ダーク・ライトサイド

タカヤス

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ダークサイド 第1話

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「や、やっぱり止めましょうぜ? 姉御ぉ」
「そ、そうだぁ……。お、おら怖いだぁ」
情けない男二人の声が狭い洞窟の中で反響する。
「ったく、情けないねぇ! そんなんで、ミレーユ盗賊団が務まるかい!」
しかし、その男二人を合わせた以上に大きな女の声が響く。

南方に位置する山中。
見るからに怪しい3つの影は、山奥にある洞窟内を歩いている。
「け、けどここにゃあ、なんかやばいのが封印されてるっていいますぜ」
痩せぎすな男が不安そうに、数刻前からと同様の言葉を繰り返す。
「んなもん、嘘に決まってるだろう! 盗賊除けのほら話さ!」
それを一喝するのは、真ん中を歩くグラマーな女性。
女は軽めのレザーアーマーらしきものを着ているが、腕とふともも部分は露出している。
スカート丈も短めにしてあるのは、動きやすさというよりも、自らの魅力を最大限引き出そうとしているのだろう。
「で、でもぉ、おら、怖い……だぁ」
続いて、太めの樽のような男がふがふがと言ったが、女に一睨みされると黙り込んだ。
「帰りたきゃ、帰るがいいさ。ただし、このミレーユ様の鞭を恐れないならねぇ!」
ミレーユと名乗った女は、腰の鞭をぴんっと引っ張る。
それだけで男たちは黙って従い、ただ黙々と歩く。
彼女がかなりの力量の持ち主なのか、それとも男たちが情けないのかは不明だ。
「この前の大地震で、この洞窟がぽっかりと口を開けたんだ。まだ誰にも探られてない!
チャンスなんだよ! これは!」
ただ威勢の良い、女の声だけが薄暗い洞窟内に響いた。


― ◇ ― ◇ ― ◇ ―


「何だ? こりゃあ」
洞窟の最深部と思われる特別な部屋。
そこに辿り着き見つけたものは予想していた財宝ではなく、ただの柩だった。
「きいー! さんざん苦労した挙げ句に、こんな柩が一つあるだけかい!」
徒労に終わる苛立たしさに、ミレーユは柩を蹴り飛ばす。
「か、帰りやしょうぜ! 何か嫌な予感がしまさぁ!」
痩せた男の声はミレーユに届かない。
「そうか。この柩の中にお宝が眠ってるんだね。お前達! とっとと開けな!」
「うぁー、ど、どうなっても知らないんだなぁ」
樽のような男が柩の蓋に手をかける。
ごとり、という重い音と積年の埃とが立ち上る。

興味津々と言った様子で覗き込んだ彼女らの目に写ったもの。
それは、人間と思われるものだった。
白骨化ないしはミイラ化していれば明らかな死体だとわかるが、それは眠っているかのようにも見える。
棺の古さなどから考えてかなりの長い年月が過ぎているはずだが、それにしてはあり得ない保存状態の良さだ。
「ふぅん。これが『やばいもの』の正体かい?
 きっと昔の専制君主か暴君の墓なんだろうさ」
自らの死後の生き返りを願い、金に物を言わせて肉体に防腐処理を施したのだろう。
ミレーユが古代の王だと予想したのは、そんなことを考えたからだ。
「………おや?」
干からびた死体の装飾品と思われるペンダントが光る。
「お前達。その死体のペンダントを取りな」
「ひゃあ、あ、姉御、死体のペンダントをするんで? いでぇ!」
痩せた男が殴られる。
「ったく、お馬鹿だね。売りさばくのさ。見たところ結構高価そうじゃないさ」
「け、けど、死体を漁るってのはぁ……」
樽男が控えめに言うが、またもや彼女に睨まれ語尾は小さくなる。
「ほんとにお馬鹿だね! 死体が宝石なんて持っててもしょうがないだろうさ!
 生きてるこのミレーユ様の物になってこそ、宝石も喜ぶってもんさ! さ、おやり!」
渋々と言った様子で、樽男とやせ男が手を伸ばす。
「んおっ? 取れねえぞ………ぎゃあああ!?」
男たちは哀れな悲鳴を上げる。
死体だと思っていた細い腕が、突如男たちの顔を鷲掴みにする。
「ぐ…あ…ううっ………」「ふがっ……うぐぁ……」
途端に男たちは、がくがくと痙攣しはじめる。
「えっ? …………は?」
ミレーユは状況を理解できない。
目の前の男たちの体が、水分を吸われたかのように干からびる。
「……へ?」
一瞬で枯れ果てた死体となった二人の男が倒れる。
入れ替わるように、棺の中の死体だと思っていたものが起き上がる。
「……………ふぅ」
柩で永眠していたはずの死体は、今や普通の男の姿となっている。
いや、『普通の男』という表現は正確ではない。
艶やかな長い髪に、細身の身体は女性と見間違うほどだ。
そしてその顔立ちも、幾分やつれているものの、見る者を魅了するような芸術品とも言えるほどに美しいもの。
「やれやれ………不味いな」
呟かれる吐息は、中性的な透き通るような美声。
「あ……う……あ、あんた……な、何!?」
混乱する脳内の中、ミレーユの問いかけは、自分の声なのに他人が喋っているかのようだ。
現実感が無く、状況もよく把握できていないにも関わらず彼女の心に負の感情が広がる。
それは純粋な恐怖。
獰猛な肉食獣を前にしたような、喉元に刃を突き立てられているような、命の危機。
そこで初めて気が付いたかのように、男の姿をした者は笑みを浮かべる。
「ほぅ? …女も居たか。どれ、口直しさせて貰うとしようか」
まだやつれた様子の男は柩を乗り越えて、ゆっくりとミレーユへと歩みを進める。
「こ、こ、この死体! ちゃんと死んでろ!」
ミレーユが鞭を振るう。
しかし風を切る彼女の得物は、男に当たる事は無かった。
男の姿が掻き消えたかと思うと、次の瞬間には壁に押さえつけられている。
「なっ! かはっ………やっ、やめ、…てっ」
彼女の体が恐怖ですくんでいることを考えてもなお、男の細すぎる外見からは想像出来ない圧倒的な力で身体を押さえ込まれ、女は身動き出来ない。
「くくっ……そう怖がるな」
男の手がゆるゆると、ミレーユの腹から胸、あごへと這う。
「ひっ……」
女は恐怖で、ただ立ちつくす事しか出来ない。
「効率はあまり良くないが……」
美麗の男がミレーユのあごを上げ、目を合わせる。
「……ひうっ」
「すぐに今まで感じた事の無い快楽を与えてやる」
目の前の正体不明の男は、薄く笑った。
















男の目が紅く光る。
血を吸ったように、妖しく輝くそれは、普通の人間の持つものではない。
「あうっ!?………っ……なっ……あっ……」
ミレーユの身体からこわばりが抜ける。
(な、何これっ!? 訳が分からないっ!)
代わりに下腹部あたりから熱いものがこみ上げてくる。
目の前の男は初めて会ったばかりのはずなのに、ずっと焦がれていた相手のような親近感を覚える。
それどころか、生物としての欲求、性欲を無理やり起こされるような感覚だ。
恐怖は薄れ、彼女の身体は男に反応し始めてくる。
目からの情報が体中を駆け巡り、彼女の身体という身体に熱を受け渡す。
「うっ……なっ……わかんないっ………なに……これ」
ミレーユの身体が、火照り始めてきていた。
そんな様子に男は笑みを浮かべると、彼女の顔に顔を近づける。
「ひっ! ……ふっ……んぐっ…ん」
舌と舌とが口腔内で絡み合う。
男は自らの舌先で、女の口腔内の味を楽しむ。
「ん………んん……ふあっ」
逃げようとする彼女の舌を逃すまいと、男の舌が更に奥へと侵入する。
「あっ………んんむぐっ…………ぷ…はぁ……」
深く長い接吻が終わる。
男の口が離れ、ミレーユの口から熱い吐息が漏れる。
(ほう、見た目よりも純粋な魂をしている。いい贄になるな)
男は、目の前のとろんとした様子のミレーユを再び抱き寄せる。
「んんっ……あっ………ん」
左手で髪を撫で、右手で器用にレザーアーマーを外す。
アーマーの下の布服ごしに、豊満な胸に手を這わせる。
「んっ………はぁん……あっ…ん」
たったそれだけで、ミレーユは歓喜の声を上げた。
「ん…あっ………んんん」
熱にうなされたような声で、ミレーユはしなだれかかって来る。

『魅了の魔眼(チャーム)』。
それは、対象の精神をコントロールする事が出来る能力。
男はその能力を持っており、その使用方法を知っている。

抱きしめたまま、背中に手を回す。
背中の服の紐をほどき少し身体を離すと、女の上着が落ち、白い豊かな胸が露わになった。
その先端は既にぴん、と固くなっている。
身体をずらし、固くなっている先端を口に含む。
「ああっ……んっ……はぁ……ああっ…」
女は身体をのけぞらせると胸を押しつけ、男の顔を抱きしめる。
(な、なんであたし……怖いのに…嫌なのに……こんな……)
男の手が下腹部へと伸びる。
布地ごしに敏感な部分を、指が上下する。
「あ………んっ……ああっ……はぁ…はぁ……」
同時に口に含んでいる先端を軽く噛む。
「っ!………あぁ……はっ……んんんっ!」
軽い痛みまでもが快感へと変わっているように、女は喘ぐ。
(くくっ、存分に堕ちるがいい。堕ちれば堕ちるだけ、得られる力もまた大きくなる)
ミレーユの下着に男の手がかかり、その手が一気に引き降ろされる。
「あっ………」
羞恥からか、ミレーユの顔に朱がさし、声が漏れる。
そんな彼女を構う様子もなく、男の手が太股を這う。
「ふっ………んっ……ん…んん……」
焦らすようなその手の動きに、ミレーユの腰が僅かに前後する。
「んっ……ふっ…ん………」
しかし、男はわざと中心部には触れず、周囲のみを弄ぶ。
「…んっ……はぁ、はぁ……はぁ……」
女の潤んだ瞳が男を見上げる。
「くくっ……どうした? 随分と苦しそうだが?」
「くうっ…なっ……何でも…ない……わよ…」
男にしなだれかかりながらも、言葉では抵抗の意を示す。
「そうか」
「あっ?」
男の手の動きがぴたりと止まる。
ミレーユはそっぽを向くが、身体の火照りは止まらない。
男が何を望んでいるのかを理解し、もぞもぞと呟く。
「……ん……………ょ」
「何だ? 聞き取れぬな。言いたい事があるならはっきり言う事だ」
わざとらしく、優しく羞恥を煽るように女の耳元で囁く。
「……………てよ」
ミレーユの秘所は、露を生み出している。
「もっと大きな声で言え。そうすれば、叶えてやるぞ」
本当の悪魔は残虐ではない。
むしろ天使の声のように優しげにミレーユの心の隙間を攻める。
「う………つ、続けて……よ」
女の呻くような喘ぎ声に似た言葉を耳にし、男は口の端を吊り上げる。
「いい子だ」
「あはっ!! ……ん!………あん……あっ……はぁ……あぁ!」
男の指が、まるでそこだけ別の生き物であるかのように、秘所をまさぐる。
今や、ミレーユの心から恐怖は消え失せ、抗えない欲望だけが全てを支配していた。
「んっ……ああ………あっ……はぁ…はっ………あぁん!」
指がまるで魔術のように、ミレーユの敏感な部分だけを攻める。
「うっ……ああ………はぁ…はぁ……あ………あ…あっ……」
男の指は、ミレーユの密で濡れそぼっている。
「あっ……?」
突然、快楽の波が止まる。
男がミレーユの密で濡れた手を、見せるように舐める。
「もう準備はいいようだな。約束通り、最高の快楽を与えてやろう」
男も自らの服を脱ぎ、誇張した一物をミレーユに晒す。

男に性的な欲求は無い。
ただ無意識に、そうすれば『力を得られる』という事を知っていて、行うに過ぎない。
男にとって、それはいわば食事のようなものでしかない。
「あっ!」
ぬるり、という感触と共に男がミレーユに挿入した。
彼女の生み出した密が、男の屹立したモノを受け入れる。
侵入と同時に、激しく腰を前後する。
「あっ、はっ、はっ、……あっ……あっ……ああっ………」
ミレーユは歓喜の声を上げ、男にしがみつく。
「はんっ……あっ………あっ…………ああん……はっ…」
だらしなく開かれた女の口の涎を優しく舐め上げ、唇と唇とが合わさる。
「んっ……んんんっ………んっ……んんっ…………はぁ……あんっ!」
ミレーユの身体は無意識のうちに、より深くくわえ込むため、男に合わせて前後していた。
彼女の火照った身体の中は、かなり熱かった。
肉と肉のぶつかる音に、にちゃにちゃという液体の音が混じる。
「ふっ……くっ……ああっ……んんっ…あっ………あっ……」
ふいに腰を、今までより深く挿入する。
「ああーー!……いっ…いい………あっ……いっ…んんんっ……」
男の腰はミレーユの望みのままに動くかのように、彼女に快感を与える。
「はっ………はっ、はっ……だ、だめっ………あふっ…ん……」
男の手が二人の結合部分へと伸び、ミレーユの突起した肉の芽を軽くつまむ。
「あふっ!!……い………いいっ……あっ……ん……」
ミレーユの身体が無意識に、びくっと、のけぞる。
男は満足そうに微笑むと、ピストン運動を再開する。
「くっ………ふっ……あっ……ああっ………んんんっ……」
「さあ、そろそろ終わらせようか。その感覚に身を任せろ。お前の力、私が貰ってやる」
今のミレーユには、男の言葉の意味を考える事が出来ない。
彼女に許されているのは、ただ、快楽のまま喘ぎ声をあげることだけ。
「いっ…あっ……はぁ……はんっ………あっ……ああっ………」
速度の上がった腰がミレーユを攻める。
「うっ……いっ………いっちゃう!………い、いや……いっ………ああっ!!」
ほとんど同時に二人は絶頂へと達した。










「えっ……!?」
ミレーユの身体から力が抜けていく。
その場に立っていることすら出来ずに、ぺたりと地面に腰をつける。
それでも力が抜けていくのは止められなかった。
「なかなか良い魂を持っていたな」
過去形で話す男の声がだんだん遠ざかっていく。
ミレーユの身体はだんだん透き通っていく。
「あ……」
そして、水のように透け、最後は完全に消えて無くなった。
「……………」
男は何も感じない。
男にとってみれば、それは命を奪ったというよりも、食事を終えたということなのだ。
彼は、自らの細い指を何度か握りしめる。
「ふむ………思い出して来たぞ」
こうして、再び『魔王』が甦った。


再び、光と闇との戦いが始まる。




To Be continued・・・















あとがき

こういう三人組って、お約束ですよね(笑)
「おしおきだべ~」と言われて爆発するんですよ。
知らないヤングな人はごめんなさい。


というわけで、全然力を入れず、ただ書き殴っただけと言える
エロ文章……もとい大人(主に男性)向け小説が出来たのです。
はっきり言って、「俺の、俺による、俺のための小説」ですので、面白さとかはあんまり考えてません。
力も入れてないので、明日には素に戻って削除してるかもしれません(笑)
いつ更新されるのかも知りません(おい)

それでは。明日にはこの文章は消えてるかもしれませんが(笑)
















……というあとがきから始まりました。
知ってる人はごく少数だとは思いますが、私が20代の時に書いた文章になります。
私が今40代なので、実に20年ほど昔なんですね。
まじか。
今回、きまぐれというかレトロブームというか、再び公開することにしました。
いちおう「ダークサイド」は完結しているので、ちょこちょこ手直ししながら公開します。


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