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この豚野郎!
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アティスが風呂に入ることになったため、晩餐会はおしまいになった。
さっそく着替えて、部屋でニュクスが来るのを待ちながら待機する。まったく、ひどい目にあった。アティスの企むことは、いちいちぶっ飛んでいる。
しかし、それよりもニュクスへの対策が先だ。ニュクスは、晩餐会からの帰り際にすぐに行くと声をかけてきた。とりあえず政治関係の準備をしているのだが、それでいいのかわからない。麻薬だったら、どうしよう。
「なあ、エンデュミオン。ニュクスが来た時っていつも何をしていたっけ」
「ああ。ギル様は、黙って見ていればいいんですよ」
は?意味不明なんだけど。
しかし、説明を聞くよりも前にドアベルが鳴らされてしまった。
「ギル君、ごめん。楽しみ過ぎて早く来ちゃった」
だから、何しに来たんだよ。
「そうか。早く入れよ」
何かを察したべッティーナがコーヒーを持ってきて机の上にコトンと置く。
あれ?どうしてべッティーナは、コーヒーを一人ぶんしか用意しないんだ?
いつもニュクスが一人でコーヒーを飲んで僕らがそれを眺めているということか。
「では、エンデュミオン君、いつものあれを頼むよ」
いつものあれって何のことだろう。もしかして、違法の薬とかだろうか。
だいたいエンデュミオンがニュクスと仲良かったのか?一体、どういう関係なんだ?他国の護衛〈元ギルの恋人〉と、大帝国の王様と親しい繋がりを作るのは難しいはずだ。やはり、エンデュミオンは、スパイだったのだろうか。
頭に疑問ばかり浮かんできて、答えが全然、わからない。後で、エンデュミオンを問い詰めることにしよう。
「ギル君は、そこでコーヒーでも飲んでいてくれたまえ」
「ああ……」
どうやらニュクスは、僕には用がないみたいだ。ホッとしたような、拍子抜けしたような感じの気分が押し寄せてくる。
「わかりました。では、いきます」
こいつ、一体何をするつもりだ?まあ、真面目なエンデュミオンのことだ。他国の王様に向かって、無礼なことはしないだろう。コーヒーを飲みながら、見物することにしよう。
何故かエンデュミオンは、鞭を頭上高くに振り上げた。
そして……。
「このド変態のクズ野郎がっ!!!」
エンデュミオンは、ニュクスの尻目がけて鞭を打った。
「ブッ……。ゴホッ、ゴホッ」
驚きのあまりコーヒーが気管に入った。
く、苦しい。
もうちょっとで息ができなくなって死ぬところだった……。
「お前のせいで、多くの人間が苦しんでいるんだ。お前なんて自分の性癖のことしか考えないゴミだ。このろくでなしが!」
「はあ、はあ……ああん……」
思いっきり鞭を振り上げるエンデュミオン。そして、恍惚そうにだらけきった顔をするニュクス……。
ええええええええええええええええええええええええ!
こいつら、何をやっているんだ?
何かの間違いかと目をゴシゴシこするが、目の前の異様な光景は、変わらない。エンデュミオンがニュクスを罵りながら鞭を打ち続けている。
ぼ、僕は、一体、何を見せられているんだ……。
わけがわからない。
「お前みたいなドMは、生まれてこなければよかったんだ。全世界に土下座して謝れ、この豚野郎!」
「……ッアあああっ。たまらない」
涎を出しながら笑みを浮かべるニュクス。
「だいたい、何なんだよ、その気色悪い髪型は。全然、似合ってねーよ、このブサイク。気持ち悪い変態が。お前は、気持ち悪い奴だって、全世界から笑われているんだよ。服装も趣味悪すぎて虫唾が走る!!」
「……ああ、はあ……。何という喜びっ」
僕の目は、すっかり点になっていた。
これから、政治の準備をしていた自分がバカだったということは、かろうじてわかった。
わけのわからないSMプレイごっこタイムは、15分にも及びそれが終わるころには、僕は呆然としながら彼らを見ていた。
「ああ、気持ちよかったー。エンデュミオン君は、いい仕事をするね」
満足そうに叩かれていた尻をさするニュクス。
「そうですか」
「その蔑む冷たい視線もたまらないっ!ギル君の恋人を辞めたらボクのところへおいでよ。いつでも大歓迎さ」
「全力で遠慮します」
その言葉を聞いて、エンデュミオンはニュクスほど壊れていなかったと知り安心した。エンデュミオンが僕の恋人であることを否定しようかと思ったが、そしたら、エンデュミオンがかわいそうなことになりそうなのでやめておいた。
ニュクスが去ってからも、心ここにあらずの状態で聞いてみた。
「お前らって、どうしてあんな関係になったんだっけ?」
「ドMのニュクスが俺の冷たい視線を気に入って、俺に鞭をたたきながら罵って欲しいと命令したことが始まりでした」
「……そ、そうか」
何ともいえないひどい関係だ。
しかし、ニュクスがドMだということを考えると、彼が国民、使用人、他国に対してひどい仕打ちをしているのは、もっと嫌われたいからだということか……。ドMでサイコパスとか、本当に気持ち悪い組み合わせだ。さっさと勝負に蹴りをつけてしまいたい。
「ギル様もああいうのが好きでしたら罵ってあげましょうか」
「頼むからやめてくれ」
「わかりました」
「お前……ああいうプレイが好きなのか」
「いえ、そういうわけではなありません。ですが、ニュクスは多くの人間を殺してきた最低最悪の人間なので、罵倒の言葉がいくつか浮かんできます。まあ、あいつを喜ばすことは癪ですが」
お前、ドSの才能がありそうだな。将来は、とんでもない変態になりそうで怖い。
さっそく着替えて、部屋でニュクスが来るのを待ちながら待機する。まったく、ひどい目にあった。アティスの企むことは、いちいちぶっ飛んでいる。
しかし、それよりもニュクスへの対策が先だ。ニュクスは、晩餐会からの帰り際にすぐに行くと声をかけてきた。とりあえず政治関係の準備をしているのだが、それでいいのかわからない。麻薬だったら、どうしよう。
「なあ、エンデュミオン。ニュクスが来た時っていつも何をしていたっけ」
「ああ。ギル様は、黙って見ていればいいんですよ」
は?意味不明なんだけど。
しかし、説明を聞くよりも前にドアベルが鳴らされてしまった。
「ギル君、ごめん。楽しみ過ぎて早く来ちゃった」
だから、何しに来たんだよ。
「そうか。早く入れよ」
何かを察したべッティーナがコーヒーを持ってきて机の上にコトンと置く。
あれ?どうしてべッティーナは、コーヒーを一人ぶんしか用意しないんだ?
いつもニュクスが一人でコーヒーを飲んで僕らがそれを眺めているということか。
「では、エンデュミオン君、いつものあれを頼むよ」
いつものあれって何のことだろう。もしかして、違法の薬とかだろうか。
だいたいエンデュミオンがニュクスと仲良かったのか?一体、どういう関係なんだ?他国の護衛〈元ギルの恋人〉と、大帝国の王様と親しい繋がりを作るのは難しいはずだ。やはり、エンデュミオンは、スパイだったのだろうか。
頭に疑問ばかり浮かんできて、答えが全然、わからない。後で、エンデュミオンを問い詰めることにしよう。
「ギル君は、そこでコーヒーでも飲んでいてくれたまえ」
「ああ……」
どうやらニュクスは、僕には用がないみたいだ。ホッとしたような、拍子抜けしたような感じの気分が押し寄せてくる。
「わかりました。では、いきます」
こいつ、一体何をするつもりだ?まあ、真面目なエンデュミオンのことだ。他国の王様に向かって、無礼なことはしないだろう。コーヒーを飲みながら、見物することにしよう。
何故かエンデュミオンは、鞭を頭上高くに振り上げた。
そして……。
「このド変態のクズ野郎がっ!!!」
エンデュミオンは、ニュクスの尻目がけて鞭を打った。
「ブッ……。ゴホッ、ゴホッ」
驚きのあまりコーヒーが気管に入った。
く、苦しい。
もうちょっとで息ができなくなって死ぬところだった……。
「お前のせいで、多くの人間が苦しんでいるんだ。お前なんて自分の性癖のことしか考えないゴミだ。このろくでなしが!」
「はあ、はあ……ああん……」
思いっきり鞭を振り上げるエンデュミオン。そして、恍惚そうにだらけきった顔をするニュクス……。
ええええええええええええええええええええええええ!
こいつら、何をやっているんだ?
何かの間違いかと目をゴシゴシこするが、目の前の異様な光景は、変わらない。エンデュミオンがニュクスを罵りながら鞭を打ち続けている。
ぼ、僕は、一体、何を見せられているんだ……。
わけがわからない。
「お前みたいなドMは、生まれてこなければよかったんだ。全世界に土下座して謝れ、この豚野郎!」
「……ッアあああっ。たまらない」
涎を出しながら笑みを浮かべるニュクス。
「だいたい、何なんだよ、その気色悪い髪型は。全然、似合ってねーよ、このブサイク。気持ち悪い変態が。お前は、気持ち悪い奴だって、全世界から笑われているんだよ。服装も趣味悪すぎて虫唾が走る!!」
「……ああ、はあ……。何という喜びっ」
僕の目は、すっかり点になっていた。
これから、政治の準備をしていた自分がバカだったということは、かろうじてわかった。
わけのわからないSMプレイごっこタイムは、15分にも及びそれが終わるころには、僕は呆然としながら彼らを見ていた。
「ああ、気持ちよかったー。エンデュミオン君は、いい仕事をするね」
満足そうに叩かれていた尻をさするニュクス。
「そうですか」
「その蔑む冷たい視線もたまらないっ!ギル君の恋人を辞めたらボクのところへおいでよ。いつでも大歓迎さ」
「全力で遠慮します」
その言葉を聞いて、エンデュミオンはニュクスほど壊れていなかったと知り安心した。エンデュミオンが僕の恋人であることを否定しようかと思ったが、そしたら、エンデュミオンがかわいそうなことになりそうなのでやめておいた。
ニュクスが去ってからも、心ここにあらずの状態で聞いてみた。
「お前らって、どうしてあんな関係になったんだっけ?」
「ドMのニュクスが俺の冷たい視線を気に入って、俺に鞭をたたきながら罵って欲しいと命令したことが始まりでした」
「……そ、そうか」
何ともいえないひどい関係だ。
しかし、ニュクスがドMだということを考えると、彼が国民、使用人、他国に対してひどい仕打ちをしているのは、もっと嫌われたいからだということか……。ドMでサイコパスとか、本当に気持ち悪い組み合わせだ。さっさと勝負に蹴りをつけてしまいたい。
「ギル様もああいうのが好きでしたら罵ってあげましょうか」
「頼むからやめてくれ」
「わかりました」
「お前……ああいうプレイが好きなのか」
「いえ、そういうわけではなありません。ですが、ニュクスは多くの人間を殺してきた最低最悪の人間なので、罵倒の言葉がいくつか浮かんできます。まあ、あいつを喜ばすことは癪ですが」
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