わがまま坊っちゃんな主人と奴隷の俺

からどり

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1.今と一年前

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俺が暮らしていた国が戦争に負けた。敗戦の知らせを聞くずっと前に戦地で捕まり、敵国の捕虜になった俺。そして、俺は……

冷たいっ

腹や胸を何か冷たいものが這っている!!?拷問っ!!

「うわああああああ!?」

「あはははっ! どうだっ!?クラウス。気持ち良く寝ているうちにスライムをパジャマの中に入れられる気分は!」

「おおおぉっ!!?」

俺の体を這いずり回り、やがて顔に乗っかり口と鼻を塞ごうとする小さいスライム。

「ほらほらぁ~?クラウス、早く逃げないと窒息しちゃうぞぉ?自慢の筋肉でなんとかしてみろよ」

寝起きの俺に嫌がらせをして楽しそうに眺めながら高笑いをする俺の主人。
あいつは周りの人から儚げだ、繊細だとか言われるくらい見た目だけは良い。黒い髪に白い肌。俺の身長が180cmくらいだからあいつは160cmもないかもしれない。俺よりずっと小柄で細い。神経質そうな釣り目とか弱そうな外見だから大人しそうに見えるが、性格は寝てる人間にスライムを放つほど大胆で最悪だ。労働奴隷で売られていた俺を買って、もう一年経つのに飽きもせずに毎日絡んでくる。

「ぐぬぬぅ……」

俺の顔にベタッと張り付く小さな青いスライムを手で剥がし床に投げ付けた。
青スライムはベチッと平べったくなり、すぐにぷよよんとスライムの形になった。何事もなかったかのようにプルルルルと震えながら窓の方へ移動していく。

「くくくっ、まだ余裕がありそうだな。じゃあ夜はもっと激しくしてやる!!」

そう言って無邪気に笑う主人。名前はリムル。
俺はこの悪魔みたいな主人の奴隷をして一年目だ。
俺の主人のリムルの通う学校は彼の屋敷からかなり離れた町にあった。だから今は学校のある町でマンションを借りて暮らしている。
俺は世話係兼性奴隷兼おもちゃとして連れてこられ、モンスターと科学と魔法のある不思議なこの町でのんびりリムルの世話をしながら生きている。

+++およそ一年前+++
俺が捕虜のまま国が降伏して戦争が終わったころだった。
見張りや労働場所で敵兵が話していた話を聞いた捕虜仲間で頭の良い奴から、外交とか人道的理由とか偉い人達の都合で捕まってた捕虜を国同士で交換するという噂が広がった。
そんな噂が流れてもしばらく俺は捕虜として過酷な労働をこなしていた。多分、国の話し合いの方では色々あったんだろう。
俺は捕虜の交換メンバーに選ばれたらしく、捕虜仲間達と国に帰れるはずだった。
だが俺達が自国への輸送中に、国へ戻っても居場所がないのか脱走を企ててたグループがいて、それに運悪く巻き込まれてしまったのだ。
運が悪いことに俺の近くでそのグループの一人が護衛兵にナイフを突きつけ脅していた。

「武器を捨てろ!ぶっ殺すぞ!」

その後はもう乱闘だ。護衛兵は国に帰りたい俺達も脱走者も全部一緒の敵国の兵士に見えるものだから片っ端から攻撃をしてくる。
どうやって逃げ切れたのか今も不思議で思い出すと震えるほど恐ろしいが、俺は運良く殺されずに逃げることが出来た。
日々の労働で疲れていて腹も減っている。走って逃げて追い込まれていた俺は気がつくと小さな村に忍び込んで畑の物を盗んでそのまま食べていた。あの後だから捕虜が逃げたという連絡が村にいき警戒するよう言われていたんだろうと思う。俺は村人達に捕まりボッコボコにされた。
そして戦後はどこも金がない。俺は兵隊に引き渡されることなく、食い扶持を減らすために手放されることになった子供と一緒に奴隷商に売り飛ばされた。

奴隷商は見た目や性格で選別し、俺は肉体労働系の奴隷として売り出された。俺が初売りされた場所は金持ちが好きそうな広くて綺麗な建物の一室だった。
奴隷は客に体の傷やら色々チェックされる。店で商品になっている間は手首には枷をはめられ足は歩ける程度に縛られていてほぼ裸だ。
肉体労働をする奴隷は大概いまいちな外見が多い。俺も筋肉以外イマイチだから労働奴隷として売られてたんだがな。そんな奴等の股間でプラプラしてるモノを見たい奴はいないので腰布は巻かれていた。

仕事の責任者っぽい客に紛れ込んでも異質だったのが黒髪の少年だった。客の顔を見たくなくて目を伏せていたら、今より背が低かったあいつが俺の前をうろつき出したのだ。

「おい! こいつの腰布を取れ」

リムルの第一声がこれだった。

「はい、ただいま」

奴隷商がいけすかないチビに恭しく頭を下げて俺の腰布を取る。周りには俺と同じように奴隷として売られている奴等がいる。そいつらまで俺の下半身を見てくるから俺は恥ずかしくて死にたくなった。思い出しても恥ずかしさで暴れて頭を壁で打ちたくなる。

「ふむ。恥じらう顔もいいな。性奴隷はこいつにしよう」

「えぇ!? 」

恥ずかしさで死にかけた俺より奴隷商が驚いた。この売り場は何度振り返っても肉体労働向けの奴隷しかいなかった。他の部屋にいるだろう性奴隷達は顔の良いガチムチから色気むんむんまで上玉を集めている。

「なんだ? 不満なのか?」

神経質そうな目が奴隷商を睨んだ。こんなチビが俺の主人になるなら俺は不満しかないぞ。

「いえいえとんでもない!! ただ、性奴隷にするには御主人様となる方々に逆らわないようにする教育が重要でして……」

性奴隷が高いのは外見はもちろんのこと、逆らわず、エッチのサービスもいいからだと売れ残りの奴から聞いたことがあった。だから奴隷商の心配は分かる。こんなチビが筋肉の塊みたいなオレを力で押さえつけれるように見えないもんな。

「そんなもの必要ないさ。こいつを買うと決めたからもうボクのものだ」

まだ金払ってお買い上げされてねーぞ。と奴隷の俺が思った。現実逃避をしたくて心のなかでツッコミが止まらない。

「かしこまりました。では料金は先払いでしてこれくらいで……」

奴隷商とリムルの間で交わされる会話。

「これでいい。早く契約書を持って来い」

リムルが差し出す小切手を見ながら奴隷商がニヤリと笑った。

「ありがとうございます。よろしければこちらで奴隷紋はおつけしましょうか」

「不要だ。早く連れて帰りたいから手続きを早くしてくれ」

「かしこまりました。手続きをしてまいりますので少々お待ち下さい」

奴隷商が足早に去って行った。

「お前の名前は?」

「……クラウスです」

「クラウスか。よろしくな。僕はリムルだ」

そう言って差し出された手を握り返すことは枷をされた俺にはできない。だからあいつは迷う事なく俺の下半身のプラプラを握ってきた。
俺の第三の手は自由だからそれで握手すれば仲良しだ。ってアホかっ。
心では馬鹿みたいな事を考えれるのだが、捕虜でボロボロになってさらに奴隷として売られると心の一部が麻痺していた。もうすでに諦めの境地にいる俺は抵抗する気持ちが生まれなかった。
プラプラを自分より小さくて細いガキに弄り回されながら奴隷商の手続きが終わるのを待っていた。

それからお買い上げされた俺はリムルの家に連れて来られた。そこは貴族街にある豪邸で奴隷を買うような金持ちが住む場所に相応しかった。
家に入るとリムルはまず俺に綺麗な服をくれた。

「これは?」

「見てわからないか?意外と馬鹿なんだな。服だ」

いやそれはわかる。なんで奴隷の俺に服をくれるんだよ。試着もしていないのにサイズ合うのか。破れた時の弁償はどうすんだろう。俺は訳が分からず混乱していた。

「あの……何故俺に服を」

「お前には今日からボクの世話係兼肉便器兼おもちゃになってもらおうと思ってな。そのための服だ」

性奴隷は裸でいつでもヤレルようにしてるんだと思ってたが、服を着ていいのか。というか性奴隷と玩具の違いはなんなんだ。わざわざ言うってことは違うんだろうが分からなかった。


「ああ、それからボクのこと様付けして敬語使うの禁止な」

「は……え?」

「クラウスは奴隷だ。ボクの命令は絶対だぞ。逆らったら奴隷商に売り飛ばすからな」

俺はこの日から主人のリムルに敬語を使わない奴隷になった。
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