死亡フラグ乱立の極悪非道な国王になりました!

さつき

文字の大きさ
上 下
24 / 84

イケメンはどんな衣装も着こなす

しおりを挟む
 
 エンデュミオンは、ロープを使って岸へと上がってきた。

 濡れた銀髪が肌に張り付いたエンデュミオンは、いつもの2割増しくらいのイケメンに見えて何か悔しい。

 上がってきたばかりの彼に休む間もなく命令する。

「レイヴンは、呼吸や脈拍を確認したところ無事だ。レイヴンを僕の部屋まで運んでくれ」

 できるだけ小声で命令する。

「俺のことは確認しないんですか」

「お前は、ピンピンしているだろう」

「はい……」

 どこか不満そうなエンデュミオンを置いて先に歩き出した。

 本当は、彼のことも調べたかったが、防水の盗聴器が残っている可能性もある。まずは、着替えさせることが先だ。





 部屋に戻るとさっそく、暖炉に火をつけ、レイヴンが身につけていた服をドンドン放り込んでいく。これで確実に盗聴器はなくなった。ついでに冷たくなっていた彼らも温まるだろう。

 さっそくレイヴンに似会いそうな服を選んであげることにした。ふふふ、レイヴンよ、光栄に思え。やっぱり、全身金色の服とかどうだろうか。きっと、お前の黒歴史として名を残すだろう。

「お前、こいつをこの服に着替えさせてやれ」

 これは、断じて苛めではない。盗聴器がまだ壊れていないかもしれないから、仕方なくやるんだ。まあ、この世界の技術的に90%くらいの確率で壊れていると思うけれど。

「は?」

「ほら、風邪をひかれると困るんだよ。いいからさっさとしろ」

「俺もずぶ濡れですが」

「お前は、後回しでいいだろう。レイヴンが先だ」

 レイヴンが、次に目を覚ましたとしたら、自分がなぜ生きているか考え、僕がメシアであると気がつく可能性が高い。だから、早めにレイヴンを着替えさせ牢屋にぶちこんでおきたい。

「……かしこまりました」

 しぶしぶした返事が聞こえてきた。

 レイヴンの着替えが終わると、クローゼットと開けて、自分が絶対に着たくなかった衣裳ナンバーワンを取り出した。

「お前もそのままじゃ風邪を引くだろう。だから、その濡れたシャツは脱いでこの衣装……じゃなくて服に着替えろよ。これならサイズも合いそうだろう」

 ふっ、ざまあみろwwww。僕が今まで味わってきた屈辱を味わいやがれ。

「ありがとうございます」

 よくこのセンスの悪すぎる服に対してお礼が言えるな。ある意味、尊敬するぜ。



 エンデュミオンは、パパッとシャツを脱いで着替えだした。チラリと見えた八つに割れた腹筋を見て、男として負けたような気分になる。

 そして、超絶ダサいと思っていた鳥の羽がついた衣装をパリコレのモデルのように着こなしている……。

「似合っていますか」

「ああ……」

 僕は、本当のイケメンは何を着てもイケメンだと知り悲しくなった。 

「そうだ。お前、ちょっと手を貸せ」

「はい」

 差し出された手首の動脈がある位置に親指に置く。

 1、2、3、4、5、6……。

「な、何をしているんですか」

「一応、脈拍を図っている。15秒で18回だから一分間に72回か。よし、これなら大丈夫そうだな」

 顔色もさっきよりも血色がよくなっているし、大丈夫そうだな。

 手を離すと、エンデュミオンは魂が抜かれたような顔で突っ立っていた。

「おい、大丈夫か」

「はい……」 

「何か言いたいことでもあるのか」

「ギル様、さっきは、俺を実験するためだけにレイヴン様を突き落としたんですか」

 もちろん、違う。

 これは、レイヴンの盗聴器を水没させて壊すため。そして、ラスボスにレイヴンが死んだと思わせるためだ。エンデュミオンの価値を見極めるためなんてこじつけに過ぎない。人の命をそんな風に実験台にするなんてするわけないだろう。

 だけど、正直に話したら、自分がメシアだと告げるも同然だ。これは、性格の悪い僕の気まぐれということにしていくのがベストだ。 

「ああ、そうだ。お前の価値を図るための実験をしたんだ」

「そんなことのために……」

 キッとゴミ捨て場を漁るカラスでも見るように軽蔑に満ちた目で睨まれる。

「試験は、合格だ。これからは、ちゃんと駒として利用していくことにしよう」

「命を実験に使うなんて、あんたは、やっぱり最低ですね」

「それがどうした?別にお前なんかになんて思われようと構わない」

 そう強がってみたけれど、胸がチクリと痛んだ。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

シャルルは死んだ

ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。

[完結]堕とされた亡国の皇子は剣を抱く

小葉石
BL
 今は亡きガザインバーグの名を継ぐ最後の亡国の皇子スロウルは実の父に幼き頃より冷遇されて育つ。  10歳を過ぎた辺りからは荒くれた男達が集まる討伐部隊に強引に入れられてしまう。  妖精姫との名高い母親の美貌を受け継ぎ、幼い頃は美少女と言われても遜色ないスロウルに容赦ない手が伸びて行く…  アクサードと出会い、思いが通じるまでを書いていきます。  ※亡国の皇子は華と剣を愛でる、 のサイドストーリーになりますが、この話だけでも楽しめるようにしますので良かったらお読みください。  際どいシーンは*をつけてます。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

[BL]王の独占、騎士の憂鬱

ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕 騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて… 王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい

処理中です...