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ダークサイド 第18話 「帝都攻略戦 後編」
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帝国で一番栄えている都市。
道は石畳で整備され、上下水道なども整っている最先端の都。
政治や文化、流行の最先端と言われた帝都。
だがそれは今や見る影も無い。
火の手が上がり、殺人・略奪・強姦等が巻き起こる。
平時であれば起こるはずのない、あるいは起こってもすぐに沈静化される犯罪。
『秩序』『規範』『モラル』
そういった言葉たちを何処かに置き去りにしてきたかのように、暴徒たちは都を蹂躙する。
扉は打ち破られ、けだものと化した男が女を襲う。
宝石など高級品が置かれている店の主人は暴徒たちに沈黙させられている。
整備されていた街並みは無惨に壊され、街の喧噪は悲鳴と絶叫とに塗り変えられている。
無秩序に混乱と破壊を繰り返す人々に、平時の冷静さは無い。
「ロゼッタ軍のジュダという将は、秩序と礼節を重んじる人だと思っていたのに……
それとも流石の彼でも人々の暴走を止める事は出来なかったのか?」
皇帝の居城。
この帝国において最も華美で、最も堅牢であると言われていた城。
さすがに暴徒の侵入やロゼッタ軍の侵攻は許していないが、それでも時間の問題と思われる。
街の様子を見ながら、疲労困憊と言った様子の『七聖剣将』ザッシュは苛立ちを隠せない。
苛立ちは暴徒と化した民衆へ、というよりも、それを止める事の出来ない自分の無力さに対してのものであるが。
「……分かりません。暴走を抑える事が出来ないのか、それとも抑える気が無いのか」
男の声に静かに答えたのは、一人の女性だった。
年齢はザッシュよりもやや若いだろう。
陶磁のような肌に物静かな口調。
彼女は『白色淑女』の名を持つ『帝国七聖剣将』の紅一点セラ。
ゆったりとしたドレスは、将軍というよりは貴婦人と言った方がしっくりくる。
「抑える気が無い?」
信じられないと言った様子でザッシュが聞き返す。
例え戦時中であっても、この若い将軍は民衆への暴力、強奪等を厳禁している。
軍人としてあるいは人として、それを禁止するのが普通であり、禁じないなどとは考えの中に無いのである。
「断定は出来ませんが、民衆やロゼッタ兵の中に扇動者が居るようです。
更には『アスティール牢獄』の罪人たちも解放されているようです」
セラの薄い藍色の瞳が、悲しそうに閉じられる。
彼女の、深窓の令嬢といった様子はザッシュ以上に『七聖剣将』らしくない。
「一体なぜ………いや、そうか」
ここに来て、ザッシュにもジュダの狙いが読めた。
非常時ゆえに、牢獄の囚人たちの安全を確保したわけでは無い。
ロゼッタ軍ジュダは帝都の混乱を引き起こし、守備兵士の無力化を図っているのだ。
それは選択肢の一つとしてはあったが、まず実行されないものだと思っていた。
破壊のみを目的とすれば、大混乱は望むところだ。
しかし、「破壊」と「侵攻」とは全く異なるものである。
混乱を引き起こすという策は、短期的には有利に戦況を展開する事が出来る。
しかし中長期的に見た場合、デメリットがあまりにも大きい。
秩序の崩壊は、帝都の住民や施設に多大な被害を及ぼす。
侵攻は敵を全滅させれば良いのではない。
荒れ地を占領したとしても、それでは意味が無い。
制圧した後も住民たちからの税収が必要であるし、医療や上下水道などのライフラインが大きく破壊されては復旧の為の資金もかかる。
「ロゼッタ軍は帝都の経済を重要視していないのかもしれません。
一度破壊して、帝都をロゼッタなりバーザルなりに移せばよいのですから。
さして重要では無いのでしょうね」
セラは、静かに溜め息を吐く。
その行為は帝国軍の敗北を認めたものであるかもしれない。
「セラさん……その…自分は『帝国七聖剣将』の一人で、帝国を守る事が任務なのに、こんな事を言うのも……」
歯切れ悪く言うザッシュに向けられたのは、優しげな微笑だった。
「行ってあげて。大丈夫、陛下は私が守りますから」
正直に言えばザッシュの武力は皇帝を守るのに、必要なものである。
だが、この青年は皇帝や帝国を守る為に『七聖剣将』となったのではない。
幼なじみの、帝国の開かれてはならない扉の守護者となった少女を守る為なのだ。
命を懸けてでも守りたい者が居る気持ちは、彼女にも理解出来る。
「………ありがとうございます」
数秒の沈黙の後、青年は簡潔にそれだけを述べ、深々と頭を下げる。
「お互い大切な方を守れると良いですね」
「はい! セラさんも!」
ザッシュは『鍵の聖女』のもとへと向かう。
幼い頃の約束を果たす為に。
謁見の広間。
この帝国において最も座り心地の良いとされていた皇帝の玉座。
しかし今は最も命の危険が大きい針のむしろ。
そこにはおどおどとした様子の『皇帝』が存在する。
まだ10歳にもならない若い皇帝は、それでも状況を察しているのか青白い顔をしている。
「陛下…やはりご無理をせずに、脱出された方がよろしいのではないですか?」
玉座にかかる小さな手は、がくがくと震えている。
それを止めるように、守るように、静かにセラの手が添えられる。
「セラ、ぼ、僕は皇帝なんだ。臣民を見捨てて、に、逃げるわけにはいかない」
優しい子供だと、セラは思う。
散っていく花びらを見て、泣き出してしまうほどに感受性の強い子供。
平穏な世であれば、彼は国民に慕われる良い皇帝となっていただろう。
セラには弟が居ないが、その分、この幼い皇帝を弟だと思って接してきた。
『お互いに臣下として失格ですね』
ロゼッタのエリィという少女とは、境遇が似ていたせいもあり、意気投合していた。
お互い、より良い国造りの為の、良い指導者を育てようと笑い合った。
しかし現実は皮肉にも、そのロゼッタが帝都を攻め立てている。
「良い芝居だ。陳腐ではあるが、滅亡する帝国皇帝とその忠臣は、後世まで一流の悲劇として残るかもしれないな」
からかうような口調と台詞を携えながら、男が広間へと足を踏み入れる。
女と見間違うかのような美麗な顔立ち。
長く艶やかな髪が歩む男に従い、流れる。
とてつもなく美しい男であるはずなのに、それ以上の恐怖を感じさせる存在。
「ロゼッタ軍騎士団長………ジュダ!!」
震える声と体を必死に抑えながら、セラは皇帝を守るように立つ。
「そうだ。だが、覚える必要は無い。どうせすぐに尽きる命だからな」
豪華な赤い絨毯を男が歩く。
それは、さながら浸食する人の形をした悪魔の歩み。
「止まりなさい! 絶対不可侵なる皇帝陛下の御前です!」
それが如何なる意味も持たない事を理解しながらも、セラは男に言い放つ。
「絶対不可侵? 少し前までならばそのような戯言も通じただろうが……」
ジュダの歩みは止まらない。
当然ながら双方の距離は縮まっていく。
「……貴方は何が目的なのですか?」
幼い皇帝を背に庇いながら、セラは気丈に問いかける。
まだ交渉の余地はあるはずだ。
皇帝という地位を簒奪する侵略者となるよりも、傀儡としてでも皇帝を操った方が今後の政治は有利に展開する。
大義名分を得る為に、ジュダは皇帝を生かしておく可能性も高いはずだ。
「さて…偽善に満ちた建前の王国論でも語れば、お前は満足するのか?」
「聡明とされる貴方であれば、一番合理的で効率的な方法を選択するはず。
つまりは『皇帝』を傀儡(かいらい)として、その裏で実権を握る……違いますか?」
この混乱を収め、大陸を征服する為にはベストと言える行動。
『昔から国を治めている皇帝』という血筋は絶やさないはずだ。
そんなセラの分析に、ジュダは微笑で応える。
(人間を生かして、支配するというのであればそうしただろう。くくっ、だが……)
何の予備動作も無しに、男の剣が振り下ろされる。
「っ!!」
皇帝である少年が息を飲むが、その一閃はセラを傷付けてはいなかった。
はらりと彼女のドレスの前部分だけが開かれる。
胸元からへその下までが一文字に切り裂かれ、形の良い柔らかな肌が露出する。
「……………」
セラは男を睨み付ける。
「くくっ、『白色淑女』は文官だと聞いていたが、案外気丈だな……
良いぞ、気に入った」
ジュダは薄い笑みを漏らす。
セラは自惚れでなく、客観的に自分の魅力を知っていたので、男の行動は予想された選択肢の一つであった。
彼女は静かな溜め息の後に、ジュダに伝える。
「あちらの部屋が寝所となっています。ですが、条件が一つあります」
「皇帝の延命だな……いいだろう。お前次第だが」
ジュダがマントを翻し、寝所へと向かう。
「セ、セラ姉さん……」
詳細は理解出来ていないだろうが、愚かではない少年はある程度察しているのだろう。
悔しさと不安とで、少年の顔に涙が流れる。
セラの細い指が、頬を流れる一滴をすくい取る。
「大丈夫……貴方にはまだまだ勉強して貰って、良い皇帝になって貰うのですから」
弟のような少年を安心させる為に、セラは優しく微笑んだ。
乾いた衣擦れの音が響く。
断続していたその音は、不意に中断させられる。
「とりあえずは、そこまででいい。近くに来い」
まばゆいばかりの女の肌に、その身体を隠すような純白の下着。
一番上のドレスを脱いだ段階で、ジュダはセラを招き寄せる。
「……………」
強く唇を噛みしめ、羞恥に耐えながら、男の近くへ寄る。
細い手首を掴んだ途端、わずかにびくりと反応する。
そのまま間近へと引き寄せ、柔らかい肌と体温を味わう。
「今からこんな状態では、最後まで保たないぞ? そして最後まで保たなければ……」
「……分かっています」
ジュダの言葉を封じるように、セラはゆっくりと指を動かす。
男の服を脱がし、露わになった男根を両手で包み込む。
そっと触れるか触れないかの状態のまま、両手の指を蠢(うごめ)かせる。
くすぐられているような微弱な刺激がしばらく続いたかと思うと、やや強めに竿を握る。
「んっ………」
決意したかのような吐息と共に、やや硬度を増したそれを口に含む。
先端のみをくわえ、それを舌でつつく。
一度、口が離れ細い手が前後する。
「ほう」
ジュダが感嘆の声を上げる。
押し寄せては引いていく刺激により、男の一物は性交の準備を終えていた。
「……………」
無言のまま、セラは次の段階へと進む。
誇張した竿に、ゆっくりと見せつけるように自らの胸を近づける。
白い下着をずらし、胸の谷間へ挟み込む。
ジュダの半分ほどが埋没したところで、彼女は自らの乳房を両脇から挟み込む。
「んっ……っ…………ふっ……ん……」
男の反応を探りながら、前後左右に腕を動かす。
腕の動きに合わせるように、柔らかな胸が形を変える。
「なかなか手慣れたものだな? いったいどこで覚えた?」
「………何度か繰り返せば、自然と覚えます」
暖かい包まれるような感覚、さらさらとした絹の感触、女性の象徴ともいえる胸に愛撫される事による視覚的効果。
それら全てが、男の欲情を高めさせる。
さらにセラは自らの唾を胸へと垂らす。
ローションの代わりとなる唾液は、小さな空気の泡を伴いながら、ちゅくちゅくと水音を響かせる。
「…っ……ん…っ……はっ………んっ……」
身体を揺すりながら、漏れる女の吐息は艶めかしい。
セラの肩に手を置きながら、ジュダは口の端を吊り上げる。
「せっかくだ、最初をそろそろ出しておこうか。どこに出して貰いたい?」
「……っ……ん…どこへでも…ご勝手に……」
冷めた口調のまま女は、動きを繰り返す。
「くくっ…普通ならば飲ませて屈辱感を与えるところだが、お前はそれではつまらぬな」
愉しげな口調で呟くと、ジュダは自らの肉棒を胸へと強く擦りつける。
「…っ!?」
「このまま汚してやるとしよう」
ぐいと、セラの肩を引き寄せ密着させる。
そのままの動きを継続する女に合わせて、男の腰がわずかに跳ねる。
「きゃ!?」
先端からの白濁液は、彼女の胸から首筋にかけてに降りかかる。
うっすらと肌に浮かんだ汗と白濁とが混じる。
純白な汚れない肌は、男の欲望に汚される。
「汚れていないから、汚したくなる。人間とは、所詮(しょせん)そんなものだろう?」
「…っ……まるで自分が人間ではなく、神にでもなった発言ですこと」
冷静に自らに付着した液体を拭う。
セラの興味無さそうな仕草に、ジュダは笑みを浮かべる。
「良いことを思いついた」
「はっ……くっ……くうっ……んっ…………っあ」
女の苦しげな声が聞こえる。
正確に表現すれば、何かに耐えるような抑える声。
脚をぴったりと閉じ、自らの身体を抱きかかえる様子は、一層淫靡さを深める。
「身体の外から働きかける『魔眼』には抵抗出来ても、内から責められる快楽には抵抗できまい?」
ベッドの上で絶え間ない快楽を与えられ、それでもそれに流されまいと耐えているセラとは対照的に、ジュダは静かな笑みを浮かべている。
「んっ…ああっ………くっ…くぅ……こんな………うくっ……」
体中を火照らせ、全身に汗を流しながら漏れる喘ぎは、ひどく扇情的なものだ。
「身体の中に直接召喚してやった。どうだ、媚薬を直接中に入れられた感覚は?」
「んはっ!……ううっ………しょ…っ……召喚!?………貴方…いったい……」
男は一見すれば天使のような微笑を浮かべながら、女へと近づく。
その手はゆっくりと女の秘所へと伸びる。
「ひっ…いっ…いやっ………あ………っ……くっ…………」
セラの脚は必死に閉じようとする。
しかし、抗いがたい悦楽にゆるゆると力無く脚が開く。
「くくっ…下着の上からでも濡れているのが分かるぞ?」
耳元で囁くように、声をかける。
その吐息にすらも反応するのか、セラの身体がぴくりと震える。
「うっ……んっ…う、うそ……ああっ…んっ……」
薄布の、一番水気を含む部分を指が上下する。
溢れ出るような快楽に耐えるように、脚が閉じジュダの手を挟み込む。
動く男の手を弱々しく握る。
「んっ…ああっ……あ……くっ………はっ…んっ…」
しかし耐えられないのか、強く拒む様子は無く、男にされるがままの状態となる。
「淫獣2匹を、直接体内で暴れさせているというのに、よく耐えるものだ」
指先がするりと、ショーツの前部分を押し込む。
一番敏感な部分を強めに押すようにされ、意に反してセラの身体が反応する。
「ああっ! …っく…んっ……んんんっ……」
顎が勝手に上がり、刺激から逃がれようとする腰は押さえ込まれる。
「くくっ……」
ジュダの指がショーツの中へと侵入する。
ちゅくっという水が湿る音が響き、それは一層セラの羞恥心を煽る。
「ふっ……うっ……ううっ…んん…あっ………」
喘ぎ、乱れる女を眺めながら、男は口の端を吊り上げる。
「…んっ…うあっ……あっ、あああっ!?」
セラの声に驚きが混じる。
不意にジュダが、彼女の両脚を広げて見せたからだ。
まばゆいばかりの太股と、じんわりと湿ったショーツとが露わになる。
「くくっ……もう、充分か? 懇願してみろ。そうすれば最高の快楽をくれてやる」
「………だっ……はっ…んっ…誰が……」
セラの言葉は最後まで続かなかった。
荒々しく肩を掴まれ、シーツに押し倒される。
同時に覆い被さるような男の身体に反応してしまう。
「くあっ……あっ…あああっ……やっ……いやっ!」
精神では明らかな拒絶。
しかし、肉体は無理矢理に性欲を増強させられている状態。
拒もうとする手は、ジュダの身体に触れると、逆にそれを引き寄せようとする。
また、男の身体を抱き寄せようとすれば、セラの身体はそれを拒む。
「んっ、ふあっ……あ…あっ……んんっ……」
顎の下にまで流れた女の涎を、すくい上げるように舌が動く。
細い首筋からゆるゆるとジュダの舌が上がっていく。
「…あっ…や、いやっ……あ…んっ……んんんっ……む…んくっ…」
閉じられようとする唇は、しかし欲望に抗えないのかやがて男の舌を迎え入れる。
舌と舌とがこれ以上無いほどに絡み合い、淫欲の密となる。
「ぷ…んはっ………あああ……」
湿る水音に続いて、名残惜しむような女の吐息。
二人の口の間には唾液の糸が繋がっており、それが途切れる。
「どうだ? 欲しいか?」
「………………ぃ」
消え入りそうな声と共に、セラはわずかに頷く。
男の口元が満足気な笑みへと変わる。
「くくくっ…」
「はっ、ちがっ…うっ……ああっ……」
耐えきれない程の羞恥に、女は顔中を真っ赤に染める。
「ははははっ…約束通りにくれてやる」
女の身体を強引に、うつ伏せにさせる。
「ひっ…あ……」
眼前に広がる丸みを帯びた尻に手をかける。
想像通りかそれ以上の弾力を愉しみながら、薄布に手をかける。
ショーツを脱がさず、わずかにずらし、自らのモノをあてがう。
「あっ…う…ああ……」
悲鳴とも歓喜とも、拒絶とも了承とも取れる声が漏れる。
「挿入(いれ)るぞ。せいぜい長い時間保たせる事だ」
「あっ……あああっ! ああ!」
柔らかい肉をかき分け、侵入する。
充分に濡れているそこは、潤滑油を満たし男を迎え入れる。
「う、あぁ、んっ……んふぁ、あっ…あ、ああっ…」
貫かれる度に、柔らかい身体はぴくぴくと反応する。
まるでその都度、微弱の電流を流されているかのように。
「んはっ……な、何…ああっ……こっ、こんなの……ああっ」
肉が触れ合う音と、湿った水音と、ぎしぎしと軋むベッドの音。
男の律動に合わせて、セラの口から勝手に喘ぎが漏れる。
「くぅ…んんん………あ、はっ……はんっ……ああ……」
腰が突き入れられれば、突き入れられるほどに女の疼きが大きくなる。
吸収され減っていく命の代わりに、熱を代替させられるように。
「うあっ…ああっ、あ、ん…はっ………あああっ」
喘ぐ事しか許されない。
深く挿入されるごとに息が詰まるような快楽。
心地よい脱力感に流されそうになる。
「あ……あ、あ、っ…ぅああっ……」
薄れていく意識の中、それでも繋ぎ止められるのは彼女が守るべき少年の存在。
同年代の友人が居ない孤独な皇帝。
そんな状況にあっても真っ直ぐに育っていた少年。
『セラはまるでお姉さんみたいだ。二人の時はそう呼んでいい?』
ごめんなさい、貴方を守るって誓ったのに。
『えっと………セラ姉さん』
ごめんなさい、貴方を守るのが私の役目なのに。
『良い皇帝になりたいんだ。だから、時には僕を叱って欲しいんだ』
ごめんなさい、貴方を守れない…
『姉さん、ずっと僕を守ってね』
ああ、何が『白色淑女』だろう。
何が『七聖剣将』だろう。
「セラ姉さん…」
「!?」
背後からの声。
聞き覚えのあるその声は少年のもの。
気が付けば、セラを背後から犯しているのは少年だった。
「な…そっ……あっ、駄目っ!!」
「姉さん…僕、もう……ああっ…我慢できない!」
感極まったかのような少年の虚ろな表情。
「だっ、駄目……んっ…です…あっ、ああっ…」
見ず知らずの男に犯されていた。
それだけなら、まだ耐えられる。
男に優越感を与えておいてやればいい。
身体を支配したとしても、心までは支配出来ないのだから。
そう思って耐えてきた。
しかし、少年の姿を模す事により、その不可侵であるはずの心までも犯される。
「姉さん…姉さん……」
熱病に冒されたように、うわごとのように呟く。
腰が前後し、快楽と後悔と罪悪感と愛情とがブレンドされる。
越えてはならない行為だからこそ、人間は興奮を覚える。
(業の深い生き物だ…人間というのは)
透き通るような男の声が、背中の少年の声と重なる。
「うっ…あああっ…あ、ああっ……あああああっ…」
喘ぎと慟哭とが含まれる声。
セラの意識、心の壁が静かに崩される。
「あああっ…あ…あ………んっ…………ああああああああっ!!」
背を仰け反らせ、身体全体を震わせる。
例えようもない悦楽に呼吸すらも止まる感覚。
「なかなかだったぞ…最後の『七聖剣将』」
遠く男の声が聞こえたような気がした。
炎が上がる。
帝国の象徴とも言える居城と、そして『鍵の聖女』の住む塔が燃える。
「ごめん……俺は約束を守れなかった」
炎が燃え上がる。
火柱はますます強くなっていく。
「ううん、ザッシュちゃんは約束を守ってくれてるよ。
今だってあたしを守ってくれている。
ずっとずうっと守ってくれてたんだもん。ちゃんと知ってるよ」
『鍵の聖女』が、否、幼なじみの少女が優しく微笑む。
「シスリア……」
「ザッシュ……」
炎に照らされる二つの影が、ゆっくりと一つに重なる。
帝国の崩壊。
それを守ってきたが故に、彼女は囚われていた。
だから帝国が崩壊した今、彼女は解放された。
『鍵の聖女』から『ザッシュの幼なじみ』へと戻ったのだ。
「ふふっ……」
幼なじみの少女が手を差し出す。
「……こういう時は、女の方が堂々としてるな」
恭しくその細く白い手を受け取る。
『鍵の聖女』の正装、純白の神官服に身を包んだ少女は、炎に照らされキラキラと輝く。
「そうかな? くすっ、ザッシュちゃんが昔っから照れ屋さんだからじゃないかな」
「…ちょっと黙っててくれよ」
『七聖剣将』も『鍵の聖女』も関係ない。
幼なじみの普通の男女が、そこに居るだけ。
不器用だが慎重にシスリアの細い指に、指輪をはめる。
左手の薬指に輝く夫婦となった証。
「ふふっ……嬉しいな」
満面の笑み。
強くなっていく炎に照らされ、少女の亜麻色の髪は、花冠を付けているかのように輝く。
「俺も……そうだ」
照れながらも、はっきりとザッシュは答える。
「ザッシュちゃん……ううん、ザッシュ………行こっか」
「……ああ」
ザッシュの右手には白銀の剣。
左手に最愛の女性の手を握り、ゆっくりと歩み出す。
炎の中へゆっくりと。
まるでバージンロードを歩む二人のように。
「ずっと手を離さないでね」
「当たり前だ」
二人の一つの影は、ゆっくりと炎に溶け込んでいった。
「鍵は解かれた。地に染みこむのは紅い憎悪……
敷かれた紅い絨毯の先には、開かれてはならない扉」
混乱が彩る喧噪の中、ただ一人だけは別世界の住人であるかのような男。
炎上する帝国の居城から火の粉が舞い、ジュダの髪を舞い上げる。
「仕上げだ……門は開かれる」
ゆっくり地へと手を置く。
置かれた手から広がる光は、水路を流れる水のように四方八方へと広がる。
帝都全てを覆う光の網は、複雑な紋様を示す。
混乱の極致にある戦場で、それに気付いた者が何人居ただろうか?
それは都市全体を覆う、魔法陣。
帝都に生きる全ての者を対象とした、喰らい尽くす巨大な顎。
帝国兵のみならず、帝都の住民たち、さらにはロゼッタ兵までも。
生命力を吸収されるその中において、生き残れるのはごくわずか。
「ははっ! ははははははははっ!!」
都市の一つが消え、魔界への門が開く。
大地が割れ、裂け目からは魔物と呼ばれるものたちが溢れ出す。
魔族、魔獣が溢れる闇の世界。
魔王が統治する暗黒の世界が、再び始まる。
世界は闇に支配された。
To Be Continude・・・・
あとがき
とりあえず、一段落、着きましたね。
ジュダが帝都を制圧(虐殺)して、魔界と繋がる門を開ける。
門から溢れる魔物たち……
(補足(蛇足)説明:魔界へと繋がる門を開けるには、鍵と多くの命が必要らしいっす。
鍵の役割が、まんま「鍵の聖女」の命。
門をこじ開けるのに必要なのが、都市一つ分くらいの人々の命。)
こうして世界は闇の時代へと突入していくわけですね。
この後は、ジュダはRPGのラスボスっぽく、玉座に座って勇者を待つだけです。
『七聖剣将』の『白色淑女』は当初、二重人格っていう設定でした。
皇帝があっさりと殺され、主人格のセラが別の人格に変更するって感じ。
ちなみに『紅の執行人 ティアリス』っていう人に変わって、ハードなエロ(?)に展開する予定だったんですが、性格や口調がヘルデと被ったり、「ハードなエロも飽きた」という俺の内なる声により、たんなる優しい(無気力な)お姉さんになりましたとさ。
今回のエロシーンは男の夢、「パイ○リ」(以前やりましたっけ?)
聞いた話では、そんなに気持ち良くないとか(おい)
なんだか、挟まれてるっていうシチュエーションを楽しむらしいですよ。
小説なんで、文章を膨らませましたが……
あと、後半の媚薬プレイ(?)は書いてて楽しかった。
普段クールな人の乱れる姿って最高ですよね!
両ふとももをくねらせて、もじもじしてるシーンとかエロい(笑)
ザッシュとシスリアについては、ロード○島伝説で似たようなシーンがありました。
あと、アリスソフトの「むげんほうよう(だったか? 金持ちだけど寿命が短い人の話)」
で、屋上で二人だけの結婚式、後に飛び降りってシチュエーション。
ああ、儚い、悲しい……リアル世界ではご免被る話ですが、小説内では燃えます。
全てから解放され、幼なじみの少女となった女の子と結婚。
ああ、いいなぁ……
俺も幼なじみの可愛い女の子が欲しかったなぁ。
朝、学校へ行く時に「家が近いから」という理由で起こしに寄ってくれるんすよ。
で、ベッドで寝ている主人公(俺)を「いつまで寝てるのよ!」と起こしてくれる。
あーあ、(エロゲーに出てくる)幼なじみの女の子、道端に落ちてないかなぁ(←妄想し過ぎ)
道は石畳で整備され、上下水道なども整っている最先端の都。
政治や文化、流行の最先端と言われた帝都。
だがそれは今や見る影も無い。
火の手が上がり、殺人・略奪・強姦等が巻き起こる。
平時であれば起こるはずのない、あるいは起こってもすぐに沈静化される犯罪。
『秩序』『規範』『モラル』
そういった言葉たちを何処かに置き去りにしてきたかのように、暴徒たちは都を蹂躙する。
扉は打ち破られ、けだものと化した男が女を襲う。
宝石など高級品が置かれている店の主人は暴徒たちに沈黙させられている。
整備されていた街並みは無惨に壊され、街の喧噪は悲鳴と絶叫とに塗り変えられている。
無秩序に混乱と破壊を繰り返す人々に、平時の冷静さは無い。
「ロゼッタ軍のジュダという将は、秩序と礼節を重んじる人だと思っていたのに……
それとも流石の彼でも人々の暴走を止める事は出来なかったのか?」
皇帝の居城。
この帝国において最も華美で、最も堅牢であると言われていた城。
さすがに暴徒の侵入やロゼッタ軍の侵攻は許していないが、それでも時間の問題と思われる。
街の様子を見ながら、疲労困憊と言った様子の『七聖剣将』ザッシュは苛立ちを隠せない。
苛立ちは暴徒と化した民衆へ、というよりも、それを止める事の出来ない自分の無力さに対してのものであるが。
「……分かりません。暴走を抑える事が出来ないのか、それとも抑える気が無いのか」
男の声に静かに答えたのは、一人の女性だった。
年齢はザッシュよりもやや若いだろう。
陶磁のような肌に物静かな口調。
彼女は『白色淑女』の名を持つ『帝国七聖剣将』の紅一点セラ。
ゆったりとしたドレスは、将軍というよりは貴婦人と言った方がしっくりくる。
「抑える気が無い?」
信じられないと言った様子でザッシュが聞き返す。
例え戦時中であっても、この若い将軍は民衆への暴力、強奪等を厳禁している。
軍人としてあるいは人として、それを禁止するのが普通であり、禁じないなどとは考えの中に無いのである。
「断定は出来ませんが、民衆やロゼッタ兵の中に扇動者が居るようです。
更には『アスティール牢獄』の罪人たちも解放されているようです」
セラの薄い藍色の瞳が、悲しそうに閉じられる。
彼女の、深窓の令嬢といった様子はザッシュ以上に『七聖剣将』らしくない。
「一体なぜ………いや、そうか」
ここに来て、ザッシュにもジュダの狙いが読めた。
非常時ゆえに、牢獄の囚人たちの安全を確保したわけでは無い。
ロゼッタ軍ジュダは帝都の混乱を引き起こし、守備兵士の無力化を図っているのだ。
それは選択肢の一つとしてはあったが、まず実行されないものだと思っていた。
破壊のみを目的とすれば、大混乱は望むところだ。
しかし、「破壊」と「侵攻」とは全く異なるものである。
混乱を引き起こすという策は、短期的には有利に戦況を展開する事が出来る。
しかし中長期的に見た場合、デメリットがあまりにも大きい。
秩序の崩壊は、帝都の住民や施設に多大な被害を及ぼす。
侵攻は敵を全滅させれば良いのではない。
荒れ地を占領したとしても、それでは意味が無い。
制圧した後も住民たちからの税収が必要であるし、医療や上下水道などのライフラインが大きく破壊されては復旧の為の資金もかかる。
「ロゼッタ軍は帝都の経済を重要視していないのかもしれません。
一度破壊して、帝都をロゼッタなりバーザルなりに移せばよいのですから。
さして重要では無いのでしょうね」
セラは、静かに溜め息を吐く。
その行為は帝国軍の敗北を認めたものであるかもしれない。
「セラさん……その…自分は『帝国七聖剣将』の一人で、帝国を守る事が任務なのに、こんな事を言うのも……」
歯切れ悪く言うザッシュに向けられたのは、優しげな微笑だった。
「行ってあげて。大丈夫、陛下は私が守りますから」
正直に言えばザッシュの武力は皇帝を守るのに、必要なものである。
だが、この青年は皇帝や帝国を守る為に『七聖剣将』となったのではない。
幼なじみの、帝国の開かれてはならない扉の守護者となった少女を守る為なのだ。
命を懸けてでも守りたい者が居る気持ちは、彼女にも理解出来る。
「………ありがとうございます」
数秒の沈黙の後、青年は簡潔にそれだけを述べ、深々と頭を下げる。
「お互い大切な方を守れると良いですね」
「はい! セラさんも!」
ザッシュは『鍵の聖女』のもとへと向かう。
幼い頃の約束を果たす為に。
謁見の広間。
この帝国において最も座り心地の良いとされていた皇帝の玉座。
しかし今は最も命の危険が大きい針のむしろ。
そこにはおどおどとした様子の『皇帝』が存在する。
まだ10歳にもならない若い皇帝は、それでも状況を察しているのか青白い顔をしている。
「陛下…やはりご無理をせずに、脱出された方がよろしいのではないですか?」
玉座にかかる小さな手は、がくがくと震えている。
それを止めるように、守るように、静かにセラの手が添えられる。
「セラ、ぼ、僕は皇帝なんだ。臣民を見捨てて、に、逃げるわけにはいかない」
優しい子供だと、セラは思う。
散っていく花びらを見て、泣き出してしまうほどに感受性の強い子供。
平穏な世であれば、彼は国民に慕われる良い皇帝となっていただろう。
セラには弟が居ないが、その分、この幼い皇帝を弟だと思って接してきた。
『お互いに臣下として失格ですね』
ロゼッタのエリィという少女とは、境遇が似ていたせいもあり、意気投合していた。
お互い、より良い国造りの為の、良い指導者を育てようと笑い合った。
しかし現実は皮肉にも、そのロゼッタが帝都を攻め立てている。
「良い芝居だ。陳腐ではあるが、滅亡する帝国皇帝とその忠臣は、後世まで一流の悲劇として残るかもしれないな」
からかうような口調と台詞を携えながら、男が広間へと足を踏み入れる。
女と見間違うかのような美麗な顔立ち。
長く艶やかな髪が歩む男に従い、流れる。
とてつもなく美しい男であるはずなのに、それ以上の恐怖を感じさせる存在。
「ロゼッタ軍騎士団長………ジュダ!!」
震える声と体を必死に抑えながら、セラは皇帝を守るように立つ。
「そうだ。だが、覚える必要は無い。どうせすぐに尽きる命だからな」
豪華な赤い絨毯を男が歩く。
それは、さながら浸食する人の形をした悪魔の歩み。
「止まりなさい! 絶対不可侵なる皇帝陛下の御前です!」
それが如何なる意味も持たない事を理解しながらも、セラは男に言い放つ。
「絶対不可侵? 少し前までならばそのような戯言も通じただろうが……」
ジュダの歩みは止まらない。
当然ながら双方の距離は縮まっていく。
「……貴方は何が目的なのですか?」
幼い皇帝を背に庇いながら、セラは気丈に問いかける。
まだ交渉の余地はあるはずだ。
皇帝という地位を簒奪する侵略者となるよりも、傀儡としてでも皇帝を操った方が今後の政治は有利に展開する。
大義名分を得る為に、ジュダは皇帝を生かしておく可能性も高いはずだ。
「さて…偽善に満ちた建前の王国論でも語れば、お前は満足するのか?」
「聡明とされる貴方であれば、一番合理的で効率的な方法を選択するはず。
つまりは『皇帝』を傀儡(かいらい)として、その裏で実権を握る……違いますか?」
この混乱を収め、大陸を征服する為にはベストと言える行動。
『昔から国を治めている皇帝』という血筋は絶やさないはずだ。
そんなセラの分析に、ジュダは微笑で応える。
(人間を生かして、支配するというのであればそうしただろう。くくっ、だが……)
何の予備動作も無しに、男の剣が振り下ろされる。
「っ!!」
皇帝である少年が息を飲むが、その一閃はセラを傷付けてはいなかった。
はらりと彼女のドレスの前部分だけが開かれる。
胸元からへその下までが一文字に切り裂かれ、形の良い柔らかな肌が露出する。
「……………」
セラは男を睨み付ける。
「くくっ、『白色淑女』は文官だと聞いていたが、案外気丈だな……
良いぞ、気に入った」
ジュダは薄い笑みを漏らす。
セラは自惚れでなく、客観的に自分の魅力を知っていたので、男の行動は予想された選択肢の一つであった。
彼女は静かな溜め息の後に、ジュダに伝える。
「あちらの部屋が寝所となっています。ですが、条件が一つあります」
「皇帝の延命だな……いいだろう。お前次第だが」
ジュダがマントを翻し、寝所へと向かう。
「セ、セラ姉さん……」
詳細は理解出来ていないだろうが、愚かではない少年はある程度察しているのだろう。
悔しさと不安とで、少年の顔に涙が流れる。
セラの細い指が、頬を流れる一滴をすくい取る。
「大丈夫……貴方にはまだまだ勉強して貰って、良い皇帝になって貰うのですから」
弟のような少年を安心させる為に、セラは優しく微笑んだ。
乾いた衣擦れの音が響く。
断続していたその音は、不意に中断させられる。
「とりあえずは、そこまででいい。近くに来い」
まばゆいばかりの女の肌に、その身体を隠すような純白の下着。
一番上のドレスを脱いだ段階で、ジュダはセラを招き寄せる。
「……………」
強く唇を噛みしめ、羞恥に耐えながら、男の近くへ寄る。
細い手首を掴んだ途端、わずかにびくりと反応する。
そのまま間近へと引き寄せ、柔らかい肌と体温を味わう。
「今からこんな状態では、最後まで保たないぞ? そして最後まで保たなければ……」
「……分かっています」
ジュダの言葉を封じるように、セラはゆっくりと指を動かす。
男の服を脱がし、露わになった男根を両手で包み込む。
そっと触れるか触れないかの状態のまま、両手の指を蠢(うごめ)かせる。
くすぐられているような微弱な刺激がしばらく続いたかと思うと、やや強めに竿を握る。
「んっ………」
決意したかのような吐息と共に、やや硬度を増したそれを口に含む。
先端のみをくわえ、それを舌でつつく。
一度、口が離れ細い手が前後する。
「ほう」
ジュダが感嘆の声を上げる。
押し寄せては引いていく刺激により、男の一物は性交の準備を終えていた。
「……………」
無言のまま、セラは次の段階へと進む。
誇張した竿に、ゆっくりと見せつけるように自らの胸を近づける。
白い下着をずらし、胸の谷間へ挟み込む。
ジュダの半分ほどが埋没したところで、彼女は自らの乳房を両脇から挟み込む。
「んっ……っ…………ふっ……ん……」
男の反応を探りながら、前後左右に腕を動かす。
腕の動きに合わせるように、柔らかな胸が形を変える。
「なかなか手慣れたものだな? いったいどこで覚えた?」
「………何度か繰り返せば、自然と覚えます」
暖かい包まれるような感覚、さらさらとした絹の感触、女性の象徴ともいえる胸に愛撫される事による視覚的効果。
それら全てが、男の欲情を高めさせる。
さらにセラは自らの唾を胸へと垂らす。
ローションの代わりとなる唾液は、小さな空気の泡を伴いながら、ちゅくちゅくと水音を響かせる。
「…っ……ん…っ……はっ………んっ……」
身体を揺すりながら、漏れる女の吐息は艶めかしい。
セラの肩に手を置きながら、ジュダは口の端を吊り上げる。
「せっかくだ、最初をそろそろ出しておこうか。どこに出して貰いたい?」
「……っ……ん…どこへでも…ご勝手に……」
冷めた口調のまま女は、動きを繰り返す。
「くくっ…普通ならば飲ませて屈辱感を与えるところだが、お前はそれではつまらぬな」
愉しげな口調で呟くと、ジュダは自らの肉棒を胸へと強く擦りつける。
「…っ!?」
「このまま汚してやるとしよう」
ぐいと、セラの肩を引き寄せ密着させる。
そのままの動きを継続する女に合わせて、男の腰がわずかに跳ねる。
「きゃ!?」
先端からの白濁液は、彼女の胸から首筋にかけてに降りかかる。
うっすらと肌に浮かんだ汗と白濁とが混じる。
純白な汚れない肌は、男の欲望に汚される。
「汚れていないから、汚したくなる。人間とは、所詮(しょせん)そんなものだろう?」
「…っ……まるで自分が人間ではなく、神にでもなった発言ですこと」
冷静に自らに付着した液体を拭う。
セラの興味無さそうな仕草に、ジュダは笑みを浮かべる。
「良いことを思いついた」
「はっ……くっ……くうっ……んっ…………っあ」
女の苦しげな声が聞こえる。
正確に表現すれば、何かに耐えるような抑える声。
脚をぴったりと閉じ、自らの身体を抱きかかえる様子は、一層淫靡さを深める。
「身体の外から働きかける『魔眼』には抵抗出来ても、内から責められる快楽には抵抗できまい?」
ベッドの上で絶え間ない快楽を与えられ、それでもそれに流されまいと耐えているセラとは対照的に、ジュダは静かな笑みを浮かべている。
「んっ…ああっ………くっ…くぅ……こんな………うくっ……」
体中を火照らせ、全身に汗を流しながら漏れる喘ぎは、ひどく扇情的なものだ。
「身体の中に直接召喚してやった。どうだ、媚薬を直接中に入れられた感覚は?」
「んはっ!……ううっ………しょ…っ……召喚!?………貴方…いったい……」
男は一見すれば天使のような微笑を浮かべながら、女へと近づく。
その手はゆっくりと女の秘所へと伸びる。
「ひっ…いっ…いやっ………あ………っ……くっ…………」
セラの脚は必死に閉じようとする。
しかし、抗いがたい悦楽にゆるゆると力無く脚が開く。
「くくっ…下着の上からでも濡れているのが分かるぞ?」
耳元で囁くように、声をかける。
その吐息にすらも反応するのか、セラの身体がぴくりと震える。
「うっ……んっ…う、うそ……ああっ…んっ……」
薄布の、一番水気を含む部分を指が上下する。
溢れ出るような快楽に耐えるように、脚が閉じジュダの手を挟み込む。
動く男の手を弱々しく握る。
「んっ…ああっ……あ……くっ………はっ…んっ…」
しかし耐えられないのか、強く拒む様子は無く、男にされるがままの状態となる。
「淫獣2匹を、直接体内で暴れさせているというのに、よく耐えるものだ」
指先がするりと、ショーツの前部分を押し込む。
一番敏感な部分を強めに押すようにされ、意に反してセラの身体が反応する。
「ああっ! …っく…んっ……んんんっ……」
顎が勝手に上がり、刺激から逃がれようとする腰は押さえ込まれる。
「くくっ……」
ジュダの指がショーツの中へと侵入する。
ちゅくっという水が湿る音が響き、それは一層セラの羞恥心を煽る。
「ふっ……うっ……ううっ…んん…あっ………」
喘ぎ、乱れる女を眺めながら、男は口の端を吊り上げる。
「…んっ…うあっ……あっ、あああっ!?」
セラの声に驚きが混じる。
不意にジュダが、彼女の両脚を広げて見せたからだ。
まばゆいばかりの太股と、じんわりと湿ったショーツとが露わになる。
「くくっ……もう、充分か? 懇願してみろ。そうすれば最高の快楽をくれてやる」
「………だっ……はっ…んっ…誰が……」
セラの言葉は最後まで続かなかった。
荒々しく肩を掴まれ、シーツに押し倒される。
同時に覆い被さるような男の身体に反応してしまう。
「くあっ……あっ…あああっ……やっ……いやっ!」
精神では明らかな拒絶。
しかし、肉体は無理矢理に性欲を増強させられている状態。
拒もうとする手は、ジュダの身体に触れると、逆にそれを引き寄せようとする。
また、男の身体を抱き寄せようとすれば、セラの身体はそれを拒む。
「んっ、ふあっ……あ…あっ……んんっ……」
顎の下にまで流れた女の涎を、すくい上げるように舌が動く。
細い首筋からゆるゆるとジュダの舌が上がっていく。
「…あっ…や、いやっ……あ…んっ……んんんっ……む…んくっ…」
閉じられようとする唇は、しかし欲望に抗えないのかやがて男の舌を迎え入れる。
舌と舌とがこれ以上無いほどに絡み合い、淫欲の密となる。
「ぷ…んはっ………あああ……」
湿る水音に続いて、名残惜しむような女の吐息。
二人の口の間には唾液の糸が繋がっており、それが途切れる。
「どうだ? 欲しいか?」
「………………ぃ」
消え入りそうな声と共に、セラはわずかに頷く。
男の口元が満足気な笑みへと変わる。
「くくくっ…」
「はっ、ちがっ…うっ……ああっ……」
耐えきれない程の羞恥に、女は顔中を真っ赤に染める。
「ははははっ…約束通りにくれてやる」
女の身体を強引に、うつ伏せにさせる。
「ひっ…あ……」
眼前に広がる丸みを帯びた尻に手をかける。
想像通りかそれ以上の弾力を愉しみながら、薄布に手をかける。
ショーツを脱がさず、わずかにずらし、自らのモノをあてがう。
「あっ…う…ああ……」
悲鳴とも歓喜とも、拒絶とも了承とも取れる声が漏れる。
「挿入(いれ)るぞ。せいぜい長い時間保たせる事だ」
「あっ……あああっ! ああ!」
柔らかい肉をかき分け、侵入する。
充分に濡れているそこは、潤滑油を満たし男を迎え入れる。
「う、あぁ、んっ……んふぁ、あっ…あ、ああっ…」
貫かれる度に、柔らかい身体はぴくぴくと反応する。
まるでその都度、微弱の電流を流されているかのように。
「んはっ……な、何…ああっ……こっ、こんなの……ああっ」
肉が触れ合う音と、湿った水音と、ぎしぎしと軋むベッドの音。
男の律動に合わせて、セラの口から勝手に喘ぎが漏れる。
「くぅ…んんん………あ、はっ……はんっ……ああ……」
腰が突き入れられれば、突き入れられるほどに女の疼きが大きくなる。
吸収され減っていく命の代わりに、熱を代替させられるように。
「うあっ…ああっ、あ、ん…はっ………あああっ」
喘ぐ事しか許されない。
深く挿入されるごとに息が詰まるような快楽。
心地よい脱力感に流されそうになる。
「あ……あ、あ、っ…ぅああっ……」
薄れていく意識の中、それでも繋ぎ止められるのは彼女が守るべき少年の存在。
同年代の友人が居ない孤独な皇帝。
そんな状況にあっても真っ直ぐに育っていた少年。
『セラはまるでお姉さんみたいだ。二人の時はそう呼んでいい?』
ごめんなさい、貴方を守るって誓ったのに。
『えっと………セラ姉さん』
ごめんなさい、貴方を守るのが私の役目なのに。
『良い皇帝になりたいんだ。だから、時には僕を叱って欲しいんだ』
ごめんなさい、貴方を守れない…
『姉さん、ずっと僕を守ってね』
ああ、何が『白色淑女』だろう。
何が『七聖剣将』だろう。
「セラ姉さん…」
「!?」
背後からの声。
聞き覚えのあるその声は少年のもの。
気が付けば、セラを背後から犯しているのは少年だった。
「な…そっ……あっ、駄目っ!!」
「姉さん…僕、もう……ああっ…我慢できない!」
感極まったかのような少年の虚ろな表情。
「だっ、駄目……んっ…です…あっ、ああっ…」
見ず知らずの男に犯されていた。
それだけなら、まだ耐えられる。
男に優越感を与えておいてやればいい。
身体を支配したとしても、心までは支配出来ないのだから。
そう思って耐えてきた。
しかし、少年の姿を模す事により、その不可侵であるはずの心までも犯される。
「姉さん…姉さん……」
熱病に冒されたように、うわごとのように呟く。
腰が前後し、快楽と後悔と罪悪感と愛情とがブレンドされる。
越えてはならない行為だからこそ、人間は興奮を覚える。
(業の深い生き物だ…人間というのは)
透き通るような男の声が、背中の少年の声と重なる。
「うっ…あああっ…あ、ああっ……あああああっ…」
喘ぎと慟哭とが含まれる声。
セラの意識、心の壁が静かに崩される。
「あああっ…あ…あ………んっ…………ああああああああっ!!」
背を仰け反らせ、身体全体を震わせる。
例えようもない悦楽に呼吸すらも止まる感覚。
「なかなかだったぞ…最後の『七聖剣将』」
遠く男の声が聞こえたような気がした。
炎が上がる。
帝国の象徴とも言える居城と、そして『鍵の聖女』の住む塔が燃える。
「ごめん……俺は約束を守れなかった」
炎が燃え上がる。
火柱はますます強くなっていく。
「ううん、ザッシュちゃんは約束を守ってくれてるよ。
今だってあたしを守ってくれている。
ずっとずうっと守ってくれてたんだもん。ちゃんと知ってるよ」
『鍵の聖女』が、否、幼なじみの少女が優しく微笑む。
「シスリア……」
「ザッシュ……」
炎に照らされる二つの影が、ゆっくりと一つに重なる。
帝国の崩壊。
それを守ってきたが故に、彼女は囚われていた。
だから帝国が崩壊した今、彼女は解放された。
『鍵の聖女』から『ザッシュの幼なじみ』へと戻ったのだ。
「ふふっ……」
幼なじみの少女が手を差し出す。
「……こういう時は、女の方が堂々としてるな」
恭しくその細く白い手を受け取る。
『鍵の聖女』の正装、純白の神官服に身を包んだ少女は、炎に照らされキラキラと輝く。
「そうかな? くすっ、ザッシュちゃんが昔っから照れ屋さんだからじゃないかな」
「…ちょっと黙っててくれよ」
『七聖剣将』も『鍵の聖女』も関係ない。
幼なじみの普通の男女が、そこに居るだけ。
不器用だが慎重にシスリアの細い指に、指輪をはめる。
左手の薬指に輝く夫婦となった証。
「ふふっ……嬉しいな」
満面の笑み。
強くなっていく炎に照らされ、少女の亜麻色の髪は、花冠を付けているかのように輝く。
「俺も……そうだ」
照れながらも、はっきりとザッシュは答える。
「ザッシュちゃん……ううん、ザッシュ………行こっか」
「……ああ」
ザッシュの右手には白銀の剣。
左手に最愛の女性の手を握り、ゆっくりと歩み出す。
炎の中へゆっくりと。
まるでバージンロードを歩む二人のように。
「ずっと手を離さないでね」
「当たり前だ」
二人の一つの影は、ゆっくりと炎に溶け込んでいった。
「鍵は解かれた。地に染みこむのは紅い憎悪……
敷かれた紅い絨毯の先には、開かれてはならない扉」
混乱が彩る喧噪の中、ただ一人だけは別世界の住人であるかのような男。
炎上する帝国の居城から火の粉が舞い、ジュダの髪を舞い上げる。
「仕上げだ……門は開かれる」
ゆっくり地へと手を置く。
置かれた手から広がる光は、水路を流れる水のように四方八方へと広がる。
帝都全てを覆う光の網は、複雑な紋様を示す。
混乱の極致にある戦場で、それに気付いた者が何人居ただろうか?
それは都市全体を覆う、魔法陣。
帝都に生きる全ての者を対象とした、喰らい尽くす巨大な顎。
帝国兵のみならず、帝都の住民たち、さらにはロゼッタ兵までも。
生命力を吸収されるその中において、生き残れるのはごくわずか。
「ははっ! ははははははははっ!!」
都市の一つが消え、魔界への門が開く。
大地が割れ、裂け目からは魔物と呼ばれるものたちが溢れ出す。
魔族、魔獣が溢れる闇の世界。
魔王が統治する暗黒の世界が、再び始まる。
世界は闇に支配された。
To Be Continude・・・・
あとがき
とりあえず、一段落、着きましたね。
ジュダが帝都を制圧(虐殺)して、魔界と繋がる門を開ける。
門から溢れる魔物たち……
(補足(蛇足)説明:魔界へと繋がる門を開けるには、鍵と多くの命が必要らしいっす。
鍵の役割が、まんま「鍵の聖女」の命。
門をこじ開けるのに必要なのが、都市一つ分くらいの人々の命。)
こうして世界は闇の時代へと突入していくわけですね。
この後は、ジュダはRPGのラスボスっぽく、玉座に座って勇者を待つだけです。
『七聖剣将』の『白色淑女』は当初、二重人格っていう設定でした。
皇帝があっさりと殺され、主人格のセラが別の人格に変更するって感じ。
ちなみに『紅の執行人 ティアリス』っていう人に変わって、ハードなエロ(?)に展開する予定だったんですが、性格や口調がヘルデと被ったり、「ハードなエロも飽きた」という俺の内なる声により、たんなる優しい(無気力な)お姉さんになりましたとさ。
今回のエロシーンは男の夢、「パイ○リ」(以前やりましたっけ?)
聞いた話では、そんなに気持ち良くないとか(おい)
なんだか、挟まれてるっていうシチュエーションを楽しむらしいですよ。
小説なんで、文章を膨らませましたが……
あと、後半の媚薬プレイ(?)は書いてて楽しかった。
普段クールな人の乱れる姿って最高ですよね!
両ふとももをくねらせて、もじもじしてるシーンとかエロい(笑)
ザッシュとシスリアについては、ロード○島伝説で似たようなシーンがありました。
あと、アリスソフトの「むげんほうよう(だったか? 金持ちだけど寿命が短い人の話)」
で、屋上で二人だけの結婚式、後に飛び降りってシチュエーション。
ああ、儚い、悲しい……リアル世界ではご免被る話ですが、小説内では燃えます。
全てから解放され、幼なじみの少女となった女の子と結婚。
ああ、いいなぁ……
俺も幼なじみの可愛い女の子が欲しかったなぁ。
朝、学校へ行く時に「家が近いから」という理由で起こしに寄ってくれるんすよ。
で、ベッドで寝ている主人公(俺)を「いつまで寝てるのよ!」と起こしてくれる。
あーあ、(エロゲーに出てくる)幼なじみの女の子、道端に落ちてないかなぁ(←妄想し過ぎ)
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