ。だけど帰る場所も行く場所も俺にはないし、移民に働く場所はないから結局コイツの下にいるのが一番安全だ。

「ああ、お前が主人でよかったよ」

「じゃあ……キスしろ」

「え?」

「ボクは優しいからな。ボクのことを好きだと言うお前が可哀想な思いをしないように練習させてやる」

今までで一番真っ赤になっているリムル。

「あ、ああ」

なんかこっちも恥ずかしくなってきた。俺はリムルの方に周り、その肩を掴んだ。
こっちを潤んだ目で見てくるのは反則だろ。年下のガキ、しかも口が悪いヤツにキスするだけなのに緊張するなんて変だろ。
俺は意を決しって顔を近づけ触れるだけのキスをした。

柔らかい唇が離れると目を開けたリムルと至近距離で目が合う。

「おやすみ」

赤い顔のままで照れ隠しなのかぶっきらぼうに言ってふらふらとベッドに潜り込んだリムル。
俺も同じベッドに入るんだが悶々として眠れなかった。
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