幸せになって欲しい人の為に俺は嘘をつく

ヨミ

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本当は近くで見たかった

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 ゛またね!゛  それは俺がアイツについた初めての嘘




 その嘘をついたことに俺は後悔していないが後悔している。
 後悔していないのに後悔しているそれは全く逆の意味を表すのにそのどちらも俺の感情を正しく表している。








 アイツの隣は俺の場所だった、いつも一緒で互いに笑いあってすごく仲が良くて
 気がつけばアイツを友達としてではなく恋愛対象として恋をしていた




 叶うはずのない、かなったとしてもいつか終わりが来る恋



 結ばれる事の無い不毛な恋、だって俺が好きになったのは男だったから


 男同士は結ばれない、許されない恋、禁忌とされ嫌悪される感情


 男のアイツにこんな感情を持っているとアイツに知られたら、俺を気持ち悪いと思うだろうか






 俺が居なくなったアイツの隣にはアイツが愛した愛しい人が並ぶのだろうか


 俺が欲しくて欲しくて仕方ない場所、譲りたくない俺だけの場所。
 それでも友達としてでもそばにいてこの不毛な恋に終止符を打つためにアイツの隣でアイツの恋を生涯を生涯の最高の友として見ていたかった








──────9歳になった年の小学3年生の夏休みから1週間俺はアイツに初めて嘘をついた








「家族で旅行だから暫く会えないけど、夏休みが明ければ学校で会えるよ!だから




















  ゛またね!゛








 決して存在することの無い゛また゛に謝罪と心からの愛してるを込めて




 最初で最後の嘘をついた俺は、愛してやまないアイツに愛を囁くことなく、俺は愛の言葉を嘘で隠した












──────そして俺は幸せになって欲しいと願いアイツの前から消える道へと進んだ。
























______________________________














 ユゲイルオレランベル症候群 (通称YOS)




それは俺が小学3年の夏休み前に言われた病気名だ



 ほんのごくわずかに罹かかる可能性がある特殊な病気だ。最近では発症者の約、5分の2の患者が運良く助かっている




 この病気は約83%の確率で死ぬが、治療することで約37%まで減るそれでも少しでも治療を怠れば死ぬ確率は発症時よりも高い確率で死ぬ




 それを言おうとも耳を傾けない人が多くほとんどの人が治ったと慢心して死んでいくケースが多い


 あの日嘘をついてからの7年間海外で暮らしていた。
 暮らしていたと言ってもその殆どが病院での治療だった




 海外でのYOSの治療技術は日本よりも高かった。
 家と病院を何度も行き来しながら検査を受け、毎日薬を飲みながらいつ死ぬかもしれない日々を暮らしていた




 治療は滞り無く進み薬さえきちんと飲んでいればあまり病院に来なくてもいいが2ヶ月に1回は診察に来るように言われた


 俺が日本の高校を受けたいといえば最初は反対していたが説得のかいあって渋々許してもらえた




 そして俺は日本の高校、東京都内にある国立フェルト学園に入学が決まった


 1年の入学式に間に合うように入学した俺は久しぶりの日本に浮かれていた。
 そのため入学式が始まる前に校内をうろつき迷子になった。
 辺りをキョロキョロと見回しながら歩いていたことで人に気づかずぶつかりコケてしまいそうになる




 「うわっ!」


「えっ?⋯⋯⋯と、大丈夫か?」


 「はっはい、ありがとうございます!」




 助けて貰ったお礼を言いながら上をむくと黒色のような銀色の髪をして目はキレ長で瞳は透き通るような濃い青


 体はたくましく170ある自分の身長でも見上げなければいけない背の高い、ものすっごく綺麗でかっこいい男が驚いたようにこちらを見ていた




 男が何かを言いかけた時丁度チャイムがなり混乱のあまり迷子なのを忘れてがむしゃらに走り体育館へ行った


 その後ろ姿をその男がまるで捕食する寸前のような狩人の目をして見ていたことに気づかずに




篠崎しのざき千景ちかげ16になる歳の出来事である




 「ようやくまた会えたね、チカちゃん
 ずっとずっと待ってたよ、安心してねもう2度とオレから離れられないよう逃げられないように、ゆっくりとこの腕に囲って閉じ込めてオレだけを見るようにしてあげる」






──────楽しみだねオレの魂の番であり、オレの片割れであるオレのお嫁さん






愛してるよだからもう2度勝手にいなくなったらダメだよ  フフ






 その言葉を聞くものは誰一人としていなかった。
 言葉はただ静かに広い廊下の中ゆっくりと消えていく、それはまるで呪いが染み込んで行くように

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