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殺意
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ルータリア国山奥の古城。
ここでは、毎年、紅月会が開かれ、シュタインベルト一族と貴族の交流の場となっていた。
豪華なドレスや、高そうなスーツで着飾った人達が、ダンスを踊ったり、おしゃべりをしていたりしている。
「きっとXの正体は、カルタヤ人に違いないわ。あいつら、ろくなことしかしでかさないんだから」
「確かに悪いことは、全部カルタヤ人のせいだ。もうカルタヤ人なんて、抹殺した方がいいんじゃないかな。かつて失敗したカルタヤ人皆殺し計画を遂行させるのは、どうかしら」
パーティーの話題をするように楽しそうにそう言った。
「それより、もうすぐ戦争が起こるなんてワクワクするわ。一体、何人のノーマ人が殺されるのかしら」
「ああ。ゴミの清掃ができるなんて、すがすがしいな。やはり生き残るのは、我々シュタイベルト一族と、タリア人だけだな」
「それはいい考えね。この世界は、シュタインベルト一族とタリア人のものだから」
「でも、Xによって独裁国家の全員が殺されてしまうとは思わないんですか」
「私達は、神に選ばれた人間なのよ。そんな私達が神から殺されるわけないわ」
「そうだ。生まれた時から、俺達は特別だ。その俺達が、殺されるなんてありえない」
「そういえば、アティスは、遅いわね」
「ああ。あの子は、少し遅れるみたいよ」
「そう。早くアティスに会いたいわ」
その時―――――――。
グラグラと地面が揺れ出した。
「キャ―――――」
甲高い悲鳴、ガラスがガッチャーンと割れる音、罵り声、メリメリと壁が破壊される音が響き渡る。
天井からはシャンデリアが誰かに向かって落ちた。逃げ場はどこにもなく、あっという間に人が死んでいく。
たった数秒で、その場にいた全員死亡した。
* *
地震の後にやってきたアティス・シュタインベルトは、惨状を見て胸をワクワクさせていた。
自分以外の一族が全滅した。
アティスがそのことを知った時、実験が成功した科学者のような気分になった。
Xの目的は、評判の悪い独裁国家を滅ぼすことだけだろうか。おそらく違う。Xが平和を愛する正義の心の持ち主なら、第三次世界大戦が起こるのを阻止しようとするはずである。
どうやって阻止して世界を平和に導くか。それは、軍事国家のために作り出された人神制度破壊して、反戦主義力を高めることもやり方に含まれるだろう。きっとシュタインベルト一族は抹殺されるはずだ。そう思って、紅月会の会場から離れていたが、予想通り会場周辺に地震が起こり全て破壊された。
祖国、家族、友達、家臣……全てを失った。
こんな屈辱は、皇帝に即位してから初めてだ。
「あはっ」
「はははははははははははははははははははははっ」
滅ぼされた城を見ながら、狂ったように笑い転げる。
他人のことなんてどうでもよかった。
自分のことも同じようにどうでもよかった。評価も、愛も、友達も、家族も結果もどうでもよかった。
「全くXは、最高だよ」
人形のようだと称えられていた美しい顔に、おもしろいおもちゃを見つけた子供のような笑顔が浮かぶ。
「こんなに俺を楽しませてくれる人間には、初めて出会った」
この俺に向かって、こんな風に堂々と喧嘩を売られたことは、初めてだよ。神だか、超能力者だか知らないが、その正体を暴いてやる!
これは、とてもおもしろいゲームだ。
やりがいのあるスリル満点のゲームだ。こんなの始めてだ。今まで、こんな高揚感を味わったことがない。
お前の一手を宣戦布告として受け取った。
「絶対にお前を見つけてやる!」
血のように紅い瞳が飢えているようにランランと光り輝く。
「見つけてぶっ殺してやる」
悪魔のように滑らかな低い美声が響き渡った。
ここでは、毎年、紅月会が開かれ、シュタインベルト一族と貴族の交流の場となっていた。
豪華なドレスや、高そうなスーツで着飾った人達が、ダンスを踊ったり、おしゃべりをしていたりしている。
「きっとXの正体は、カルタヤ人に違いないわ。あいつら、ろくなことしかしでかさないんだから」
「確かに悪いことは、全部カルタヤ人のせいだ。もうカルタヤ人なんて、抹殺した方がいいんじゃないかな。かつて失敗したカルタヤ人皆殺し計画を遂行させるのは、どうかしら」
パーティーの話題をするように楽しそうにそう言った。
「それより、もうすぐ戦争が起こるなんてワクワクするわ。一体、何人のノーマ人が殺されるのかしら」
「ああ。ゴミの清掃ができるなんて、すがすがしいな。やはり生き残るのは、我々シュタイベルト一族と、タリア人だけだな」
「それはいい考えね。この世界は、シュタインベルト一族とタリア人のものだから」
「でも、Xによって独裁国家の全員が殺されてしまうとは思わないんですか」
「私達は、神に選ばれた人間なのよ。そんな私達が神から殺されるわけないわ」
「そうだ。生まれた時から、俺達は特別だ。その俺達が、殺されるなんてありえない」
「そういえば、アティスは、遅いわね」
「ああ。あの子は、少し遅れるみたいよ」
「そう。早くアティスに会いたいわ」
その時―――――――。
グラグラと地面が揺れ出した。
「キャ―――――」
甲高い悲鳴、ガラスがガッチャーンと割れる音、罵り声、メリメリと壁が破壊される音が響き渡る。
天井からはシャンデリアが誰かに向かって落ちた。逃げ場はどこにもなく、あっという間に人が死んでいく。
たった数秒で、その場にいた全員死亡した。
* *
地震の後にやってきたアティス・シュタインベルトは、惨状を見て胸をワクワクさせていた。
自分以外の一族が全滅した。
アティスがそのことを知った時、実験が成功した科学者のような気分になった。
Xの目的は、評判の悪い独裁国家を滅ぼすことだけだろうか。おそらく違う。Xが平和を愛する正義の心の持ち主なら、第三次世界大戦が起こるのを阻止しようとするはずである。
どうやって阻止して世界を平和に導くか。それは、軍事国家のために作り出された人神制度破壊して、反戦主義力を高めることもやり方に含まれるだろう。きっとシュタインベルト一族は抹殺されるはずだ。そう思って、紅月会の会場から離れていたが、予想通り会場周辺に地震が起こり全て破壊された。
祖国、家族、友達、家臣……全てを失った。
こんな屈辱は、皇帝に即位してから初めてだ。
「あはっ」
「はははははははははははははははははははははっ」
滅ぼされた城を見ながら、狂ったように笑い転げる。
他人のことなんてどうでもよかった。
自分のことも同じようにどうでもよかった。評価も、愛も、友達も、家族も結果もどうでもよかった。
「全くXは、最高だよ」
人形のようだと称えられていた美しい顔に、おもしろいおもちゃを見つけた子供のような笑顔が浮かぶ。
「こんなに俺を楽しませてくれる人間には、初めて出会った」
この俺に向かって、こんな風に堂々と喧嘩を売られたことは、初めてだよ。神だか、超能力者だか知らないが、その正体を暴いてやる!
これは、とてもおもしろいゲームだ。
やりがいのあるスリル満点のゲームだ。こんなの始めてだ。今まで、こんな高揚感を味わったことがない。
お前の一手を宣戦布告として受け取った。
「絶対にお前を見つけてやる!」
血のように紅い瞳が飢えているようにランランと光り輝く。
「見つけてぶっ殺してやる」
悪魔のように滑らかな低い美声が響き渡った。
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